50話 魔王様のお父さんの事が分かるらしいですよ?
遅れてすみません!
鏡を覗き込むと、グンセオが立ちながら手紙を読んでいる映像が流れた。徐々にグンセオの顔が怒りに歪んでき、紙をグシャっと握りつぶした。
「少し巻き戻して、手紙の内容見てみよっか」
メイゲルがそう言うと、鏡の映像が巻き戻されていく。そして、手紙の内容が見える所で止まった。何これビデオテープ?そんな感想を抱きながら鏡を見る。
「えっと、何々?」
手紙の内容はこうだった。
『今年の剣技披露大会に出席する。精々見っともない姿を見せないことだな。3年前のように。ゾルイ』
シンプルな内容だ。でも、3年前に何かあったのだろうか?メイゲルに3年前の事を聞こうとメイゲルを見る。
「ーーーー」
ゾッとした。普段どこか掴み所のないメイゲルだが、この時感じたのは明確な“殺気”だ。無意識に体が強張るのを感じ、嫌な汗が伝う。
「へぇ、あの人来るんだ」
その声音は、いつもの陽気な声ではなく、低く重圧のある声だった。口元がニヤリと歪み、それを見た瞬間恐怖に体が竦んだ。あぁ、やっぱりこの人も四天王なんだなと改めて実感する。
「まっ、グンセオの不機嫌の謎も分かったし解散だね!」
しかし、メイゲルはすぐにいつもの調子に戻る。鏡も消して、廊下を歩き始めた。
「ちょっと待ってください!?僕、何も分かってないんですが!?」
メイゲルは一人で何やら納得しているが、僕からしたら何が何だか分からない。3年前の事とか、ゾルイって人の事とか。しかし、その事を聞こうした瞬間、またあの感じがした。
「それ以上聞くな」
「っ……!?」
メイゲルの威圧をモロに受けた僕は、足が竦み、その場で倒れ込んでしまう。メイゲルはスッと笑みの戻ったが、僕の心には恐怖が埋め込まれた。
◇ ◇ ◇
メイゲルと別れ、僕は今食堂にいる。グンセオといい、メイゲルといい、ゾルイって人は誰なんだ?二人の反応から良い人ではないのは確かだろう。余計に謎が増えて頭を抱えていると、ガチャリと食堂の扉が開かれた音がした。
「あれ?菜糸様?」
食堂に入ってきたのは、リムルだった。黒髪のボブカットを揺らしながら、僕の方へと近づいて来る。……もしかしたら、リルムなら知っているかもしれない。そう思った僕は、リルムに先程の話をする。
「ゾルイ……ですか」
やはり、リルムも顔を顰める。嫌な事を思い出した様に、体を細かく震わせている。これ以上、言及しない方がいいのかな……と思った。しかし、リルムは意を決した様に言った。
「……菜糸様も知っておくべきかと……思います」
リルムの小さな口から告げられた事は、僕を絶句させるには十分な内容だった。
「ゾルイと言うのは、約三年前に……大魔王様……魔王様の父上様を殺害した張本人です」
「なっ……!?」
そういえば、魔王様のお父さんの話は一度も聞いた事なかったな……と今さらながら思った。言葉を失っている僕に構わず話を続ける。
「何の前触れもなく一人で城に攻め込んできたゾルイは、玉座に座っていた大魔王様を……」
「抵抗とかしなかったんですか……?」
いくら奇襲されたからと言って、抵抗出来ない訳ではないだろう。多少なり何か出来た筈だ。
「勿論必死に抵抗しました。大王様の近くで控えていた四天王様達も……」
リルムは「しかし……」と続ける。
「ゾルイの力は圧倒的でした……。四天王様四人がかりで戦いましたが、歯が立ちませんでした……」
その言葉に息を呑む。僕は今まで何度か四天王の強さを目の当たりにした。この人達に勝てるのは魔王様ぐらいだろうと思っていたぐらいだ。それを四人相手に一人で……?その現実離れした事実に軽く目眩が起きる。
「その後は……魔王様が王位を継いで今の形に……」
「…………その時、魔王様はその場にいたの?」
聞いて良いのか迷った末に、聞こうと思った。知っておこうと思った。何も知らずに、この城にいるのではなく、皆んなの過去を知っておきたい。それがどれだけ自分勝手な事かは分かっているけど……。
「……幸いな事に、その時魔王様は自室におられました……。大王様の死は、表面上“病死”として伝えてあります」
その言葉に、不謹慎ながらホッとした。もし、魔王様がこの事実を知ったら……そう思うと、胸の奥がキュッと締まる感覚がした。……絶対に知られてはいけない……。僕はそう思った。
「……色々教えてくれてありがとう。リルム」
「い、いえ……!そんな……!」
リルムにお礼を言うと、何故か顔を赤くしてパタパタと食堂を出て行ってしまった。そういえば、リルムは食堂に何か用事でもあったんだろうか?そんな事を考えたが、すぐにやめ思考を切り替える。
「……あの話、聞いちゃったんだ〜」
「っ……!?」
不意に背後から声が聞こえ、急な事に心臓が一瞬跳ねた。ドクドクと心臓の音を聞きながら振り返ると妖しい笑みでフヨフヨと浮いているメイゲルがいた。
「えっと……あのっ……」
どう答えればいいか分からずアタフタしていると、不意に目の前が暗くなった。「何だっ!?」と軽くパニックになっていると、耳元で聞こえてメイゲルの声がした。
「過去を知ったからには、僕達に着いて来てもらうよ?」
僕は、その言葉に体の血の気が引いた。
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