動いた心
真っ暗な静かなうちへ戻った。
今日は何だか疲れた……。
ささっとお風呂に入って今日は寝ようと帰って一番にバスタブにお湯を入れた。
バスタブにお湯が溜まる間に明日のお弁当の準備をしようと冷蔵庫を開けてある物を見る。
……けれど、食材が少なすぎて作れそうにない……。
明日はお昼は外に出る事にした。
ソファに座りお風呂が沸きましたよ、の合図の音楽が流れるのを待つ。
お昼にスカイさんにメールを送って以来、私はスマホを見ていない。
今もスマホはバックの中だった。
何も気にならない訳ではない。
何も思わない訳ではない。
何も考えない訳ではない。
ただ、せっかく今日でおしまいと思った気持ちがまたブレそうで、もう少しスマホから離れていたかった。
お風呂に入ってさっぱりして早めに寝よう……。
寝てしまう事で時間を稼ぎたかったのだ……。
お風呂から出て髪を乾かす間も心のすみっこで気にしていた。
自分でも気付いているのに、でも、気付いていない自分を演じた……。
寝る準備も整ってバッグからスマホを取り出した。
いよいよの時がきてしまった。
もう、SNSをやめよう……。
やめてしまえば、もうスカイさんとの繋がりもなくなる。
それが一番いい事なのではないかなと思った。
そうする事が一番いい。
急にそう思いついた私は最後に一回、SNSを開いた。
そこには2通のメールが来ていた。
やはりスカイさんからだった。
『俺はyuuさんのほんとの気持ちが知りたい。 迷惑だったりする? yuuさんが結婚してるとか関係ないんだ。 どうしてもyuuさんに惹かれるんだ。 言葉ではうまく表現できないけど……。』
『yuuさんに会いたいんだ。』
なぜ、既婚者の私にこんなにストレートに言う事ができるんだろう……。
なぜ、リスクしかない私にそんな事を言えるんだろう……。
ガラガラと音を立てて何かが崩れて行く感じを私は感じ取ってしまった。
ダメだ……。
私もスカイさんという人をもっと知りたいと思っている……。
知ってどうする……?
私は結婚してるのに……。
『SNSという世界でスカイさんは私を美化しているのかも知れないですよ。 実物な私はスカイさんが思い描く私ではないかも知れないですよ。 顔も何も知らないのにどうしてそこまで言えるの? きっと、スカイさんが想像した私ではないよ……。』
私は想像できるイメージのギャップを突いた。
返信はすぐにやってきた。
『美化とかじゃなく優しさかな。 優しさを感じるから。 たぶん、実際のyuuさんも変わらないんじゃないかな……って思ってるかな。 じゃあ、俺から聞いていい? 俺とのやり取りは楽しい? もっと知りたいと思うのは俺だけなの?』
スカイさんとメールしていると、穏やかな気持ちになる。
いつも些細な事でも何も考えずにやり取りできて、飾らなくて済む。
自分も自然体でいれる。
そのままの感じで私も返信した。
『楽しいよ。 俺だけじゃないよ。 けどね、私はだからって知りたいとは言えない立場なんだよ。』
自分の心が動いてしまった。
あんなにも今日でおしまいと思ったのに。
真っ直ぐな強い気持ちに負けてしまった。
そうは言ってもただただ、やっぱり嬉しかった……。
どんな人かもわからないけれど、惹かれてしまったのだ……。
それを認めるしかなかった。
『知りたいんでしょ? それが素直な気持ちでしょ? もっとほんとの気持ちを話してよ。』
スカイさんからの返信にドキドキする気持ちが止められなかった。
お互いの気持ちが繋がった瞬間だった……。




