19話 魔王様(女)の城にまだ住人がいたそうですよ?
今回が2章最終回です
場所を移動し、人気のない岩陰に来ている。グンセオは僕に背を向け黙っている。その時間は数十秒だったはずだが、僕はその間が長く感じた。
「ねぇグンセオ。こんな所に連れてきてどうしたの?」
「……お前、今回何した?」
「何って……?」
そう聞き返したが、大方予想はついている。おそらくグンセオが聞きたいことは……
「お前は、魔王様のために何かしたのか?」
「っ……」
僕は先程の戦いで何もできなかった。それどころか、足手まといになっていた。四天王の皆は、魔王様のために命を張っていた。でも僕は何をした?ただ逃げ回って、怯えて、ただ立っていただけ……。
「俺たちは魔王様のために死ねる覚悟があんだよ。それが魔王様のお側に置いて頂ける最低限の条件だと思ってる。でもお前はどうだ?魔王様に惚れられたってだけでお側にいられる。だったら、命を張っている俺たちは何なんだ?」
グンセオの言葉が胸に突き刺さる。そうだ……。皆は、魔王様と一緒にいたいから死ぬほど努力して強くなった……。でも僕は、魔王様に惚れられたってだけで一緒にいられる。僕は……四天王の皆と一緒にいる価値があるのか……?
「……その顔は、自分でもよく分かっているって顔だな」
「……うん」
そして、再び訪れる沈黙。グンセオは僕をじっと見ている。多分、僕の答えを待っているんだ。これからどうしたいか、どうしていくか……僕の答え……覚悟を待っているんだ。
「僕は……強くなりたい!」
「……簡単に言ってくれるじゃねぇか」
確かに簡単なことではないだろう。グンセオ達は、死ぬほど努力して強くなった。それは、僕には想像も出来ないくらい辛くて厳しいほどに……。それを、簡単に「強くなりたい」と言われれば感に触るのも無理ないだろう。
「確かに簡単じゃない……。一人で強くなるのも無理があるしね。だから……」
僕はここで言葉を切った。今から言うのは自分勝手だ。自己中心的だ。それを、してくれるかさえも分からない。でも、そうでもしなければ僕は強くなれない……そう確信できた。だから、僕は精一杯の誠意を込めて……頭を下げた。
「だから……!僕に剣を教えてくれ!もう、何もできないのは嫌なんだよ……!」
「…………」
グンセオは黙っている。腕を組み、目を閉じて静かに立っている。心臓の音がうるさい。手汗がじっとりと滲んでいる。それでも僕は、頭を下げるのをやめなかった。
「……ついてこれるのか?」
「ついていってみせる……!弱音も絶対吐かない!」
その言葉を聞いた瞬間、グンセオの顔がにっと笑った。それを見た時、僕はグンセオの意図が分かった。多分グンセオは、僕の覚悟が知りたかったんだ。僕を見極めたかったんだ。本当に僕は、魔王様が惚れるに値するのかどうかを……。グンセオの表情を見ると、僕はグンセオの納得いく答えを出せたようだ。
「言うじゃねぇか!なら明日からみっちり仕組んでやっから覚悟しとけよ!」
「よろしくお願いします!」
こうしてグンセオの剣術指導が始まった。
◇ ◇ ◇
「おいおい!腰が引けてるぞ!もっとがっしり構えろ!」
「確かに剣術の指導頼んだけどーー」
「本物の剣で指導すんじゃねぇよ!!危ないだろ!?」
あの一件から僕は、グンセオに剣術の指導を受けている。でも、僕の考えは甘かった。まさか指導の時の剣が、木刀や竹刀じゃなくて、本物の剣だとは……。これ、一歩間違ったら死ぬぞ!?
「木刀とか甘えた事言ってんじゃねぇよ!この死と死の瀬戸際での訓練が強さの秘訣だからな!」
「それで死んだら本末転倒だ馬鹿野郎!!」
本物の剣同士で、グンセオは僕に剣の指導をする。横薙ぎ、付き、はらいを僕は、剣で防がなくてはならない。そうしないと、僕に訪れる未来は皆無だろう。
「オラオラ!受け流さなければ、自分から攻めれねぇぞ!!」
なんか楽しそうだなグンセオ……。ジリ貧な僕を見て楽しそうに……あ。その瞬間、僕の記憶でグンセオのある言葉を思い出した。
『魔王様と結ばれるためにお前を殺したい……!』
……まさかね?まさか、指導という名目で僕を殺そうなんて……ねぇ?僕はグンセオの顔を見た。……やはりすごく嬉々とした顔で剣を振るってる。恐らく、あの時の魔王様の料理を押し付けたのまだ根に持って……?
「オラオラオラ!!どうした!!これでは、あの時の恨みが晴らせぬわ!!」
「指導を恨み晴らしに使うな!!」
「ガハッ!!」
僕はグンセオの剣を思いっきり弾き、その勢いでグンセオの顎を剣の峰で打った。
「たくっ……真面目に教えてくれよ……」
剣で打たれ、悶絶しているグンセオに、ため息混じりでそういった。でも、グンセオが悶絶しているの、少し面白いな……などと下衆な事を考えていた。
「…………」
だからだろうか?魔王城の窓から覗いている人影に僕は気づかなかった。その人影は、カーテンの影に隠れ、僕に気づかれないようにこちらを覗いている。そして、一通り覗いたら、廊下をタタタッと走り、自分の部屋へと消えていった……。




