どろどろ
身体が重い。
ズルズルと引きずって布団から出る。
コンタクトをつけていないから自分の顔はよく見えない。
それでもどうやら人間らしいものが映っているようだ。
でも、一人暮らしのこの部屋にずっと1人でいると、自分が人間なのかも分からなくなる。
もしかしたら、人間じゃ無いのかも。
鏡にだけそう映るのかも。
私が人間だってことを、ちゃんと誰かに目で見て認知してもらわないと、どこからが私で、どこからが私じゃないのか分からない。
この世界に私を見る人がいなくなったら、私は居ないことになるのかな。
それとも、私が他の何かを認知している限り、「何か」で居るのだろうか。
ああ、お腹が空いたなぁ。
空気だけを食べて生きていたいなぁ。
でもきっと後でご飯を食べてしまうんだろうなぁ。
とはいえ、そのうち何も食べなくても生きていけるようになる気もするなぁ。
身体の方が重くなって、食べ物まで辿り着けなくなりそう。
その時にはもう人間の形ではない、なにかドロドロしたものになっているかもしれない。
今のことも、過去のことも、全部忘れてしまうかもしれない。
それでも多分生きているんだろうな。
どろどろになったら、今度は何かを形作る背景になるのかもしれない。
どろどろ
どろどろ
だんだん、どろどろに近づいている気がする。