47話 魔王様達は閉じ込められたらしいですよ?
遅れてすみません!!
『魔王様! 菜糸君!大変です!』
それは、僕と魔王様しかいないにも関わらず、耳元で言われているような感じがした。そして、その声は直接能に届いているのだと分かった。声の主はメイゲルだ。僕達をここに送り込んだ時のような余裕さはなくなっており、それがより一層に今が緊急事態だと告げていた。
「どうしました?メイゲル」
『今、そちらの世界に侵入者を感知しました!!』
「侵入者!?」
この世界はメイゲルが作った世界だ。メイゲルが許可を出さなければまず入ってこれるはずがない。侵入者と言っているし、メイゲルが合意の上で入れた訳ではないようだ。だとするとーー
「誰かが別の入り口から……?」
『別の入り口……そんなものが……』
本人からしたらひとたまりもないだろう。なにせ、自分の世界に勝手に侵入できる方法があるのだから。
『とりあえず、魔王様と菜糸君をこの世界から出しますね』
「分かった」
やっと出られる……と思い、出口やら来た時みたいに吸い込みやらを待っているが、一向にそれらしき物が現れない。不思議に思っていると、またもや脳内に直接話しかけられた。
『……その……言いにくいのですが……』
「…………何?」
一応聞き返すが、ぶっちゃけ予想はついている。だって、こういう展開初めてじゃないから……。
『……お二人を何故かこちらに呼び戻せなくなりました……』
ですよねぇ〜……。そして、次の瞬間、地面が小さく揺れているのを感じた。その揺れは、徐々に大きくなってくる。
「魔王様……これってまさか……」
「えぇ……」
前方を見てみると、大きな砂煙が立ち昇っていた。目を凝らしても見ると、肌が緑色で、120cmぐらいの身長のデカ鼻人間達がこちらに一心不乱に走って来た。数は20……いや、30はいる。僕はあのデカ鼻人間を知っている。RPG等の定番モンスター『ゴブリン』だ。そして、ゴブリンで有名な話は……
『『キャッハァァ!!』』
「ひっ……!」
ゴブリンは性欲旺盛で有名だ。薄い本などでよく売られている。ゴブリンの飢えた獣のような目に、魔王様は小さく悲鳴をあげる。それもそのはずだ。ゴブリンのその目は、魔王様に集まっているのだから。
「魔王様!こっちへ!!」
「は、はいっ!!」
僕は魔王様の手を引いて駆け出す。ゴブリンは僕達の後を全力疾走で追って来る。僕と魔王様の体力はそこまであるわけではない。体育などで多少なり運動している僕はまだ平凡な並だが、ずっと魔王城に引きこもっていた魔王様は、まだ幼稚園生の方が体力あるんじゃないかというぐらい、体力がない。
「はっ……はっ……」
走って数分だが、すでに魔王様の息は上がっていた。ゴブリン達はまだまだ走れるぞと言っているかのように、まだまだ元気だ。このままでは追いつかれる……。と、思った瞬間ーー
『グガァ!?』
ゴブリンを閉じ込めるようにして壁が現れ、すぐさま箱のようになった。これって確か、お題を実行すると開く部屋……。という事は!
『遅れてすみません……!この世界は腐っても僕の世界です。外側からですが、援護します!」
「助かる!」
これは心強い味方だ。メイゲルならこの世界に唯一直接干渉できる権限を持つ。言うなれば創造主だ。そんな彼に、この世界にいる者は逆らえない。それは、数十体のゴブリンであっても。
『では、いきますよ!』
メイゲルがそう言うと、空が急に薄暗くなり、気温が急上昇する。明らかに様子が一変し周囲を見渡す。そして、この高気温の原因がすぐに分かった。……空から隕石が降ってきたのだ。
「マジかよ……」
まさかここまで出来るとは思わなかった。でも確かに創造主なのだから、これくらい出来てもおかしくはない。隕石はまっすぐゴブリン達が入っている箱型の部屋に向かって降り、部屋に当たった直後爆発が起きた。僕は、魔王様が貼った魔法壁により、傷一つも付いていない。メイゲルも、魔王様ならこれくらい防げるだろうと汲んで、このような手段を使ったのだろうか。
「うへぇ……容赦ねぇな……」
僕が思わずそう呟く。今、僕の目の前の惨状を見れば仕方のない事だ。何故なら、隕石が降った跡には大きなクレーターが出来ており、その側面には高熱による赤い残照が残っていたのだから。ゴブリンなど跡形もなく消え去った……誰もがそう思った。だが、魔王様の背後には一匹のゴブリンが死なずに生きていた。
「っ……!?なんで……!」
『まさか捕らえ損なったか……!?』
ゴブリンは、僕には目をくれず、魔王様を凝視する。ギラついた目で魔王様を見定めるように身体中を舐め回すように眺める。そして、見定めが終わったのか、まるでル◯ンジャンプのごとく魔王様に飛びつく。だがーー
「気安く魔王様に触るんじゃない……!」
『グヴェッ!?』
僕は、腰に備えられていた剣を抜き、ゴブリンの喉元を切り裂いた。ゴブリンは聞いたことの無いような声を出し、痙攣したかと思ったら、すぐに絶命した。僕は「ふぅ……」と一息をつく。周りを確認しても残党はいなさそうだ。
「あの……その……ありがとう……ございます……」
魔王様は何故か俯いてる。どうしたんだろう?と思い、グイッと魔王様に顔をよせると、その理由がすぐに分かった。
「見ないでくださいっ……!多分、今私の顔、おかしいので……」
顔を真っ赤にして、嬉しかったのかにやけていた。本人は隠したいそうだが。その顔を見た瞬間、胸がキュンっとなった。あぁ、やっぱり魔王様は可愛い。僕は改めてそう思った。




