42話 魔王様と一緒に出るらしいですよ
「おい貴様」
「僕の事?」
「他に誰がいる」
僕の腕から解放されたグンセオは、ゆっくりと立ち、ロズイルを見据える。
「どうもこの体じゃ、あのゲス野郎の致命傷は与えられないらしい。だからーー」
その表情は、大切な人を守る事だけを考えている男の顔だった。
「手を貸せ。今はお前の力が必要だ」
「随分素直だね?」
「アホ抜かせ。一時休戦だ。お前が言ったことだろ」
「で、僕は何をすれば?」
「俺と一緒に剣を持て。力が入んねぇんだ」
グンセオにそう言われ、了解と小さく返事をする。右腕はグンセオを支え、左手で剣を支える。そして、二人合わせて足に力を込め、地面を思い切り蹴る。いつもなら揃うはずのない足や呼吸や走るスピード……その全てが自然と噛み合う。ロズイルは急に突っ込んできた僕達に魔力弾を放つ。しかし、その魔力弾は突き出している剣に直撃し霧散する。
「っ!?なんだってんだよお前らはぁぁぁ!?」
魔力弾が霧散した事で焦ったのか、ヤケクソ気味に魔力弾を撃ってくる。しかし、その魔力弾も剣に当たり霧散する。そして、ロズイルの間合いに入りーー
「「死に晒せ!!クズ野郎が!!」」
二人揃えて、ロズイルの腹部に突き刺す。二人分の力が合わさり、剣がロズイルの背中を貫通した。ロズイルの口から血塊を吐き出した。
「ぁ……ぁぁ……!」
ロズイルはよろよろとよろめいた後に、バタッと床に倒れた。勝……たのか?僕は初めて人を斬って……殺した。いや、人に分類していいのかは不明だけど……。でも、手には確かにロズイルを突き刺した時の感触が残っている。
「人を斬ったのは初めてなのか?」
「まぁね……普通に生きていたら、人を斬るなんて事起きないし……」
「……気にしてんじゃねぇよ。この世界は弱肉強食だ。弱い奴から死んでいく。こんなんでビビってちゃお前、すぐ死ぬぞ?」
「分かってる……」
震える手をなんとか諌めながら、グンセオと一緒に魔王様のところへ向かう。どうやら魔王様は気絶しているらしい。グンセオが「何したんだ……?」という目で僕を見てきたので、全力で目を逸らした。
「ガハハっ!!お前さんやりおるのぉ!!感服したわい!」
「そ、それはどうも……」
ガムイが僕の背中をバシバシ叩いて大笑いしている。結構痛いから叩くのはやめてほしい。そして、気がつくと黒い靄もすっかり晴れて、部屋全体を見渡せるようになった。
「おっ!メイゲル!無事だったんか!」
「あぁ……なんとかね……。というか、なんでガムイはそんなに元気そうでなの……?リアスは不死身だから分かるけどさ……」
「ガハハっ!こんなもんは気合でなんとかなるわい!」
ガムイの返答に苦笑しているメイゲルを横目に見て、やっと終わったのだと実感出来た。
「ほらほら!早く魔王様を城までお連れしないと」
「そうだな……ぐっ……!」
リアスの掛け声で、どうやらグンセオも一緒に魔王様を運ぼうとして起き上がったが、傷が深すぎて思うように立てないでいる。
「あんたも素直に運ばれてなさい。本当なら死んでてもおかしくない傷なんだからね?まぁ、あの筋肉バカは例外として」
「もしや、その筋肉バカとは俺のことか?」
見ると、リアスの隣にガムイが立っていた。リアスが「他に誰がいるの?」と言ったら、「何っ!?」と意外だったみたいな反応をしている。あの二人は仲がいいんだか悪いんだか……。
「くそっ……!合法的に魔王様の肌を触れると思ったのに……」
グンセオが運ばれながら何やらブツブツ言っていたので溝打ちを食らわそうとしたが、流石に重傷者にそんな事をするほど僕はクズではない。怪我が治るまで我慢する。
「ほら!メイゲルも立った立った!」
「ま、待って……!結構空いた場所傷んだよ?もっと丁寧に……!」
「あんた悪魔なんだから、こんなんで死なないでしょ!動けるならさっさとここから出なさい!」
どうしよう。リアスがオカンに見えてきた。僕も早く出ようとコウモリと一緒に魔王様を担いで部屋を出る。すると、そこにはフィルンとスミレが立っていた。
「……勝ったんだな」
「お前たちからしたら負けだろ?」
「ふっ……そうだな」
フィルンはサラサラな金髪を揺らしてこちらに歩いてきた。まだやる気か……?と身構えたが、フィルンはすっと手を差し出した。これってーー
「俺は敵でも味方でも、勝った奴には礼儀を忘れない男だからな」
「そうか」
僕は苦笑し、出された手を握る。なんか殺しあった奴と握手するって変な感じだな……。そして、スミレも近づいてきて、「ありがとう……」と、とても小さな声で言った。初めて話したスミレに驚いていると、フィルンも口をあんぐりとさせていた。驚き過ぎだ。
「じゃあ、またな」
「あぁ、あの剣士にも『また闘おう』と伝えといてくれ」
「分かった」
フィルンとスミレにも別れを言い、今度こそ本当にロズイルの城から出ることができた。それほど長い時間いたわけでもないのに、外がとても懐かしく感じる。空がこんな薄暗くなくて、魔界でなかったらもっと気持ちよかったのだが……。僕は、眠っている魔王様をチラリと見て、ゆっくりと歩き出した。
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