45話 魔王様と仲直りするらしいですよ?
「…………」
「…………」
沈黙。お互いに何を言えばいいのか分からず、気まずい空気がこの空間を占めている。メイゲルはそんな僕達を面白そうに眺めている。誰のせいでこんな状況になっているのか分かっているのだろうか?
「あ、あの!」
「ひゃい!?」
僕が意を決して声をかけると、魔王様が驚いて可愛い噛み方をした。噛んだのが恥ずかしかったのか顔が赤い。なんだこの可愛い生き物は。
「その……すみません!!」
「へ?」
僕の突然の謝罪に魔王様は少し間抜けな声を上げた。でも、僕は謝らなければならない。
「その……勝手な行動をしてしまった事やその……勝手に……して……しまった事……とか……」
「っ……!!」
最後辺り恥ずかしくなってどもってしまった……。魔王様も僕と同じく、あの事を思い出して顔を手で覆い隠して顔を真っ赤にしている。
「その……私も……ごめんなさい……。私こそ勝手なことばかりして……」
顔を覆い隠したまま魔王様も謝罪する。何故かそんな魔王様が微笑ましく思って、クスリと笑ってしまった。
「なんで笑うんですかぁぁ!!」
笑った事が気づかれて、魔王様は顔を赤くして僕をポカポカと殴ってくる。全然痛くない。とりあえず、仲直り出来た……のかな?
「さぁ!お互いに気持ちをぶつけ終わったところで!もっとお二人には仲良くなってもらうために僕も強力しちゃおうかな」
「「へ?」」
嫌な予感しかない。メイゲルが人差し指を立てると、その指を中心に黒い何かが現れ、僕達を飲み込む。
「な、何これ!?」
「きゃあぁぁ!?」
黒い何かに飲み込まれた僕達は、ぐるぐると回っているような一直線に落ちているような不思議な感覚に襲われる。そして、ドサっと固い何かに落とされた。
「ん……?」
そっと目を開けると、僕達が花畑が一面に広がっている野原にいる事が分かった。蝶や小鳥のさえずりが聞こえ、とても穏やかな気持ちになる。空は快晴で、日当たりもいい。そういえば、日光なんて久しぶりに浴びた気がする。とにかく起き上がろうと近くに手を付くと、
ムニっ
「んっ……」
色っぽい声と共に、とても柔らかい感触が僕の掌を通って伝わってくる。……なんか前にもこんな事があったような……と思いながらそぉっと目を向けると、僕の掌は魔王様の豊満な胸を掴んできた。
「わぁぁっ!?」
咄嗟に手を離し、魔王様の様子を伺う。やっとの思いで仲直り出来たのに、こんな形でまた距離を取られたくない。……どうやら魔王様はまだ目を覚ましていないみたいだ……。ほっと胸を撫で下ろし、起き上がる。
「さて……これはどういう状況だ……?」
何故こんな場所に飛ばされたのかとか、メイゲルがどんな企みでこんな事をしたのかさっぱり分からない。あれこれ考えていると、魔王様が起きた。
「ここは……?」
「僕にもさっぱり……」
どうやら、敵などはいなさそうだ。だけど警戒しておくのには問題ないだろう。剣も腰に付いてるしね。ここに立ち止まっていても埒が明かないし、適当な方向に歩いてみる。
「メイゲルがした事ですし、危険はないとは思いますけど……」
確かに危険はないかもしれない……。だけど、メイゲルはこういう事は好きそうだしなぁ……。さっきも、僕と魔王様の様子を見て楽しそうに笑っていたし。何かしてくるかもしれない。
「とにかく、何か出口のようなものを探しましょう」
「そうですね」
方針が決まり、二人で花畑の野原を歩いていく。時々、花を摘んだりと休憩しながら歩くが、出口らしきものが一向に見えてこない。結構歩いたはずなのに、空腹等が全然ない。やはりここは異様な空間なのだろう。
「はぁ……出口はどこーーって、え?」
再び歩こうとすると、急に花畑の中から何の前触れもなく白い壁らしきものが飛び出してきて、僕と魔王様を囲み、閉じ込めた。蓋をするように上にも壁が現れる。僕は箱の中に閉じ込められたような気分になった。魔王様は急な事に「え?え!?」とオロオロしていた。急な事態に弱いんだなぁ……と魔王様の新たな所を見れた嬉しさを、この状況で素直に喜んでいいのか微妙な気持ちになった。
「何これ……」
閉じ込められた直後は真っ暗で何も見えなかったが、パッとすぐに明かりがつき、部屋?の状況が把握出来るようになった。白い壁の四面体。装飾等は一切なく目の前の壁には、扉のような物があった。ダメ元でドアノブを回したが、案の定鍵が掛かっていた。そして、扉の上には何やら看板がある。
「えっと……なになに……」
その看板には、『今いる者同士で手を繋いだ時、この扉は開かれる』と書いてあった。何かどこかで見たことのあるシステムだが、知っているからこそ焦る事なく冷静になれた。
「魔王様、この扉は手を繋げば開くらしいーーって、聞いてます?」
僕がこの部屋も脱出方法を教えようと魔王様を見ると、何故か背を向けてもじもじしていた。耳を澄ませると、「菜糸君とーー繋げるーー」と聞こえてくる。気のせいだろう。うん。……少しだけど、メイゲルの目的が分かったような気がした。
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