第二十三話 山菜狩り①
いよいよ新章スタート!
( ̄Д ̄)ノ
第二十三話 山菜狩り①
☆
異世界四日目早朝
俺が祠の水を代えていると、村長がやって来た。
何故だろう、嫌な予感しかし無いのだが。
すると村長はこう言った。
「今日の予定は?」
「…………」
「今日の予定はあるのか?」
「……特には…ありません…けど」
「……そうか。なら付き合え」
「!!!!!」
「フキを狩りにいくぞ」
フキ? フキだと? あの山菜の?
「あの〜山菜を採りに行くんですか?」
「ああっ山菜を狩りに行くんだ」
その日俺は、村長と山菜狩りに行く事になった。
「……山菜を採りに行くんですよね?」
「……山菜を狩りに行くんだよ?」
「……ですよねえ」
「……そうだよ」
♢♢♢
この村の基幹農産物は小麦らしい。お米は少し離れた大きな平野で作っているらしく、このノルン村では春小麦と夏小麦と言う二回の小麦の収穫が主だと言う。そして秋に収穫を終えた後に皆牧草を植え放牧をするそうだ。何を放牧するのかはまだ聞いて無いのだが、大変気になる。
そして俺が土地神の代行になってから大変育ちが良くなっているらしい。確かに庭の野菜も食べきれないほど成るからさすがだ。妖精の数も日増しに増えているそうで、病気も少なく、今年は豊作だと皆が喜んでいると言う。
それに加え元々この時期は皆手が空くので色々お金を稼ぐらしい。その一つが山菜採りだ。それぞれの時期に色々採れるらしいが、やはり異世界なので採りに行く時は皆で共同で乗り込むという事だった。
ちなみに今日は村長と共に近場に向かう事になった。これは連携が取れ無いと危険だからとの事だ。
案の定コレは男性の仕事で、残念ながら佐倉さんは別の仕事があるらしい。色んな生産系の仕事は主に女性の仕事で、この売り上げは夫婦と言えど別会計で、この売り上げで女の人同士で旅行に行ったりとかもすると言う。
少し不思議な感じだが江戸時代の終わりから明治初期の間で、豊かな農村部では同じような事が行われていらしい。
どうもその時の転生者が色々と影響を与えていたようで、その後にも様々な変化をもたらしたそうだ。
たがココは異世界だ。
日本とは違うのだという事を嫌と言うほど味合う事になる。
ちなみに今日は初夏の山菜狩りらしい。
狙いは[フキ]だそうだ。
俺はオヤツ代わりに夏ミカンを二つ袋に入れて腰に結わえ、ショートソードとナイフを装備し、[妖精王のタクト][壺][幻想図鑑]はデフォルトだ。ライノは封印し無い約束なのでフラフラと俺の周りを飛び回っている。逃げるのがと思ったらどうも俺の周りは居心地が大変良いらしく、黒い妖精と共に俺に張り付いている。
因みに[壺]の中には十匹ほど入れてある。あと火トカゲはブルケの部屋の中で[ペリドット]を護り、水ガエルは小さくなって井戸の底で家を護っている。因みにあのあとどれ程呼ぼうとしても妖精は百匹を超えては集まらなかった。何か秘密があるのか謎は深まるばかりだ。
「と言う訳で頼んだぞライノ」
『お任せ下さい! このライノがお供いたします!』
そして俺は村の北側にある門に辿り着いた。そこにはフル装備の村長が居た。フル装備? 嫌な予感しかし無い。分かった!
「村長、フキが襲ってくるんですね」
そして俺を盾にするつもりなのだ。
「……いや、フキは襲わない」
なんだ。違うのか
「……ただフキの周りに居るんだよ」
やはり。どうせそんな所だと思った。
「……夏ミカンの収穫があるので帰っていいすか」
「……斎藤、言いたく無かったが夏ミカンは皆んなの家に植えてあるから貰っても誰も喜ば無いからな」
「…………」
まずいな。物々交換作戦が最初から頓挫してしまうじゃないか。でも魔獣も戦うのはいささか俺には荷が重い。
「因みに旬の野菜を食べると寿命が一年伸びると言われて高値で取引されているんだが、ノルン村は最高の産地だ。高く売れるぞ!」
よし、やって見よう! それで佐倉さんに何かプレゼントがしたい! だって俺も佐倉さんもお金が無いんだもんな。領主様から補助金も少し貰えるらしいが、期待する程じゃ無いらしいしね。
「よし、村長さん、気合いれていきましょう!」
俺は一攫千金を狙いノルン村北東[オチボの森]を目指すのだった。
♢オチボの森
村の北門を抜け、そびえ立つ山々の麓に広がる落葉樹の森ーーそれがオチボの森だ。[フキ]はその森の山にかかる辺りに群生しているらしい。
「オチボの森にも多少のモンスター位はいるからな」
「……多少と言うとどの程度なんです?」
「心配するな。コボルトかグレイウルフくらいだ。魔獣の類は殆どこねえからな」
「……グレイウルフがヤバそうですね」
脳筋村長は「そうか?」と平気そうなのが少しイラッと来た。俺は初心者だ! と言いたいところだがこれも[フキ]の為だ。
♢
ノルン村を出て森を暫く歩くと、少し植生の違う森に出た。
「ここからがオチボの森だからな」
「ええっ! 今までは違うんですか!」
「人里の近くは大層な森は育たねえんだよ。村の周辺は水の森と呼ばれるミズナラとかの保水力のある広葉樹林帯なんだよ。昔の転生者の中に忍者と風水士と呼ばれるチート能力持ちが居てな、その人達が人の住む集落の近くにかたっぱしから植林そていったんだよ。もともと人は水の近くに住むからな。おかけで数世紀が経った今は水に困るのはよほどの時位なんだよ。ただ、山菜とかは割と環境の悪い所の方が良いのが育つんだ。他の植物に競い負けるらしいな。あと、山菜は毎年株を残して同じ場所に育つので、人里の近くは狩られ過ぎてなくなっちまんうだよ」
言われてみれば[水の森]の向こうに広がる[オチボの森]は少し下草も植生が違うようだった。てか何気に転生者凄いな。だから俺や佐倉さんが当たり前の様に受け入れられてるのか。
「因みにお前は気がついていなかったようだか他にも食べられる木の実や果物があったのを全部スルーしていたな」
「!!! ええっ! も、勿体無い! なんで言ってくれないんすか!」
「転生する奴らにも色々いるからな。最初は適当にやらせてみるのさ。その上で足りな事や必要な事だけ教えていくのがこの世界の流儀なんだよ」
「…………」
単に面倒臭いだけの様にも思えるが
「他の村人は行きも帰りも採集しまくるんだよ。それじゃお前のテストにならねえからな」
「テスト! テストなんですか!」
「そりゃそうだろ? この世界の奴ならダメなら他所へ行けばいいが、お前は五年は帰れ無いんだぜ? 転生者はそれなりに人格を調べられてから送られるんだが、そいつらを全部この村の流儀に合わせさそうとすると絶対合わ無い奴が出てくるのさ。だから最初は皆んな接触しないんだよ。その上でそいつにあったやり方を見つけてやるのさ」
「そうなんですか」
「それが流儀だ」
以外にも村長はできた人の様だった。決して血に飢えた冒険者と言うだけでは無かった訳か。
因みに森にも色々あって、薬草の生えやすい森、木の実が生りやすい森、獣の多い森、そして魔獣のはびこる危険な魔の森があるそうだ。
「後で地図を渡す。森に入る時は気を付けるんだぞ。忘れるなよ。田園を抜けるとそこは異世界だからな」
田園も十分危険な異世界だがここはスルーしておこう。
そして俺は村長を従え[オチボの森]に分け入るべく森の境界に立っている。
「……覚悟はいいか、斎藤」
「……覚悟がいるとは聞いていませんでしたがいきましょう」
俺たちは山菜狩りに突入した。
フキだけに不吉な予感ーーいやそれは無しな方向でお願いしたいな




