表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある男子高校生が魔王(女)に惚れられたらしいですよ?  作者: 高良 トウ
3章 魔王様の婚約者登場するようですよ?
25/52

25話 魔王様(女)が拐われたらしいですよ?

「っ……!取れない……!」


魔王様が手首に繋がっている手錠を外そうとしている。僕達が一斉に力を入れても、ビクともしない。魔王様は魔力を使い、自分の身体能力を高めようとするが、何故か魔力が発動しない。


「なんで魔力が……!」


そんな様子を、ロズイルは嫌らしい笑みをしながら眺めている。


「その手錠は特別製でね、魔力を完全に遮断出来るのですよ」


それでも僕達は手錠を外す事を試みる。しかし、やはりビクともしない。


「おい!この手錠を離せ!」


僕はロズイルに叫ぶ。しかし、ロズイルはそれを軽く受け流すように肩を竦めた。まるで“無駄な事をしているな”と言わんばかりに。


「さて、もう良いでしょう。魔王様、我が城にご足労お願いします」


ロズイルはそう言い、優雅にお辞儀をした。しかし、僕達がそんな事を聞くはずがない。ロズイルなんか無視して、この手錠を外そうとしたらーー


「きゃっ!?」

「魔王様!?」


突然、魔王様の体がふわりと浮いた。まるで、羽が生えたようにフワフワと浮き、徐々にロズイルへと近づいていく。魔王様は必死に抗おうと足をバタつかせているが、空中にいるため、空気を切るだけだった。そして、魔王様の抵抗も虚しく、魔王様はロズイルに肩を抱かれているような形になった。


「はっ、離して!!」


魔王様が必死にロズイルから逃れようと身を捩らせている。しかし、当然のようにロズイルの手からは逃れる事が出来ない。ロズイルは、そんな様子も楽しむかのように笑っている。


「魔王様に、その汚い手で触るな!!」


僕は怒鳴りつけながらロズイルに向かって走る。右拳を作り、ロズイルに向けて振り下ろす。


「っ……!?」


しかし、何かの壁に跳ね返されるように、僕の体は3〜4m程飛んだ。受け身も取れず、無様に地面を転がり悶絶する。体のあちこちが痛いが、その痛みを無理矢理振り払い、地面に手を付き起き上がろうとする。


「くっ……!」


しかし、何故か僕の体は言う事を聞いてくれない。辛うじて腕は動くのに、足が全然力が入らない。それは、徐々に体に広がっていき、とうとう腕までもが力が入らなくなってしまった。ガクッと体制を崩し地面に横になる。


「何を……した……!!」


流石に僕でも、跳ね返されたくらいで立てなくはならない。それに、体に力が入らないのは異常だ。ロズイルが何かをしたと考えるのが普通だろう。


「私は何も。しかし、人間が私の魔力に触れれば、強力過ぎて、体が耐えられなくはなるかも知れませんね」


ロズイルはそう言い、ニヤッと笑った。くそ……!はめられた!魔王様に何かをすれば、僕がロズイルに攻撃を加えるという事は簡単に予想出来ただろう。ただそこに、自分の魔力を張ればいいだけなのだから。


「リルムがまだいるよ!」


すると、ロズイルの後ろに、いつの間にか回り込んでいたグンセオの姿をしたリルムが指を絡ませた手を振り上げていた。ロズイルはこちらに気をとられていて、反応が少し遅れた、これなら当たる!と、思った瞬間ーー


「甘いですね」


ロズイルを中心に暴風が吹き乱れた。その風は、机などに当たると、どの机を真っ二つに切り裂きながら、あちこちと暴れまわる。


(くそ……!カマイタチかよ……!!)


なんとかカマイタチの直撃は避けられたが、リルムは風邪のせいで壁に激突してしまっていた。


「リルム……!?」


慌ててリルムに近づくと、どうやら頭を打ってしまい、気を失ってしまったようだ。これで残っているのは僕だけ……。そう考えた瞬間、僕の体から冷たい汗が噴き出した。心臓の音も大きくなる。


「おやおや、そんな弱々しい目で大丈夫なのですか?」


僕が今、怯えている事をロズイルは瞬時に理解した。全くその通りだから怖くも感じる。もし、この恐怖に屈したら戦えなくなる……そんな気がした。


「もうここには用がないので、私は戻ります。……魔王様を連れて」


そう言うと、魔王様が小さい球になり、ロズイルのポケットへと吸い込まれていった。一瞬にして起こったことに、僕は混乱を隠せなかった。しかし、ロズイルは、そんな事などおかまない無しに、窓辺に立ち、窓の外を見やる。


「うん、ここが良さそうですね」


ロズイルがそう呟くと、それは、生まれたての羽のように、謎の液体を飛び散らせながら背中から羽らしき物が飛び出してきた。しかし、ロズイルのために生えてきたのだと言わんばかりに、大きさなども丁度良く、ロズイルがなんともなかったように羽を動かし、飛んでいた。


「では、また」

「待てっ!!」


小さく挨拶をしたかと思ったら、窓を勢いよく割り、空高くへと飛び上がっていった。それも、目では追えないほどの速さで。手を伸ばし、ロズイルが逃げないように足を掴もうとしたが、物凄い速さのため、触る事すら出来なかった。


「魔王様……!!」


僕は、ロズイルが飛んでいった方角を呆然と眺めた。空気を切った僕の手は、行き場を失ったため、そっと降ろした。魔王様が拐われた悔しさと喪失感。そして、ロズイルへの怒り。その感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、何が何か分からなくなってしまった。そして、そんなぐちゃぐちゃな感情の後に出てきた感情ーー


「また……何も出来なかった……」


悲しさ。不甲斐なさ。それが一気に押し寄せてきた……。














お読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ