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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
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第八話 封印された妖精

何の音だろう?

序章


第八話 封印妖精


『gvullon!!!!』


なんだ、ヒトカゲもよく見ると人懐こくて可愛いじゃ無いか。ヤモリみたいだし(サイズは桁外れだけど)。目もクリクリッとして愛敬がある。


すると[妖精王のタクト]の影響なんだろうが天井から机の上に降りて擦り寄って来るじゃないか! どれどれ、スキンシップでもーーとそっとその頭に手を伸ばすと『あっ!』ライノが声を上げたので思わず「なんだ?」と振り向いた隙にヒトカゲがペロッと舐めて来た〈ジュッ〉「ジュ?……ほあちゃちゃちゃぢや! あっちいいーー!」


『あーあ、仮にも火の眷属の妖精なんですからね、迂闊に触ったら火傷しますよ』「さ、先に言わんかい!」『あっ! て言ったのに』「分かるか!そんなもん! 俺は異世界初心者なんだよ!」


また半年ほど封印してやろうかと思ったが『ごめんなさいごめんなさい! それだけは勘弁してくださーい! もうやだあああ!』と泣き喚くので今日は勘弁してやった。


『gonnuvuu?』


いやいやヒトカゲくん、君は大人しくしておいてね、この家が燃えたら異世界転生直後に住所不定無職になりかねないからね


『ニンゲンは大変ですねえ〜』


〈シュポンッ!〉『!!!!!な、なんなでそんな簡単に壺を使いこなすんですかあああ! 吸い込まないでええええ!』


ライノにはもう一度壺の中で反省して貰うとしよう。そうだな、こんどは五年位頑張って貰おうか。


壺の中でライノが喚いているが取り敢えずほっておこう。このまま川にでも流してやろうかと


『gonnurqruo?』


はい、ヒトカゲくんはそのまま大人しくしててね。しかしよく火事にならなかったものだ。半年間もこのままだったんだろ? やはり魔女らしく何らかの魔法が使われているのだろうか?


とはいえまだ探索が終わった訳では無い。俺はこの部屋を後にして上に戻る事にした。ヒトカゲくんはそのままでよろしく。離れようとすると名残おしそうにこちらを見てくる。うむ、これでもうちょっと火力が低ければ良いのに。


さて、それでは上に上がろうかと机の上に散乱したアイテムを横にあったバッグに詰め込み、地下室を後にしようとした時、チラッと視線の端に立て掛けられた大きな鏡の様な物に気が付いた。それは角にそっと置かれていた。雑然と色んな物が置かれているので気がつかなかったがかなりの大きさだ。スッポリと布がかけられていて全く目立っていない。


そっと布をめくってみてもーー「……普通の鏡だな」特におかしな事はなかった。しかしこんな地下室に全身を映せる鏡とは。まあ、魔女だしな


俺はここで考えてもラチがあかないと判断して上に戻る事にした。


『gguvurru!!!』


めっちゃ名残おしそうだがここは身の安全を優先したい。俺は墜落して来た階段を今度は正規の手順で上に戻る事にした。よく見ると落ちたのは三メルほどだった。落ちた先にヒトカゲがいたらきっと真っ黒コゲだったに違い無い。水ガエルに火トカゲか。何気にこの家は危険な香りがプンプンする。


そっと一階に戻り、俺はまた蓋を元に戻す事にする。うっかりヒトカゲが外に出たら危険極まらないからな。番犬代わりには最適っぽいがそれは問題が余りにも多いだろう。


俺は蓋を掴み〈ゴトンッ!〉と元に戻した。


トンッ…トントンッ


『マスター! ひ、酷いですよお! はやくう! 早くだひてくらさーい! もうやだああ!』

「ん? 今何か音がしなかったか?」

『はやくはやくはやくはわくううう! 鬼〜! 鬼畜〜! わーんもうやだよおお!』

「分かった分かった! 外に出たら出してやるよ!」


そう言って俺は魔女の書斎を後にした。


トン…トントン……トン…トントン


その時地下室から聞こえて来る音には全く気が付いていなかった。ライノが喚く声が大きすぎて聞き取れなかったのだ。


『マスター! 早く早く〜!』


「ああもう、分かったよ」


俺は最初の部屋に戻る事にした。




〈シュポンッ〉

『やたああああっ! ふっかーつ!』


てか、本当にテンションの高い奴だな。てか、コイツは妖精だったのか。


よく見るとコイツは羽根が生えており、ビュンビュン飛び回っている。ちなみに今のところ飛べる奴はコイツだけだった。あとちゃんも喋れる奴もだ。


「おい、ライノだったかな? お前は何の妖精なんだ? 飛べる所を見ると、風の妖精か何かなのか?」


嬉しそうに俺の周りを飛び回りながらライノは自信満々で応える。


「ボクは正統なる風の妖精です! 精霊よりも人に近い存在なんですよ! 」


その割には忌み嫌われて封印されていたんだが……一応契約してはあるから大丈夫なんだろうが。……大丈夫なんだろ?


『でも斎藤さんが[妖精使い]だとは知りませんでした! いきなり壺や妖精王のタクトを使いこなすなんて、凄い才能ですね!』

「えっ! そうなの? 俺って天才なの?」

『……えっ! 違うんですか! 』


「てか、俺って今日(正確には四時間ほど前に)この世界に召喚されたんだよね」


『……えっ! ま、マジですか! だってあの地下室は妖精魔法で隠蔽されてたんですよ! どうやって入ったんですか?』


「どうって……普通に開けて?」


『ええええっ! 魔女の隠蔽も封印も何にも考えずに突破したんですか!』


『naninah? oyonda?』


頭の上に住み着いている黒い奴も気になる様でなんか喚いている。てか、お前さっきなんの役にも立たなかったな。


『わぁっ! しかもこんな雑多な妖精に懐かれてるし、妖精って嫌われたら出て来なくなっちゃうんですよ? どうやって仲良くなったんですか!』


そんなこと言われても思い当たる事なんてーーあったわ! ありました!


「そういやさっき、こいつらが煩く引っ張るから祠の水を替えてやったんだよ。そうしたら…」

『……そうしたら?』

「なんか神の啓示を受けたっぽいね」

『ええええええええっ! この土地の神様の祝福を受けたなんて、それって土地神様の代行みたいなもんなんですよ!』


「へええええっ」


『!!!!!』


愕然とするライノだが素人な俺にはサッパリだ。


「つまりどうなるの?」


『マスターはこの土地の影響の及ぶ範囲にいる限り、祝福と恩恵を受け続ける事が出来ます! つまり、勇者ほどじゃ無いけど、プチ守護神ぽい感じです』


「??? もっと分からんわ!」


その時また扉が開いた。そこには村長とサラさんが残念な事にキチンと着替えて立っていた。


「おう! 斎藤くん、用事を忘れてたよーーて、ぬおおおおおおっ!」


突然疑惑のリア充村長が雄叫びを上げた。


「きゃあああああっ! あんたの家はなんで魔王城並みに危険な魔物が現れるのよおおおお!」


うん、美人はどんな顔でも美人だな。青筋が少し怖いけど。


「どけっ! 斎藤! ライノを再びこの世に解き放つ訳にはいかん! ここでもう一度封印する!」


そう言って水ガエルに負けた村長が大剣を構えた! 噴き上がる闘気が家を土台から揺らす!


「覚悟なさい! こんどは永遠の闇に封印してやるわ!」


そう言って水ガエルのヌルヌルプレイに陥落したサラさんが炎の魔力を杖に込める! 気のせいか杖が若干俺の方を向いている気がするのは気のせいか?


「……ライノ…お前何をやらかしたんだ……」


そう言うとライノはテヘッも笑い


『ちょっとこの街に駐屯していた騎士団を壊滅させちゃいました!』


ニコッと微笑むライノ


そうか……ライノなヤッパリ悪い子だったのか


でも


もうライノは俺の仲間でありこの世界での最初の眷属だ! そして俺にはこの土地の加護と祝福が満ち溢れているはずだ!


「かばいだてするならお前も切る事になるぞ」

そう言って村長は背よりも長い大剣を俺に向けて来る。


「かばいだてしなくてもあんたは許さないわ!」


そう言ってサラさんはさらに炎の魔力を強める。サラさん、それは冤罪ですよ


そしてライノがウルウルとした瞳で俺を見つめて来る。


バカだなあ、ライノ、心配するな


「ライノ、俺は君の事は決して忘れないよ♡」

『!!!!!』

「どうぞ! ご随意に!」


「うおおおおっ! 覚悟しろライノ! あの恨み今日こそ晴らしてやる!」

「斎藤! お前も同罪よ! 死になさい!」


サラさん、ベクトルがズレてます


『マスターの悪魔! 鬼畜! 卑怯者!』

「うん♡ そう!」

『!!!!!』


異世界の冒険は中々に大変だ。


あ!


ライノは俺の眷属なんだよな。


て事は俺も同罪なのか?


……黙っとこうかな





その時


トントン…トントン…


地下室からまた音が聞こえていたのだが……当然誰も気がつかなかったのは言うまでも無い。

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