第3話 パーティを組む
卒業式が終わった後、特にすることもなかったのでギルドに向かうことにした。学校の卒業生が冒険者になるため、ギルドは学校からほど近い。歩いて10分程度の距離だ。ギルドのドアを開けるとそこには土下座している男女2人組とその前に困った顔をした3人組がいた。
「頼む!仲間に入れてくれ!」
「お願いします。あなた方だけが頼りなんです」
どうにかパーティに入れてもらおうと必死にお願いしているようだ。
「いや、無理無理。お前らの能力って使いづらいしメンバーももういっぱいだから」
お願いをされていた3人組はそう言ってその場を去った。
「く、ここまでか」
「そんなー。パーティを組めないなんて。」
悲壮感漂う二人がとぼとぼとこちらに向かってくる。そして俺の顔を見るなり・・・。
「おぉ、これこそ神の思し召し。もしまだパーティを組んでねぇなら俺らと組まねぇか」
ぱぁっと顔を明るくして声をかけてきた。物好きはいたようだ。だがしかし、俺にも選ぶ権利というものがある。詳細は覚えていないが、この二人は確かDランクとEランクの能力だった気がする。
「たしか天地君だよね。ちょっと耳貸して」
俺が嫌そうな顔をしていたのを見て彼女は耳元でささやいた。
「話題の魔法使ったの君だよね。仲間にしてくれないと屋上での出来事バラしちゃうよー。」
やばい。あの時のことを見ていた人がいたのか。あの状況だけですべてが理解できるとは思えないが、余計なことを言われても困る。
最悪1人でもなんとかやっていけると思っていたため、こいつらとパーティを組むことは問題ないが、こいつらに命令されるのは避けたい。
「わかった。だがリーダーは俺だ。俺の言うことは絶対に聞く。それでいいならパーティを組んでもいい」
「本当か!」
「やったー」
こいつらはパーティを組めればそれでよかったらしい。弱みを握られているのは癪だがしょうがない。様子を見ながら行くとしよう。
「改めて自己紹介しよう。俺は天地 明日。聖術科卒、アビリティはランク外の≪レイド≫だ」
「俺は見沼 健一<みぬま けんいち>だ。戦士科卒、アビリティはEランクの≪スワンプ≫だ」
「私は桜 京子<さくら きょうこ>だよー。魔法科卒、アビリティはDランクの≪エデュケイト≫」
「アビリティの詳細はあとで教えてもらうとして、とりあえず冒険者登録をしようか」
ギルドの冒険者登録の窓口に行くとお姉さんが案内してくれた。ギルドの仕組みについて説明した後に登録という流れになるらしい。
「まず、ギルドについての説明の前に冒険者としての最低限の知識を復習しておきましょう。学校でも習ったと思いますが、なぜ魔物が出現するようになったのでしょうか」
「隕石が落下したからだろ」
見沼が当たり前といった顔で答える。
「正解です。約1000年前に隕石が落下し、その隕石内から魔物が出現したのが始まりと言われています。では、魔物たちが地上で行っていることは何でしょうか」
「誘拐だったかなー」
今度は桜が答える。勉強はしているようだ。
「その通りです。正確には子どもの誘拐ですね。理由はわかっていませんが、大人についてはその場で殺害されることがほとんどですが、子どもについては隕石内に連れ去っているようです。そのためこの国では少子化が問題になっているのです」
「連れ去られただけだからまだ生きてるんじゃないかって思っている親もいるんだよねー」
桜が悲しそうな顔で言う。
「では本題のギルドについての説明を行います。主に冒険者が行うことは次の2つです。一つ目は一般市民からの依頼に基づいて地上にいる魔物退治や材料の収集で、いわゆるクエストと呼ばれるものです。もう一つは国からの依頼に基づく隕石内の調査です。隕石内の調査は基本的に国が行っていますが、国が現在調査している層より上層については冒険者でも探索が可能です。具体的に言うと、今は国が4層の調査を行っていますので、3層までであれば冒険者による調査が認められています。ただし、より下の層を調査するためにはその前の層のフロアボスを倒す必要があります。ここまでで質問はありますか?」
「2層に行くためには1層のフロアボスを倒す必要があるってことか」
「その通りです、他には」
「フロアボスは何体もいるのかなー。国の兵士がフロアボスを倒していると思うんだけど」
「いい質問です。フロアボスが倒された場合、その下層にいる魔物が上層に上がり新しいフロアボスになることが確認されています。ですから常にフロアボスがいると思っていただいて問題ありません。また、今の話を聞いてわかると思いますが、フロアボスとその次の層の魔物はほぼ同じ強さです。格段に魔物が強くなりますので注意してください。」
「質問がなければ続けて説明しますね。地上に出現する魔物は1層の魔物と同じです。ですから、まずは地上で行うクエストをこなしていただいて、慣れてきたら隕石内の調査を行うのがおすすめです。説明は以上となりますのであとはパーティ名を決めていただいて登録していただければと思います。」
急にパーティ名と言われてもなかなか浮かばない。しばらく考えて決めたパーティ名を伝えた。
「パーティ名か。≪ルーザー≫で頼む。」
自分達のアビリティのランクが低いことを皮肉って「雑魚」という意味の名前にすることにした。
「かしこまりました。そのパーティ名で登録します。」
お姉さんが端末をカチャカチャと操作する。すると端末からカードが出力され各メンバーに手渡される。
「登録が完了しましたのでこちらのカードをお受け取りください。これはギルドカードと呼ばれるもので、パーティのランク等の情報が表示されます。フロアボスを倒したあとはギルドカードの更新を行いますので、ギルドまでお越しください。パーティのランクは「ファースト」です。1層のフロアボスを倒すと「セカンド」になります。私からの説明は以上となります。では冒険をお楽しみください」
手続きや説明で気づけば1時間程度が経過していた。主にパーティ名で悩んだのが原因だが。
「ふー、やっと終わったね。じゃあ天地君、早速クエスト受注する?」
「いや、隕石内の調査をしよう。俺に考えがある。」