22話 魔王様(女)の気持ちを知りたいようですよ?
「魔王様……!」
僕は魔王様の部屋の扉を開く。ドアを開けると魔王様が鏡台の前にある椅子に腰掛けているのが見えた。急に扉を開けてしまったから、魔王様が驚いた顔でこちらを見ていた。でも、今の僕には関係ない。
「魔王様が……結婚するって本当ですか……?」
「っ……!」
魔王様が一瞬目を見開く。……この反応だと本当なのだろう……。その事実が僕の胸を抉る。でも僕はその気持ちをぐっと堪え、一番確認したい事を確認する。
「魔王様は……これで良いんですか……?」
「…………」
無言。魔王様の部屋を静寂が包み込む。僕はじっと魔王様の答えを待つ。聞いてどうするんだと思うけど、どうしても確認しておきたい。
「仕方……ない……のです……」
「っ……!」
「!!菜糸君!!」
僕は思わず部屋を飛び出した。魔王様の声も僕の耳には届いていなかった。無我夢中で駆け出した。まだ魔王城の中を完全に把握していないのにも関わらず、脇目も振らずどこか人気のない所を本能のまま探した。
「はぁっ……はぁっ……」
しばらく走り、周りに人気が無いのを確認して、壁に背を預け座り込む。荒い息を整えながら、先ほどの魔王様の顔を思い出した。
(僕……何やってんだ……)
『これで良いんですか?』と聞いた時の魔王様の顔は……とても悲しそうで……寂しそうで……見ていられなかった。本当なら気の利いた言葉をかけてあげる所だろうけど、僕は言葉が出てこなかった。
(くそっ……!)
何も出来なかった自分に苛立ちを覚えた。化け物の時以来、僕はグンセオに剣を習っている。何も出来なかった自分を変えるために。
(何も変わってないじゃんかよ……!)
剣を習って、自分が変わっていると錯覚していただけだ。自分は変わろうとしているって自分を安心させようとしていただけ……。そんな自虐を繰り返した。悪い癖だ……。嫌な事あるとすぐ自虐をしてしまう……。
(戻ろう……)
いつまでも、このままでいるわけにはいかない。一度食堂にでも戻り、頭を冷やそう……そう思い、立ち上がるとーー
「ねぇ」
「……!?」
突然後ろから声をかけられた。人気がないと思ってたからこそ凄くびっくりした。声の主は、先程思い切り頭をぶつけた女の子だ。
「君は……」
「私はリルムだよ。さっきはありがとう」
リルムは簡単に自己紹介とお礼を言った。お礼を言われるような事はしてないんだけどなぁ〜……。でも、お礼を言われて嫌な気持ちはしない。
「どういたしまして」
僕は優しく微笑んだ。この子を見ていると先程の暗い気持ちも晴れていくようだ。
「ねぇねぇ、さっき保険のお姉さんが言っていたんだけど……」
「ん?何かな?」
リルムは少し顔を赤らめて、もじもじし始めた。どうしたのだろう?保険のお姉さんって、あの茶髪の人の事だろうか?
「リムルの体にイタズラしたって……」
「あの女ーー!!」
くそっ!こんな幼気な子になんて事を教えているんだ……!今度会った時は、毛布で包んで押し入れに入れてやろう。然るべき報いだ。
「リルムちゃん。僕はそんな事していないよ?」
「え……?してないの……?」
「なんでそんな残念そうなの?」
僕はこの日、ロリコンに目覚めないように食堂に向かう間、邪念を取り除くお経を唱えながら向かった。
◇ ◇ ◇
「……これからどうするんだ?」
食堂に戻ると、グンセオがそう聞いてきた。これからか……。そもそも僕に出来る事があるかすら分からない。でも、魔王様はロズイルとの結婚は望んでいないのは確かだ。僕だって魔王様があんな奴と結婚なんてさせたくない。
「まだ分からないけど……それでも僕に出来る事を精一杯やるつもりだよ」
「そうか……」
僕の答えに満足いったのか、そっと目を閉じて頷いた。こういう時のグンセオは凄いと思う。こういう時は。
「ところで……」
「……?」
さらにグンセオが言葉を続ける。これ以上に何かあるのか?
「テメェは何してんだ……!?」
「うきゃ!?」
グンセオは、さりげなく僕の隣にいたリルムを掴み、怒鳴りつけた。この子違和感がなくて、すっかり忘れていた……。
「グンセオには関係ないでしょ!!」
「あんだと!?」
なんか嫌な空気になってきた……。ここで喧嘩されると困るんだけど……。でも、中学生くらいの女の子と、グンセオじゃあ戦力が違いすぎるけど大丈夫なのか……?
「なめやがって……!」
「だったらリルムに攻撃してみる?」
「くっ……!」
リルムが自分に攻撃を加えるか聞くと、グンセオはおとなしく引き下がった。あれ?なんか妙に聞き分けよくね?
「素直に相手の言う事聞くとか、どう言う風の吹きまわし?」
「アイツの能力が厄介なだけだ……!」
グンセオはそれだけ言いすてると、どこかへ行ってしまった。リルムの能力?
「ねぇリルム。君の能力って?」
「リルムの能力?う〜ん……多分すぐ分かるんじゃないかな?」
リルムはそう言うと僕の腕にしがみついてきた。
「リルム!?」
「えへへ〜」
「っ……!」
かっ……可愛い……!こんな幸せそうな顔でしがみつかれるとこっちが恥ずかしいんだけど……。この後僕は、リルムに可愛い仕草で2,3度悶絶した……。
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