第二十七話 山菜狩り⑤
山菜狩り編終了!
( ̄◇ ̄;)
長かった!
第二十七話 山菜狩り⑤
☆
オオナナフシモドキはゆっくりとこちらを見ながら接近してきた。
「ライノ! 牽制しろ!」
『了解です〜☆ くらえ〜[風弾]!』
圧縮された空気の砲弾がオオナナフシモドキに向かって放たれた! しかし水塊を纏い弾き返してしまう。昆虫を遥かに超える硬い外骨格と水の魔力をフキから与えられ、軽くライノの[風弾]をあしらった。
「……まじ?」
「……これはかなり強いぞ。今年のフキは育ちが良いらしいな」
どうやら年によってフキの生育に差が有り、よく取れるときには当然強力な守護がつくらしい。
『……やるな〜よーし![風斬]!』
ライノはクルリと身を翻し大気の刃を放つ。しかしオオナナフシモドキの水の護りを突き破る事は出来ない。
「オークより強いじゃないですか!」
「来るぞ!」
魔力を集め収斂された水塊が目の前に着弾すると圧縮された水圧を炸裂させた。辛うじて村長が身を呈し大剣で圧力を逸らしたお陰でダメージは少ないが二人で森の中を吹き飛ばされる。まるで機械仕掛けのトラップの様に的確に反撃をして来るのだ。
『む〜! マスター! 魔法では無理かもです〜☆』
フキからの魔力供給を受けるオオナナフシモドキにはさしものライノも決め手に欠けるのか反撃の糸口すら掴めない。
『マスター、ここは接近戦を挑ませましょう! ワムルは攻撃力と耐久力に優れた妖精ですからな! 勝負になるはずですぞ!』
リデルが腕輪から叫ぶ。ならばここは白兵戦を挑もう! 恨みは無いが覚悟しろよ!
俺はタクトを振るう!
「さあ〜♪ 突撃だ〜♪ 足長虫をとっちめろ〜♪」
『『『wooooo!!!! kakareeee!!!』』』
10匹のワムルがオオナナフシモドキに攻撃を仕掛けていく! 早さは圧倒的な茶色い戦士が散開して飛びかかっていった。《ドガッ! バギッ!》と鈍い打撃音が森に響く。
小さなワムルとは言えその力は凄まじいようで一撃が加わるたびにその巨体が《ガグンッ!》と揺れて膝をつくがそれでもその長い脚を振るいワムルを二匹、三匹と吹き飛ばしていった。しかしワムルも耐久力には自信があるだけに吹き飛ばされてもまたすぐに立ち上がり反撃を加えていく。
いかなオオナナフシモドキとは言え手数に勝るワムルには優勢とは言えないのか徐々に追い詰められていった。確かに一撃で数匹を吹き飛ばしていくが必ず反撃を加えられ、その動きは目に見えて衰えてしまう。
「よし♪ 脚をねらえ〜♪ 動けないようにしてしまえ〜♪」
その合図に二手に分かれたワムル達が左右から脚に遅いかかっていった。オオナナフシモドキはリーチを利用して動きの遅さをカバーしていたがさすがに脚を封じられると動きは極端に鈍くなり攻撃力も、いわゆる脚を振り回すだけになってしまうのだ。それではワムルには通用しない。《バギンッ!》と脚の一本が折れるとその場にオオナナフシモドキは倒れ込んでしまう。「ギッギギィ! 」と苦悶の声を上げるがそれは諦めにも似た悲壮なものだ。もはや反撃する術は無い。
「よし♪ トドメをさせ〜♪」
『『dooruaaaa!!!』』
ここぞとばかりに踊り掛かるワムルはありったけの魔力をオオナナフシモドキに直撃させていく!
《ドガッ!バギンッ!ゴスッ!ボゴンッ! グジャ!》
連続して叩き込まれた連弾のうちの一つが急所を直撃した! オオナナフシモドキの身体が一瞬ビクリッと痙攣したかと思うとーー《ズズーーン》と崩れ堕ちていった。そして魔力を喪失して元の素体に還元されて行くと、〈バフンッ〉と煙が上がりそこには水色の魔石が〈コロン〉と転がり落ちた。
「!!! こ、これは?」
「それがフキが込めた魔力が結晶化したものだ。普通の人間が倒すとそれが呪いとなって人を蝕むんだよ。だから山菜取りは身体の弱いものや年寄りには無理なんだ。今迄は無理矢理やってたんだが、流石に今年のカルマモンスターは桁違いだな。なんせ数十年振りに土地神代行が現れたんだ。この辺り一帯の大地に宿るマナは最高調のはずだからな」
あれ? その説明でいくと
「もしかして……俺のせいでカルマモンスターが強力になってるんですか?」
「……もしかしなくてもお前の所為だな。まあ、お陰で土地が豊かになって農産物が沢山取れるんだから痛し痒しといった所だがな」
なんと、それは聞き捨てならない。つまり俺一人がこのノルン村に多大な影響を与えてしまったという事なのか?
「……もしかして俺はこの村に居ない方が良かったんでしょうか?」
「それはお前次第だろうな。力なんてものは多かれ少なかれ良い面と悪い面を併せ持つものなんだよ。お前のその妖精使いの力も、その力をどう使うかによって結果には大きな差が出るんだ。要はお前の有り様が重要だという事だ。人間なんてどうせ人に迷惑をかけ会いながらお互い様て生きていくもんなんだから、お前が迷惑を掛けたと思うなら、その分お前に出来る事で返せばいいのさ。それに、どうせお前は佐倉を置いてこの村を出ていくと言う選択肢は無いんだろ?」
「……それはまあ、そうですけど」
「ならやるしかないよな! 期待してるぜ!妖精王!」
「…………」
なんだか上手く嵌められている気がするがーー俺に出来る事はそれほど多くは無い。なら最善の方法を選びだすしか無いという事だろうか。
俺はオオナナフシモドキを倒して足元に集まって来た妖精の頭を撫でながらじっとフキの群生地を見ていた。
『マスター〜この魔石はマスターの物です〜☆ 大切に保管して下さいね〜』
フワフワと飛んで来たライノは[水色の魔石(小)]をコロンと手渡してくる。俺はその不思議な魔石を手に取り、妖精使いとして仕事を終えた手応えを実感していた。
そして
「さあ、フキを狩るぞ! これからが本番だからな!」
「……そりゃそうでしょうね」
異世界の田園における一員として、その勤めを果たすのだった。
「そうだな、もって帰れるのは半分までだから、三千本位で良いだろう」
そう言ってたっぷり四時間ほどフキを狩る事になった。ちなみにワムルも総動員してもやはり時間は掛かる。見ているだけとはいかないようだな。
残念な事にライノの[風斬]で大量切断を企てたが質が落ちるのでやめさせられた。人の手で狩らないとダメになるそうだ。
そして狩り終えて帰ろうとした時気が付いた。
「さあ、斎藤、背負ってかえるからな。肩を出せ」
「…………そうなりますよね」
俺は必ずアイテムボックスを入手しようと心に誓うのだが
「アイテムボックスには生き物は入れられないんだが、山菜は取った時はまだ生きてるから、入らないんだよね」
「…………」
薔薇色の異世界田園生活は遠い。
「明日もいくか?」
「!!!!! …………い、いきます」
「そうだな! 頑張らないと佐倉にプレゼント買えないからな!」
「!!!!!」
何故ばれてるんだ!
「安心しろ! 明日は加工して出荷の準備だからな。ちなみに女達が山菜の下処理をする為に家で待ってるんだよ。だから急いで帰るぞ!」
「まじですか!」
「佐倉もまってるぞ」
「!!! が、頑張ります!」
俺は身体に鞭打ちズシリと重いフキの束を担ぎ、山を降りようとすると、村長とライノが手を合わせてフキの群生地を拝んでいた。そしてワムル達も真似をしている。ここには人と自然の共生が確かに存在していたのだ。
三人の嫁さんを持つ村長もやはりそれなりの大きな器をもっているということなんだろうか? ちゃんとその生活を支えているのだから。
「ちなみにオークと討伐報酬は出るんですか?」
「!!!!! よく知ってるな……ちゃんと後で分けてやるよ。斎藤は冒険者ギルドに入って無いからな。俺の見習い扱いになるんだよ」
村長は意外に侮れない人物だと修正しておこう。マイナス方向に




