37話 魔王様は暴走するらしいですよ?
遅れてすみません!
「やめて……ください……!!魔王様……!」
「魔王様……お辞めを……!」
「ダメ……!魔王様……!」
「辞めてくれ……魔王様……!」
「お辞めください……魔王様……!」
「ダメです……魔王様……!」
皆んな、重力によって押しつぶされそうになりながらも、魔王様の決断を止める。皆んな、本当なら声も出せない程苦しいはずなのに、自分の事より魔王様を優先する。四天王の皆んなはそういう人達だ。だけどーー
「でも……!それでは皆んなの命が……!」
それは魔王様も同じだ。魔王様も自分の事より、四天王も皆んなや僕を優先してしまう。そういう人だ。でも、だからこそこの状況では危ないのだ。ロズイルは、お互いをお互いに優先してしまう魔王様達の気持ちを利用している……。
「はははっ!!とても美しい仲間愛ですね!!歓迎致しましたよ!」
「ロズイル……!!」
今、この場での主導権はロズイルにある。それは紛れもない事実だ。どうにか打開策はないか……!と、目をあちこちに巡らすと、グンセオの息が荒い事に気づいた。
「グンセーー」
チラリとグンセオの顔を見ると、そこには狼のような鋭い目でロズイルを睨みつけ、飢えた獣のように、今にもロズイルに噛みつきそうな勢いだ。こんな顔のグンセオ……見たことがない……。
「ゲス野郎が……!!あぁぁああぁ!!」
「なっ……!?」
グンセオは、大声を上げたかと思ったら、剣を使って無理矢理その場に立った。その瞬間、剣からピキッと嫌な音が聞こえた気がした。しかし、ロズイルはそれにきづかないのか、剣を構えようとする。
「おやおや……これは驚きましたね。まさか私の『グラビティ』を受けてなお立つ者がいるとは……」
「へっ……!こんなの……楽勝だっての……!」
「その割には、足が覚束ないようですね……?」
「うっせ……」
そのままグンセオは、一歩、また一歩とロズイルに近づく。それは重い一歩だったが、確実な一歩だった。これならいける……!と思った。しかしーー
「ん〜……“邪魔”ですね……」
「え……?」
ロズイルはそう言うと、前に指を銃口の形にして突き出す。そして、指の先が黒く光り出した。
「……!!やめっ……!!」
「死んでください」
魔王様は、何かを察して止めようとしたが、遅かった。指先の光はロズイルの指から離れた。そして、その光は勢いよく前に飛んでいき、グンセオの体を貫通した。グンセオの体は、まるで物が落ちたように、なんの抵抗もなく地面へと叩きつけられた。
「グンセオ!!」
「ぁ……あぁぁ……」
グンセオが地面に倒れたのを見た魔王様は、絶望のあまり声が出なくなっていた。
「あぁ……!魔王様……!なんて美しい顔をなさるのですか……!!すみませんが、こいつらを生かしておくと言いましたがーー」
ロズイルはそう言いながら、『グラビティ』で動けないでいる僕達に指を向ける。
「取り消します」
「ーー!!ダメっ……!!」
ロズイルが突き出した指に、先程と同じ光が集まり、僕らに放たれる。そして、その光はーー
「がっ!?」
ガムイの体を貫通する。その後に、リアス・メイゲルと続けて胴体に穴が空いた。それは、僕にとって耐えられるものではなかった。この僕でさえ目を覆いたくなる現場、魔王様にとっては想像を絶する程の絶望感だろう。考えたくもない……。
「……めて」
「え……?」
魔王様の喉から掠れた声が聞こえた。普段の魔王様からは考えれないほど掠れていた。
「やめて……やめてやめてやめてやめて……!!」
涙を流し、耳を抑え、今の状況を否定しようとしている。その姿が痛痛しく、正視できない。しかし、ロズイルにとって魔王様の状態は、興奮剤にしかなっていなかった。
「はははっ!!魔王様がこんな顔をするなんて……!もっと!もっと見てください!!」
そう言って、ロズイルは僕に指を向けた。指先に光りが集まる。今の僕には避けられない。確実に死ぬ……そう思った瞬間……
「えーー?」
ロズイルの右腕が吹き飛んだ。ロズイルも僕もリルムも、その一瞬の事が理解できなかった。右腕がなくなったロズイルの右腕からは、滝のように血が流れている。
「ぁ……あぁぁ!!私の……!私の腕が……!?」
ロズイルは、腕の先がなくなっている右腕を抑え、地面でのたうち回っている。そして、僕はそんな状況にした張本人に目を見やる。
「魔王……様……?」
いや、それが魔王様なのか、僕にはもはや判断がつかなかった。魔王様を中心に黒い渦が渦巻いており、背中の羽が今まで以上に巨大化している。魔王様は苦しそうに、顔を埋めている。
「こ……ないで……菜糸……君……」
魔王様はそれだけ言うと、闇の渦の中へと消えていった。その渦は、徐々に大きくなっていき、直径3mはあるんではないかって程に大きくなった。
「……!『グラビティ』が解けてる?」
少し体を動かすと、自由に動かせる事に気づく。これなら、魔王様のところに……!
「やめ……て……おけ……」
「……!グンセオ!」
魔王様の元へ行こうとしたのを止めたのは、体に穴空いて瀕死であるはずのグンセオだった。
お読みくださって、ありがとうございます!




