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窓越しの空  作者:
22/100

突然

 私の前に現れたその人は、スラっと背の高い男の人だった。

 部署はわからないし、事務所で会った事のある人ではなかったが、工場の方で働いている人である事はわかった。


 その人は私に話しかけてきた。



「あの、新しく事務所にこられた……」



「あ! そうです。 安堂です。 お世話になります。 よろしくお願いします」



「あ、僕、向井っていいます。 よろしくお願いします。 米田さんのところ……ですよね……?」



「そうです」



「米田さん、楽しい人でしょ?」



「楽しいですね。 ありがたいです!」



「じゃあ、また」



 向井さんか……。

 私はデスクに戻るとさっき会った向井さんの事を米田さんに伝えた。



「あーー、向井さんね。 あの子、安堂さんと歳、変わらないんじゃない? 独身だよ。 優しくていい子なんだけどねーー。 彼女とかいないみたいだし……。 どこかにいい子いない?」



 米田さんから誰かを紹介してあげて欲しいと言われたけれど、私の友達や知り合いは結婚している人ばっかりだった。



 そんなに優しくていい人なのに何で独身なんだろう……。

 まぁ、私の歳に近いなら男の人はまだまだ全然大丈夫だよね……。

 これからいくらでも出会いもあるだろうし、結婚だって大丈夫。



 まだまだ話した事もない人がたくさんいる。

 何人くらい社員さんがいるんだろう……?

 たぶん、私がこの会社でお世話になる期間内では全員に会う事はまずないだろう。

 工場で働く人は特にそうだろうな……と思った。


 初対面だった人達も、そのうち何度か社内で会うと緊張もほぐれ挨拶できる程になっていった。

 名前も覚えていった。


 ありがたい事にどの人も温かく、仕事をする上での環境はとてもよかった。

 心が晴れずにこの会社にお世話になる事になったが、その気持ちもほんの少しずつではあるが、変わっていけそうなきがしていた。


 ある日、米田さんにメッセージアプリを使っているかを聞かれ、使っているなら教えて欲しいと言われた。

 お休みの日にゆっくり夜、どこかのお店で集まったりしているらしい。

 私はすぐにその連絡先を教えた。

 最近、スマホを手元に置く事をやめていた。

 いつもバッグの中にしまってあるか、家で夫のいない時はカウンターに置いたままにしてある。

 スマホでアラームをかけて起きていたけれど、それもやめて目覚まし時計て起きる。

 スマホ自体から距離を置きたかった。

 見てしまうと、私は立ち止まったまま。

 少し距離を置く事できっと立ち直る事も早くなるだろうと思ったのだ。


 距離を取っていたスマホを久しぶりにちゃんと眺める。

 ページを巡って最近開いていない並んだアプリを眺める。

 もちろんスカイさんとやりとりしたあのアプリもある。


 私は何となく、そのアプリを指で押した。

 私の投稿は全部消してある。

 あの、スカイさんとのやり取りのメールだけは消さずに置いてある。

 読んではスカイさんの事を思い出していたあのメール。

 もうずいぶん読んでいない。


 今も読むつもりはないけれど、何となく押したその先に、目が覚えている何度もチェックしたメールのところに新しいメッセージが入った印が入っていた。


 え?

 私に誰だろう……?

 投稿は全部消しちゃったし……。


 開くと、それは私が幾度となく求めた人の名前だった。

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