33話 魔王様を侮辱すると、ただでは済まないようですよ?
遅れてすみません!
「貴方達の命、貰い受けますね」
その言葉を聞いた瞬間、僕達の背中にゾワリと冷たいものが走った。前にあった化け物とは違い、フィルンの目には殺意しかなかった。少しの油断もなく、僕達を“標的“と見ている。
「くっ……!!ここは俺がやる!!お前らは先に行け!!」
「でっ、でも……!!」
いくらグンセオでも、フィルンを一人で足止めは厳しい。先程の攻撃も、僕には何も見えなかった。何もない空間からフィルンが突然現れたように感じた。恐らくグンセオも、間一髪で間に合ったのだろう。もしあの攻撃が何回か出されたら……?そんな嫌な想像が頭をよぎる。
「こんな時にお喋りですか……」
「「っ……!?」」
僕とグンセオが言い合っているところに、フィルンの剣が飛んでくる。剣を前方に突き出して、投げたのだ。まさかの攻撃に驚きはしたけど、間一髪で避けることができた。しかし、これでフィルンは剣を持っていない。今なら……!!
「なっ……!?」
「武器が無くなったと思いました?」
しかし、フィルンの手には、剣が無くなったどころか、両手に剣を構えている。武器が……増えてる……!?
「私の魔法……生成魔法です」
剣を器用に回しながら、爽やかな笑顔をするフィルン。生成魔法……今の僕達には厄介な魔法だ。それに、フィルンにとって、これ以上ない便利な魔法だろう。
「私は、この魔法を完璧に使いこなすために、血の滲むような努力をしたんです……」
なんか自分語りをし始めた。
「それは……ある事を成し遂げるために……!」
しかし、フィルンは、涙血を流さんばかりの熱弁をした。何が彼をそこまでさせたのか……。
「自分が生成した愛の花束をスミレに渡すために努力をしたんだ……!!」
結構しょぼい理由だった。しかし、その言葉と同時にフィルンの殺気がみるみる出始めた。何が起こってるんだ?
「その努力を……スミレを……お前が奪ったんだ!!」
「………えぇ………?」
思わず困惑の声が出てしまった。さっきから僕を狙っていた理由ってそれ……?さっきの理由も恐らくこれが原因だろう。
「小さい……」
多分、スミレに好かれないのは、器の大きさじゃないだろうか?しかし、本人がそんな事を自覚しているわけもなく、変わらず僕に殺気を送り続けている。正直言って迷惑すぎる……。
「菜糸!!この私とスミレを賭けて勝負しろ!!」
「お断りします」
「なっ!?」
僕は即答した。だって、僕がフィルンと真剣勝負をして勝てるわけがない。それは自分がよく分かっている。それに、人を賭け事に使う事自体、僕はあまり好きじゃない。それも、本人に断りもなしに。
「ふんっ!恐れをなして逃げたか!お前はスミレに相応しくない!」
何言われようが、僕は無視をした。取り合うのも馬鹿らしい。他のみんなもそう思ったのか、呆れながら階段を登り始めた。僕も、フィルンを無視して階段を登ろうとしたら、先程までキャンキャンと騒いでいたフィルンが、急に大人しくなった。そして……
「はっ!こんな腰抜けを好きなるなど、魔王の目も腐ったな!!将来の魔界が心配になる!役立たずの魔王など、早く王などやめてしまえばいいのだ!!」
「「「「「………は?」」」」」
この一言が、僕達の頭に火を点けた。それはそうだ。僕達がいる時に、魔王様の悪口を言うのは、絶対してはいけないタブーだからだ。
「お前今、なんつった?」
グンセオが剣を抜く。それを見たフィルンはニヤリと笑い、剣を構える。
「やっとやる気になったか?しかし、私が戦いたいのは貴方ではなく、ないとっ!?」
「ペラペラうるせぇんだよ」
グンセオは、いつのまにかフィルンの背後を取り、首に剣を当てている。グンセオの目には、殺意だけがあった。ここで殺さないのは……簡単に殺さないためだろう。
「くっ!?いつのまに……!?」
フィルンは咄嗟に剣を引き剥がし、グンセオから距離を取る。しかし、予想してか偶然か分からないけど、飛び退いた先にはリアスがいた。
「はぁ〜い♡」
「……っ!?」
フィルンはリアスに気づいたが、もはや後の祭り。リアスの背後には何百、何千匹のコウモリの群れが待機していた。コウモリは一斉にフィルンに襲いかかる。
「クソっ!!やめろこの!!」
剣を乱雑に振り回しているが、コウモリにはカスリもしていない。それはそうだ。リアスによって鍛えられたコウモリだ。戦い方をちゃんと理解している。
「ぐっ……!このっ……!!」
フィルンは生成魔法で火炎放射器を作り出し、あたり一帯に炎を吹き散らす。コウモリは一斉に飛び退く。……これも、四天王達の予想通りなのだろうか?コウモリが飛び退いた瞬間、背後にはガムイが佇んでいた。フィルンは、コウモリのせいで、ガムイが近づいてきた事に気づかなかったのだ。
「おらぁ!!」
ゴスっ!!
「がぁぁあぁ!?」
ガムイがフィルンの横腹を思い切り殴った。鈍い音と共にフィルンは空高く打ち上げられた。空中では、回避など出来ないだろう。そして……
「………死ね」
メイゲルがそう言いながら、指に黒い魔力が集まる。これって……僕は、化け物の反応を思い出す。あれをするのか……と苦笑するが止めない。報いを受けるがいい。
ドキュン!!
指先の魔力が離れ、フィルンに直撃する。そして……
「ああぁぁぁあぁぁ!?」
悲鳴。フィルンは背中を仰け反り、バチバチと雷を浴びる。そして、そのまま地面に受け身を取らず落下。あの高さだ。無傷では助からないだろう。僕は、フィルンが落ちたところに向かう。……ここからは、僕のやり方をさせてもらう。
およみくださって、ありがとうございます!




