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窓越しの空  作者:
26/100

約束

「何で私と?」



 私は疑問をぶつけた。




「安堂さん、何かいつも悲しそうで。 笑ってるのに何か寂しそうで……。 最初にトイレの前で会った時からそう思ってて……」



 そんな風に見えてたんだ……。

 隠していたつもりが出ていた……。

 もっと気をつけなきゃいけないんだ……。

 結構精一杯やってるんだけど……、これ以上頑張らなきゃいけないの……?


 それは私にとっては拷問に近かった……。




「そうなんですね……。 でも何もないですよ……」




 手に持った缶コーヒーを眺めながら、目も合わせずそう言った。

 自分の事をあれこれ言う間柄でもない。

 言ったところで理解もされない。

 誰が会った事もない人に恋焦がれていると聞いて同感してくれる人がいるだろうか……。

 それより今、一人にして欲しい……。


 その時の私は拒否に似た感情しかなかった。


 そんな私をよそに向井さんはいつも笑顔で話しかけてくる。




「そうですか? 何かあったら聞きますよ。 安堂さんは、空、好きなんですか?」




 そう聞かれた。




「今は……、あんまり……」




「今は? 前は好きだったって事ですか?」




「……、好きまでじゃないですけど……、以前は空の写真を撮ってました……」




「今は撮ってないんですか? 何でやめちゃったんですか?」




「……特に理由は……。 何となく……」




 私の話を終始笑顔で聞く向井さんがひとつ提案してきた。




「じゃあ、今度、空の写真を見せ合いしません?」




「え? 空の写真ですか?」




「前、撮ってたんでしょ? 僕もこれっていうのを撮ってきます」



 正直乗り気ではなかったが、向井さんのテンションに飲まれた感じで始まる事になってしまった……。

 まぁ、撮れなかったと言って逃げればいいかな……。


 面倒くさい事に巻き込まれちゃったかな……。


 相手は同じ社内の人。

 いい顔をした結果だった。



 SNSにあげた空の写真は全て消した。

 残っているのはスマホに残る空の写真のフォルダだけ。

 そのファイルもずいぶん開いていない。


 これから新しい空の写真を撮っていくのか……。

 傷口に塩を塗るとはこういう事か……。


 でも少しずつ整理しなきゃ……。

 いいきっかけなのかも知れない。


 いろんな気持ちが私の中を行き来していた。


 向井さんはなぜ、こんなにもいつも笑顔なんだろう?

 毎日が楽しいのかな……?




「向井さんって、いつも楽しそうですよね。 充実してるんですか?」




 自然とそう聞いてしまった。


 向井さんは、コーヒーを飲みながら首を横に振った。




「僕、失恋真っ只中でした……。 けど、割り切るしかないから」




「え!? そうだったんですか!? ごめんなさい……、そんな事言わせてしまって……」




 向井さんから悲しさなんて微塵も感じなかったから、失恋と聞いて意外だった……。

 何なら、恋も仕事も順風満帆なんだろうな……と思うくらいだった。

 そういえば、米田さんが向井さんは独身だと言っていた事を思い出した……。

 失恋中だったのか……。


 気付けば小休憩も終わる時間。

 空の写真を撮る約束をしてしまった……。

 向井さんは悪い人ではないけれど、私の気持ちは晴れないままで、いつもそれなりの対応しかできない事を申し訳なく思った。




「コーヒー、ご馳走様です。 じゃあ、事務所に帰ります……」





「僕も帰ります。 空の写真、約束ですよ!」





 最後まで楽しそうに笑顔で話す向井さんに、私はどこまでも気持ちを上げないままで、上げようともしないでいた自分に嫌になっていたが自分自身ではどうする事もできなかった。


 向井さんも失恋中で悲しさでいっぱいなんだろうけど、私とこうも違うのか……。


 向井さんって凄いな……。

 大人の対応ができない自分はどうなんだろう……。

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