怪奇短編「びっくりばあちゃん」
私が幼稚園の時のはなし。
当時近所に住んでいたおばあちゃんがまだ元気だったので、これまた近所の幼稚園まで歩いてお迎えに来てくれる事がありました。
おばあちゃんの家と幼稚園と私の家は全て園児の足でも充分歩いて帰る事が出来ました。
幼稚園の授業が終わってみんなで遊んでいると、時折
「おーい和哉」
とおばあちゃんが呼ぶ時があって。
私はおばあちゃんが大好きだったので、そのサプライズはとても嬉しかったです。
そのまま帰り道にあったダイエーの地下で抹茶アイスを食べたり、ミスタードーナツに寄ったりして。
年長組さんの頃でした。
お迎え待ちでテラスに座っていたシンペイ君を私と間違えて
「おーい和哉」
と声をかけたおばあちゃん。私も、シンペイ君も、みんなも笑っていました。
シンペイ君はその時から私のおばあちゃんを「びっくりばあちゃん」と呼び、その後すぐ、私のおばあちゃんにはびっくりばあちゃんという愛称が付きました。
姿を見た友達が
「和哉、びっくりばあちゃんが来たよ!」
といった感じで教えてくれたものです。
ある日、仲良しのノブオ君が
「和哉、びっくりばあちゃんが来たよ!」
と教えてくれました。私は勇んで園庭を探しましたが姿がありません。その日は間もなくいつものように母が迎えに来ました。
それからも時折、ヒデシ君やマサヨシ君が
「和哉、びっくりばあちゃん来たよ!」
と言ってくれるのですが、いつも何処にも姿はありません。
お迎えに来てた他の人を見て間違えたか、単に私をからかっているのかなと思っていました。
が、全てはシンペイ君の一言で変わってしまいました。
「和哉、知らないお婆ちゃんが探してるよ!」
シンペイ君は私のびっくりばあちゃんに会っているので、顔を知っていたのです。
しかし、その時シンペイ君の元にやってきたのは、もっと身なりの汚くて白髪ぼうぼう、よぼよぼの魔法使いの様なおばあさんで
「和哉を知らないかい?」
と聞いて回っていたそうです。
私自身は、卒園までついにその知らないおばあさんを見る事はありませんでした。
もし、そのおばあさんが私を見つけていたらと思うと、今でもぞっとします。