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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
28/66

第二十八話 フキの下拵え

フキが続く!( ̄◇ ̄;)!


しばらくは農村で格闘しながら村のあり方を少しづつ学びながら異世界で自分がどうやって生きていくかを学び取って行く予定です!


うわ!地味だ!


暇な時にチラチラと読んでくれたら幸いです!

第二十八話 フキの下拵え



オオナナフシモドキを倒し、フキを三千本近く狩る事に成功した俺達はオチボの森を抜けて、途中食事休憩を挟みながらノルン村に辿り着いたのはもうかなり暗くなってからの事だった。


「……や、やっと着いた」


単純な山道こそが異世界転生者にとってのもっとも危険な強敵だとフラフラになった俺は確信していた。それでも村長は鼻歌混じりでピクニック気分で俺の倍以上のフキを担いでいる。


(この脳筋野郎め!)


しかし悪態を吐く力すら惜しかった。ノルン村で待っているのが佐倉さんでなければフキの半分は森の肥やしになっていたかもしれない。生意気にも三人の嫁を持ちその生活を支えている村長が少しだけ輝いて見えた。その足取りの軽さは人のそれでは無い。


そしてそこからさらに足を引きずりながやっと我が家に辿り着いた時

「斎藤さ〜ん! お疲れさまで〜す」

遠くから佐倉さんの声がした。手を振りながらこっちに走って来るのをジッと見ていると、その手に幾つもの絆創膏のような物が貼り付けてある。

「佐倉も奮闘してたようだな」

「……あれは?」

「今日は俺の三番目の嫁が生産職の手ほどきをするとかいってたからな。まあ練習がてら色々やってたんだろうよ」

走り寄って来た佐倉さんは興奮気味に俺の背負っているフキをしげしげと見ている。

「凄いです! 大量ですね!」

「佐倉さんも大変だったんじゃないですか?」

「……てへへ、あんまり物作りの才能はないかもですね…」

少し力無く笑った。この山菜狩りの難易度から察するに、この異世界での労働とはかなり大変な才能を必要とする気がする。佐倉さんは女子大生だと言ってたから恐らく専門職の知識はそれほと多くは無いだろう。しかし出来ないでは済まされないのがこの世界だ。


佐倉さんとあと僅かばかりの家への道を歩きながら美しい田園を吹く夜の風を受けていると、その厳しさに耐えた人だけがこのノルン村に住んでいるのだと気がつくと、少しだけ胸が熱くなり、少しだけ佐倉さんが心配になってしまった。それでも佐倉さんの手の傷は間違いなく奮闘の証しでもある。


佐倉さんは今日自分がやった仕事の話はしなかった。村長も聞こうとはしない。俺は佐倉さんにせがまれ山菜狩りのバトルを少ししてあげたが、オークがいた事は黙っておく事にした。


「斎藤、これからお前の家で下処理から仕込みをやるからな。ブルケはそんな加工が得意でな、道具も大量に揃えてたんだよ。だからこれからも加工はお前の家でやるからな」

「……は、はい?」


家の門をくぐると、灯がともり、なんだか人の声がして、二人ほどが何やら準備をしているようだった。


「帰ったぞ! 今日は三千本だったよ」

「おかえり〜! へぇ、斎藤は初めてなのに頑張ったんだね!」

若い金髪の女性はガラス瓶を大量に煮沸しているようだった。ポニーテールで後ろに結わえた髪がポヨンポヨンと揺れている。

「どれどれ……うん、ちゃんと手で狩ってあるね。始めのころはガンズも下手くそでねえ、よく怒鳴られたもんさ」

偉く態度の大きいおばさんは三十年ほど若ければ道行く人が振り返るほどの美人だったかも知れない。あと50%ほど減量は必要だろうが。

「え、エルザばぁさん、それはもう十年近く前の事だろう、もうそんな事はしねぇよ!」

村長にも頭の上がらない人がいるのか。憶えておこう。つまり昔は無理矢理村長も山菜狩りをしてたんだな。さすが厳しいな田園生活は。てか本当に神の加護を受けているかどうかは確かめて見ないと分からないがな。


「斎藤、エルザばぁさんに礼を言っとけよ、この家と佐倉の家を管理していたのはこのばぁさんなんだからな」

「そ、そうなんですか! それはどうもすいません! 綺麗にしてもらってて助かりました!」

「なに、この家は加工にも使うからね、ついでだよついで! 気にするこたあ無いからね! さあ、フキの下処理をやっちまうよ! いいかい、ノルン村のフキは質が高いので有名なんだ! 手は抜かせ無いからね!」

「き、厳しいんですね」

「そりゃそうさ、特別な効力を持った食べ物なんて滅多に無いんだよ、手は抜け無いだろ? 値段も値段なんだからね」

そう言ってエルザさんはニヤリと笑った。もしかしてこの人は遣り手なのかもしれないな。逆らうまい。俺の本能がそう告げている。引き気味の佐倉さんも直感的にそれを悟っているようだった。


「さあ始めるよ!」


エルザさんがテキパキと指示を出していく。話によれば、用はフキを軽く茹でてアクを抜き、サッと皮を剥いて出汁に漬けて保存が効く様にして馬車でやってくる業者に渡すらしい。


「アリア、お湯を沸かしな!」

「はーい! 斎藤、佐倉、寸胴に水を入れて火を点けるよ!」

振り返ると村長が巨大な円筒形の鍋を二つ釜戸に乗せた。どう見ても一人が運べる重さには見えないのだが。

みんなで水を井戸から汲み上げようと覗き込むと水ガエルがまだ起きていた。

『kull?』

まてよ

俺はタクトを振るう。

「水ガエル♪〜少し水を持って来い〜♪」

我が眷属でありこの家の護りでもある水ガエルは快く水塊を供出してくれた。

「!!! あんた本当に妖精使いだったんだね…」

「さすが斎藤さんです!」

「水ガエルは立場的に俺より上っぽいですからね〜ダメモトで頼んでみて良かったです!」

肩に水ガエルを乗せフヨンフヨンと巨大な水塊を運んでいるとピョンと頭の上に飛び乗って来た。

『きっと居心地が良いんですね〜妖精使いって結局なんだか気持ちのいいオーラが出てるんですよね〜☆』

ライノも逃げ出さず俺の周りをフワフワしているのはそのせいだと言う。土地神の出す加護である[アロマ]と似た様なもんなんだろうか? 俺は別に気持ち良くは無いがな。

そっと家の扉を潜りポチョンと寸胴に水を注ぎ込み、脇に置いてある瓶に残りを入れてた。井戸に戻そうかと思ったがなんだかしがみ付いているのでそのまま乗せておく事にする。

『なんだかいつかれちゃいましたね〜まあそのうち飽きると思いますけどね〜☆』

水ガエルを見て少し村長が引き気味なのは気の所為では無いだろう。これから交渉事がある時は頭に乗せておこうと心に誓うのだった。


すると今度は村長の二番目の嫁がやって来た。

「は〜い! 晩御飯だよ〜! おおっ、大量だったんだね、斎藤やるじゃない!」

「ケイト! はらぺこだよ! 早く飯にしてくれ!」

「もう! がっつか無いでよ! 斎藤、お昼はちゃんと食べたかい、田園生活は身体が資本だからね! 食べなきゃダメだよ! うちの旦那は食べ過ぎだけどね」

「は、はい! めちゃ美味かったっす! 料理上手なんですね、ビックリしましたよ」

「な〜に、ウチには大喰らいがいるからね、そいつに喰わせてるウチにいつの間にか覚えたんだよ」

「ケイト、いいからメシにしようぜ! フラフラしてきたよ」

「はいはい! エルザばぁさん、先にメシにしようよ! 今日は夜なべになるんだろ?」

すると火加減を見ていたエルザさんがジロリと村長を睨むと溜息を吐き

「仕方ないねえ、ガンズもガッつきは治ら無いねぇ、さあ、お湯が沸くまでに食事にするよ! 仕事にかかったら終わるまで休め無いからね!」

するとサラさんがやって来た。何か荷物を運び込もうとしている様だ。

「ふぅ、やっとガラス瓶を掻き集めて来たよ。あれ、晩御飯に間に合ったみたいね」

「遅いぜ! サラ、早くメシにしよう」


と村長がせっつくのだが


まてよ……もしかして


「あのう……村長、もしかして」

「ああ、サラは俺の嫁だ! 一番目のな」

「!!!!!」

「ふん! ガンズはね、昔馴染みの三人にまとめて手を付けたんだよ! もうその時は大騒ぎさ! 全くこんな男にまとめて嫁ぐなんて気が知れ無いよ!」


どうもエルザさんはその時の事をよく知っているらしくご立腹な様子だった。


「……てか…村長……恋愛結婚だとおっしゃってましたが?」

「ばかだねえ! 無理矢理手を付けたに決まってるだろ! 三人の父親にガンズは殺されかけたんだからね! よく死ななかったもんだよ。その三人は有名な剣士と魔法使いと僧侶様だったんだから」

「ば、ばあさん! それは秘密なんだよ! バレたら大変なんだからな!」

ハァッと深い溜息を吐くエルザさんの後ろで無理矢理手を付けられた筈の三人の嫁が苦笑いしていた。


(間違いない! 村長は手を付けたんじゃ無い。手を付けさせられたんだ!)


三人の嫁からは同じ罪を犯した者どうしの微妙な連帯感を感じる。


「呆れたもんだがこの国は一夫多妻だからね、まったく困ったもんだよ。いいかい、こんな奴がいるから嫁を貰えない男が溢れるんだからね! 斎藤は頑張るんだよ!」

「!!!!!」


そ、そうか! ハーレムって男に厳しいんだ! そりゃそうだよな! だって女も選べるんなら好きな男にいけばいいんだからな! てか、佐倉さんだけは譲ら無いぞ! 俺はメラメラと闘志を燃やした。


佐倉さんは運ばれてきた晩御飯に気もそぞろな様だったが……


「さあ、晩御飯にしよう! ボヤボヤしてると朝が来ちまうからね!」

「「「は〜〜い」」」


これからフキとの格闘が始まる!


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