10話 魔王様(女)が移動方法を考えたらしいですよ?
小鳥のさえずり、さわやかな朝日が僕の瞼を刺激をして、僕の意識をゆっくりと覚醒させてくれるーー
「菜糸君菜糸君!!朗報ですよ朗報!!」
「なっ、なに!?」
はずがなかった。異様に興奮している魔王様に叩き起こされ、変に驚いてしまった。何で魔王様こんなに興奮しているんだ……?てか、そういえば魔界に小鳥も朝日もないんだった……。
「ところで、朗報って何ですか?」
「はい!ついに黒幕の住処を見つけたんです!!」
「……!!本当ですか!?ってうわっ!?」
「菜糸君!?」
僕はその報告に飛び起きた。あまりに勢いよく起きてしまい、ベットから転げ落ちてしまった……情けない……。
僕は尻餅をついてしまった尻をさすりながら起き上がった。地味に痛い……。でも、そんな事気にならなくなるくらい僕は嬉しさがこみ上げていた。
(これで、こっちに来てしまった人達が助かる……!)
「で、場所は!?」
「えっと、死国山の麓あたりらしいです」
またなんか物騒な名前の場所だな……。魔王様によると、昔栄えていた国がいきなり壊滅されてしまい、その場所にはその時殺された死体がその山に埋まっているらしい。なるほど……だから死国山か……。
「とりあえず、そこに行ってみましょう!……あっ」
「……?どうかされました?」
「僕、そこに行く手段がありませんでした……」
「あっ……」
どちらも肝心な事を忘れていた……。それに、僕が行っても何の役にも立たないだろ……。
ここはおとなしく留守番していた方が……
「留守番という手もありますが……私、自我がない魔物も部下にいるので襲われてしまうかもしれません……」
「初耳なんですけど!?」
なにそれめっちゃ怖い!!よく僕今まで出会わなかったな……命拾いした……。
「できれば連れて行きたいんですけど……」
「僕からもお願いします……」
自衛の手段がない僕が残されたら、一晩中震えて過ごすことが目に見えている……。やばい想像したらマジでカッコ悪い自分が見えた……。
魔王様がう〜ん……と悩んでいる。僕は、本当に行く手段がない時のために自衛手段を考えていた。う〜ん……フライパン持っていれば大丈夫かな?……自分の考えのアホさに呆れた。
「成功させるのが難しくて、上手く出来るか分からないのですけど、一つだけ方法があります」
「その方法とは?」
「魔力移動です」
「魔力移動……?」
話によると、魔力移動とは自分の中に魔力を巡らせて、その魔力反応により出来る歪みに入り込んで移動するという内容だ。ちなみに、歪みの出口は、本人が頭に浮かべた名前の場所に移動するらしい。……なんかすごい。
「しかしこれは、他人に自分の魔力を流すので魔力の波動が合わない人には拒絶反応が出てしまうんです。それに、出口を思い浮かべる時に、二人で合わせないと違う次元に飛ばされてしまったり、見知らぬ場所に出てしまいます」
なるほど……二人の相性や信頼関係がなければ成功出来ないという事か……。聞く限りだと危険に思える。魔王様もそれが分かっているのか緊張した面持ちだ。魔王様でもこんな顔をするくらい危険か……。でも……
「魔王様となら大丈夫ですよ!」
僕はそんな不安は一切なかった。だから僕は言い切れた。何故だかは分からない。でも、自然と魔王様とならなんでも出来る……そんな風に思えるんだ。
「本当に大丈夫ですか……?」
「僕は大丈夫だよ」
僕の返答に意を決したのか、魔王様は僕の肩に手を置いた。その時、魔王様の手が小刻みに震えているのが分かった。仕方のない事かも知れない……。もし、僕が魔王様と同じ立場なら怖いと思うかも知れない。そんな彼女を見てると、魔王と呼ばれてもやっぱり普通の女の子なんだな……と思った。だから僕は……
「……な、菜糸くん……!?」
そっと手を握った。
「大丈夫だから……ね?」
「っ……!」
魔王様は、僕の意を汲み取ったのかコクっと頷いた。もう魔王様の手は震えてはいなかった。代わりに、覚悟を決めた目をしていた。
「では……行きます!」
「うんっ……!!」
その瞬間、魔王様の体が一瞬にして光輝いた。その色は、全てを飲み込んでしまいそうな真っ赤な赤色だった。魔王様の髪の毛は逆立ち、周りの家具なども、波動などでガタガタと揺れている。次第に魔王様を中心に風も起こり始め、カーテンがバサバサッと荒ぶっている。
「菜糸君!今から菜糸君に魔力送り込みますね……!」
「わ、わかった……!」
魔王様からの光がより一層強くなったと思ったら、さっき手を置いた肩から何か流れ込んでくるのが分かった。
「っ……!?」
力がどんどん溢れてくる。その力は一瞬にして身体中を駆け巡り、僕の体までもが光り出した。何とも不思議な感覚だ。
「出口を思い浮かべてください!!」
「分かった……!」
僕が死国山を思い浮かべた瞬間、バチッ!バチッ!と電気がぶつかり合うような音が聞こえ出した。すると、目の前の空間が徐々に歪み始め、大きな穴が現れた。
「その穴に飛び込んで!」
魔王様の言う通りに穴に飛び込んだ。上を見上げると、魔王様も穴の中に飛び込んでくるのが見えた。穴に落ちると、一直線に落ちるのではなく、グルグルと円を描きながら落ちている感覚になった。
ーーそして、僕たちは穴の出口から抜け出したーー




