第七話 秘密の地下室の秘密
はっ! またしてもバトルの予感!
序章
第七話 秘密の地下室の秘密
☆
ずぶ濡れになったサラさんと村長はくれぐれもカエルの機嫌を損ねない様に気を付けろと言って帰って行った。
この村では最強のカエル様なんだが別に飼ってる訳でも無いんだからな
「どうしよう」
しかもトマト食べるしな。まあ、ハエとかを餌にされると厄介だからベジタリアンなのは助かった。まあ、飼ってる訳では無いんだけど。
てか毎朝水を汲む時に会うのか。うっかり桶を頭の上に落とさ無い様にしないとな。命に関わるからな……さすが異世界だ。
そして俺は次なる探索に入る事にする。庭は後だ。またとんでもないのが出たら大変だ。それに妙に好かれてるし。〈ペシペシ〉と頭の上で黒い奴が合図を送ってくる。こいつまだ居座るつもりなのか
気を取り直し俺は家の中に向かった。
チラリと見ると畑には色とりどりよポョンポョンした奴らがウロウロしていた。そして何匹かがジッと俺を見ている。
『yoo!iiivenkii』『atuuu』【nanaooo!』
……何を言っているのか分からないが取り敢えずフレンドリーなのは間違いない様だ。よく見ると色だけではなく形も違うのがわかる。後で誰かに聞いてみたい所だ。
♢
気を取り直し俺はまた扉を開けて最初の部屋に戻った。
「倉庫は取り敢えず置いといて、やっぱり奥だな」
縁側のある反対側には板間の部屋の脇を通り土間が抜けている。よく、京都の町家にみかける構造だが、恐らくこれは農家としての機能の一つだろう。荷物や収穫物を一時的に保管する役目でも有るのだろうか? 広めの土間になっている。コレは古い日本の家屋には無かったと思う。
俺はそっとその通り土間を抜けて、さらに奥へ向かった。ちょうど最初の部屋の反対側、板間を挟んでほぼ同じ広さのこちら側は荷物スペースの様だった。三部屋あり、うち二つは倉庫になっている。そのうちの一つは書斎の様だった。本棚がある。大きな机には所狭しと色んな物が置いて有るが……
「限りなく危険なかおりがする」
野生の本能が一人では決して手を出すなと俺に告げて来る。有名な魔女の書斎ーー危険な香りがする。[惚れ薬]とか[魔女の媚薬]とか是非欲しい……いやいや、まてよ、それがあればサラさんの折れたフラグも……と、苦悩しているとふと視線の端に床の不自然な切れ込みが目に入った。
「……これは…開くのか?」
それは重いのかと思ったら軽い石の様だった。〈ゴトン〉と外すとーーそこには階段があった。
「これは…秘密の……階段? …いや、秘密の……地下室だ」
行方不明になった魔女の館の秘密の地下室か……きっと凄いお宝があるのでは……俺はそっと階段を…
「いかんいかん! これこそ何が出てくるのか分かったもんじゃ無い! この危険なミッションは疑惑のリア充村長にやらせねば!」
俺は階段を下りようとおろした足を階段の木の板で押し留め、戻ろうとしたその時〈メキッ〉板が歪んだ。
「えっ!」
一瞬「不味いっ」と身体を翻そうとしたその時ーー〈バギンッ〉床を踏み抜いた
「!!!!!」
あっと思う間も無かった。
〈ベキバギンドタンバタンカダンドダッ!〉
俺は見事に暗闇の中に転がり落ちて行った。「あーれー」と言おうかと思ったが下を噛みそうになったので止めて置いた。
そして〈ドズンッ〉と最後に何かに激突しーー俺は意識を無くしていった。
(……ま、まじ? ……)
こんな事ならもっとサラさんの濡れ場を……いやいや、こんな異世界転生のラストは勘弁だ…ぜ……
バタン…Q
♦︎♢♦︎♢♦︎
「……ん……」
どの位時間が経ったのだろうか
俺は仰向けに倒れていた。
手は動く
足は動く
首は…変な方向には曲がっては無いな。脇腹や背中は少し痛いが、動け無いほどじゃ無い。どうやら死んではいない様だ。
頭の上で黒い奴がウロウロしている。もしかして助けてくれたのか?
「……まさかな」
身体を動かすと〈ポッ〉と灯りがついた。「まだ稼働してるのか?」魔女が居なくなってかなりの期間がたっている筈なのだが、その灯りが暗い地下室を緩やかに照らす。十二畳ほどの広さがあり、机が幾つも並んでいる。壁には幾つもの棚があり、本や道具が所狭しと並んでいた。
「……魔女の…実験室?」
よく見ると部屋の中央には床に魔法円が描かれていた。これも緩やかに明滅している。何かを持続して発しているようだが……とても想像がつかない。
そして壁には幾つもの大きな釜のような物が並んでいる。中は見えないが、何かが入っているようだ。ただ、匂いは漏れて来ている。一つは「味噌なのか?」一つは「醤油?」そして一つは「……日本酒?」
そして〈コポン…コポン…〉と泡立つ様な音がしている。
「……発酵…してるのか?」
そして、一番奥の壁にある棚には、フラスコが所狭しと並べられている。何かがユラユラと蠢いている様に見えるのだが…分からない。
「何か入ってるみたいだけど? なんだ?」
しかし匂いはしない。
もと来た方を振り返ると、大きな机の上に、本と道具が置いてあった。俺はゆっくりと近ずいていく。
机の上には本が一冊、変な棒の様な物、皮の袋に入った壺の様なもの、そして二又になったーーこれは…音叉?の様なものが置いてある。そしてメガネが一つ
「……字が読める」
見た事が無い文字で書かれいるが、俺にはその意味が分かる。それは頭の中に染み込む様に伝わって来た。
その本の名は【幻想図鑑】と書いてある。
「【幻想図鑑】か……」
何だろう? 異世界でなお幻想とはどんな奴等なのか? 図鑑と言う事はこれで何か調べるのだろうか
それを机に戻し、[棒の様な物]を手に取る。どうやらこれは象牙か何かでできている様だ。金属や石や木とは違う手触りだ。ツルツルとしながら手に吸い付く様だった。
それをまた机に戻し、[音叉の様な物]を手に取る。普通の音叉と違って二又になった部分がU字では無く半円に近い。長さもーーなんだか虫取り網の様だ。何に雨使うんだろう? 魔女の考える事は分からないな
それもまた机に戻し、今度は[皮の袋に入った壺の様な物]を手に取った。よく触って見ると水筒の様な形状で、腰に付けやすい様に紐がベルトの様になっている。でも何かを入れるのには蓋が余りにも小さく見える。
「まあ、魔女だからな」
分からない事は魔女の所為にしておこう。
〈ペシ〉ん? なんだ? 〈ペシペシ〉え、のんだよ! 頭の上に住み着いている黒い奴が俺を叩いて来る。
『ucciruo! ucirooo!,!』
《ボウッ》
「あ、あちいっ!」突然後ろから熱風が来た。慌てて振り返ると「な、なんだよ!」そこには「!!!!!」そこにはーー真っ赤なヤモリが天井からこちらをジッと見ていた。普通のヤモリと違うのはーー大きさが桁違いなのとーー炎を纏っている事だった。
「うおおおおっ! さ、さらまんだ! ひとがげだあああっ!」
俺は慌てて机の向こう側に飛び超えた。みずガエルの次は火トカゲなんてあり得ない! いや、これが異世界なのか! 頭の上で黒い奴がガタガタ震えている。うん、これは本格的にまずいんだな! お仲間じゃ無い様だ。どうしよう? 黒い奴が狙いなら差し出して逃げるところだが、どうやらーーこれは魔女の番犬の様だ。一撃で炎を放たなかったのは、あくまでも牽制が目的なのじゃ無いだろうか? 燃やしてしまったら後で困るからな。しかしどうやって逃げればいいんだ! 階段は……ダメだ! その火トカゲの向こう側だ。さすがに真下を無事に潜り抜けられる気がしない。
その時ーー小さな声がした。
それは子供の様な声だった。
『ねえ! ねえ! 誰かいるんでしょ! 開けて開けて! もうイタズラしないから開けてえ!』
「何だ? 何処から?」
それはーー机の上にある[皮の袋に入った壺の様な物]の中からしていた。
『お願い! もう半年もこの壺の中にいるん!です! もうイタズラしないから許して! 許してくれたら貴方の使い魔でも何でもなるから! 契約も結ぶからお願いいい!』
どうやらコイツもかなり切羽詰まってるな。俺もだけど
『ボクならその火トカゲを退ける方法を教えられるんだよ! ね!お願い!』
「よ、よし、どうやったら契約出来るんだ! それ次第で考えてやろう」
『やったあ! あのねあのね、名前を教えて! この壺は特別だから、悪い妖精を捕まえて凝らしめてから契約出来るんだよ! だから皮の袋から出して魔法円に手を当てて、貴方が私の名前をよんで契約を命じて、私が名前を言って貴方に応じたら契約出来るんだよ!』
「なんだ悪い妖精なのか? なら止めておこうかな」
『やぁあああああんっ! もうしません! もう反省したから許してえ! このまま閉じ込められっぱなしは勘弁してえ!」
「しかし悪い妖精が反省したなんて《ボフオッ!》うおおっあ、あちいっ!」
火トカゲが流石にジレてきたのか火を放って来た。ま、まずい!
「わ、わかった! お前なら火トカゲを止められるんだな!」
『うん! まかせて! ちゃんとやり方を教えるから! 戦っちゃダメだよ! その火トカゲは凄く強いんだから!』
よかった反撃しなくて
俺は慌てて壺を机の上から掴んで皮の袋から出した。
「俺の名は斎藤だ! お前は!」『ボクの名はライノ! さあ契約して!』「よ、よし! じゃあいくぞ!」
その時火トカゲがまた火を放った!
「あ、あちゃちゃちゃ!」
く、くそ! 村長がいれば身代わりにしてやるのに!
「い、いくぞ!よし!斎藤は命ずる! ライノは俺と契約を結び俺に従う事を誓え!」『は、はい! ライノは斎藤の命に応じ、従魔妖精の契約をここに結びます!』「あ、妖精だったんだ」
その時〈パキンッ〉と何かが砕ける様な音が響いた。一瞬火トカゲがビクッと怯んだその時ーー光が壺から放たれた。
「え? な、何?」
そして
『にゃはははははははっ! 出られたー!』
一匹の妖精(自己申告だが)壺の中から飛び出して来た!
『やったあ! 自由だー! ありがとお! マスター!』
「ええから早く火トカゲをなんとかせんかい!」
『それは簡単! ほら、あの机の上にる[妖精王のタクト]を使えば従えられるんだよ!』
「よし、ならお前が囮になれ!」
『え? ええっ!』
俺はライノをむんずとつかみ、火トカゲに投げつけた。ライノ、短い付き合いだが君の事は忘れないよ♡
『ひぃいいい! ひどいよマスター!』
その隙をついて俺は机に飛びつき、その棒を手に取った。そしてその[妖精王のタクト]をふりかざし火トカゲに命じた!
「火トカゲよ! 我が命に従え!」
『shvurr?』
ピタッと止まった火トカゲ!
よかった……九死に一生を得た。
最近多い気がし無いでもないが。
『ひ、ひどいですよおお』
ライノは少し焦げた様だがな
異世界で遭遇した不思議な生き物
001
[?????]
フヨフヨした球根の様な生き物
色は複数ある様だ。
不可思議な言葉を話すが意味不明
002
[?????]
井戸の底に住むカエルの形をした水妖
どうやら水の妖精の眷属
かなり高位の個体らしい。
何気にこの村で最強だと噂されている。
003
[?????]
ライノと名乗る妖精
壺の中に封じ込められていた。
どうやら前科者のようだ。
ちゃんと喋る初めての個体
004
[?????]
火トカゲらしい
どうやら強いらしい
[妖精王のタクト]でなんとか従える事が出来た。
ライノを焦げ焦げにしたが気にする必要は無いだろう