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怪奇短編「旧トンネル」

暑いんで佐野さんが怪談話をしてみるという書き込み。

私の地元豊橋には心霊スポットのトンネルがあって。本坂トンネルと言います。たまに、日本の心霊スポットみたいなのにも名前が出ます。あそこでの話。高校3年の頃、草野球チームに入っていたときのこと。


チームメイトは豊橋でも不良の多い中学出身者が多く、結構ヤンチャしているようだった。

不良特有の緩いけどアツいチームだった。

ある夏の夜、チームの発起人でもあるコウヅマ君の家でBBQをしていた。そして本坂トンネルの話になった。単純に本坂トンネルと言うと新トンネルを指す。


心霊スポットは旧トンネルの方だ。

新トンネルの手前から峠道をエッチラオッチラ登っていくと、ぽっかりと古いトンネルがあって、そこが旧トンネル。

春でも秋でも真冬でも朝でも夜でも真昼でも、

此処を通るとロクな事がないと言う。

私もチームのみんなも噂は聞いていた。ので、興味津々。


メンバーのうちコバヤシ君が免許を持っていたので、彼の軽自動車にコウヅマくん、スズキくん、そして私が乗りこんで出発した。

時刻は夜22時。

コウヅマくん家から本坂までは割と近かった。

峠道となると、男子高校生4人(私が特に重い)を乗せた中古の軽自動車は悲鳴のような音を立てて登った。

トンネルの前まで来ると、街灯もなく真っ暗闇の空間にぽかりと更なる暗闇が口を開けていた。

コバヤシくんが悪戯にヘッドライトをフッと消す。

一瞬で何も見えなくなり、スズキくんが悲鳴を上げる。

あはは、

と再びライトを点ける。

 

すると車の目の前に、白髪のおばあさんが立っていてこっちをじっと見ていた。 

全員言葉を失っていた。リーダー格のコウヅマくんが 

「やべえ!」 

と我に返って叫んだ。引き返そうにも道が狭くて切り返せない。 

前に進むにはバアさんが居る。どうしよう! 

パニックになったコバヤシくんを宥めすかすコウヅマくん。 

スズキくんは私にしがみついて泣いてて離れない。 

 

私は兎に角怖かったので、もう一度ライトを消した。 

馬鹿!と怒るコウヅマくん。 

テンパってライトを点けるコバヤシくん。 

  

すると、老婆は消えていた。 

それから暫く沈黙が続いた。切り返すほどの道幅は無い。そして目の前には、心霊トンネルが口を開けて待っている。どうしよう。行くも地獄帰るも地獄。 

 

結局、そろーーりそろーーりとトンネルを走り抜けた。 

みんな途中までは黙ってたけど、あんまり怖いので大声で歌を歌った。 

全員のでたらめな歌声が窓を閉め切った車内に共鳴して耳がキンキンする。 

そうして漸くトンネルを出ようと言うとき、 

私の耳元で

 

「…帰るのかい?」

 

と、しわがれた声がした。 

 

他のみんなは無我夢中で歌っている。 

私だけが聞こえたんだろうか?でも、それは今日までずっと言ってない。 

コウヅマくんとコバヤシくんは後に仲たがいしてしまい、もうチームは残ってない。でも、あの時にステレオ的な青春ごっこが出来たのは、今でもいい思い出だ。  

「旧トンネル」おしまい。 

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