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窓越しの空  作者:
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少しずつの変化

 心はここになくても、仕事をするのであれば、正規、派遣関係なく責任がある。


 正直、仕事をしていても邪念とも言える気持ちを持ったままで、無理に気持ちを奮い立たせて目の前のやるべき事をする事が苦痛で仕方なかった。


 ただ、救われるのが米田さんや社員さんが明るく元気な事で一瞬でもいつもどんよりな気持ちが晴れる事がある。

 その時だけはいつもの自分を取り戻したかの様に笑えるのだ。


 新しく入った私にいつも誰かが声をかけてくれて、話の輪に入れようとしてくれているのがわかった。

 そんな優しい気遣いかありがたく、一人でいるよりも早く元の自分を取り戻せそうな気がしていた。


 自分の事はともかく仕事はちゃんとしなきゃ。

 派遣期間の3ヶ月で少しずつでも心の整理をしなきゃ……。


 私なりに考え始めた。




「安堂さん、旦那さんはどんな人?」



 そう米田さんに聞かれ、改めて夫の事を考えた。



 どんな人……?


 普通の人?

 顔は……、タイプという程でもないし……。

 性格は……、穏やかな方かな……?



「仕事が好きな人ですかね? 出張が多いですよ」


 無難な事しか言えなかった。




「そうなんだーー。 出張が多いと寂しいねぇ……」




「もう、慣れました……」



 慣れたし、今は夫がいない方が楽だったりする……。

 夫はどう思っているかはわからないが、これを破綻というのだろうか……。


 そんなに夫婦の事を考えた事がなかった私は、夫はこの状況をどう思っているのだろうかと疑問に思い始めた。


 夫婦で子供もおらず、仕事に忙しく出張ばかり。

 たまに帰るうちではお互いの時間を過ごし、もうずっとセックスレス……。


 そんな妻がいる家に帰ってくる夫の気持ちはどういうものなんだろう……。


 夫にとって妻である私とはどんな存在なんだろう……。

 2年程付き合って結婚した夫と私。

 あの時は確かに男女を意識していたのに。

 こんなにも変わるものなのか……。


 女だとは思われていないし、男だと思っていない。

 嫌いではないから離婚しないだけで……。

 けれど、案外みんなそんな感じで日々生活していてこれが普通なのかも知れない。


 夫もこれが普通だと思って生活しているのか……。

 不満ではないのかな……。



「どうしたの!? 何かあった!?」



 思い耽る私を見て、米田さんが慌て出した。



「あ、いや! ごめんなさい! 何もありません……!」




「びっくりした……! ちょっと考え込んじゃったのかと思った……! 聞いちゃいけなかったのかなと……」




「ごめんなさいーー!! 何もないんです!!」



 私はいろんな思いを隠し、米田さんにそう言った。



 派遣された会社には工場も併設されていて、ヘルメットを被った作業着の人も事務所を出入りする。

 工場の中にもいろんな部署がある様で、派遣されたばかりの私はどの人がどの部署かなんて全くわからなかった。


 新しく入った私はやはり珍しく、会う人会う人挨拶して去っていく。

 その度に隣に座る米田さんにどちらの方かを聞いていたら、そのうち、米田さんの方から私が聞かずとも教えてくれる様になった。


 その人の名前と部署はもちろん、特徴や趣味、家族構成や子供が何人いるとか、離婚したとかまで……、米田さんはほんとにいろんな事を知っていた。


 ある時、トイレから出たところで声をかけられた。

 作業着を着ていたので工場の人という事はわかった。

 その人の胸には【向井】と刺繍されていた。

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