第二十一話 黒い石
だんだん話しがややこしく( ̄◇ ̄;)
第二十一話 黒い石
☆
「うおおおおおっ!」
「きゃああああっ!」
『uriiiilrliiii!!!nnnnjn!!』
「モウ⁉︎」
爆散する水塊を潜り抜け、斎藤は佐倉さんを抱き抱え仔牛を乗せた妖精の集団を操り麦畑の真ん中で停止した。
無数の妖精達に囲まれ、俺はタクトを振るう!
「よおし♪ お前ら♪ 良くやった♪ 心から礼を言うぞ〜♪」
『『『!!!!!』』』
『『『……………』』』
『yataaaa!!!』『svgeeez!!!』『mstaaaaanise!!!』『jackeee!!!』『ooooshaaa!!!』
相変わらず何を言っているのか分からないが取り敢えず祝福してくれている様だった。数千匹近い妖精達は大騒ぎしているが、佐倉さんは呆然としている。
「……佐倉さん! もう大丈夫ですよ! デカ水ガエルも見事に倒しました!」
佐倉さんは一度だけ爆発したクレーターをみてーーそのまま俺に抱きついて来た。
「!!! あ、あの! さ、佐倉さん⁉︎」
「……怖かった…」
「……えっ?」
「……怖かったです…」
「……えっと…佐倉さん?」
「……怖かったんです!」
「……は、はい…」
「……ううっ…」
「…………」
「ううっ…ええ〜〜ん え〜ん 怖かった こわかったよ〜」
「…………」
「ひぃ〜ん ひっく ひっく あ〜〜ん あぁ〜〜ん」
その日
佐倉さんは子供の様に泣きながら謝って、中々俺から離れなかった。
サラさんが付き添われやっと家に戻り落ち着いたのは夕方になってからだった。
領主の使いもまた改めて出直す事となり、軽く挨拶を済ませただけで被害報告にその日の夕刻には戻って行ったのだ。
そして、当然そのまま終わる訳は無い。
話は爆発直後に巻き戻る。
♦︎♢♦︎♢♦︎
妖精達を返した後の事だ。
村長に言われライノは爆発で吹き飛ばされた[ウォーターデビルズデストロイヤ]を封印させるべく、回収し俺の所にもっていかそうと画策していた。ブルケの秘密の部屋の秘密を秘密にする為に、こっそり俺に封印させようとしていたのだが、その爆心直下、ライノは不思議な物を見つけたと言う。
「それがこれよ」
そう言ってサラさんが俺に見せて来たのは綺麗な[黒い石]だった。不思議な光沢をたたえ、少し明滅している様にも見える。
「……これは? 」
「……結論から言うとな、俺達には誤りがあったんだよ」
村長が憂鬱そうに切り出して来た。
「……どう言う事でしょうか?」
「あのデカい水ガエルはな、確かに[ウォーターデビルズデストロイヤ]だが、[ウォーターデビルズデストロイヤ]では無かったんだ」
「…………はい? その、意味が分かりませんが?」
するとサラさんが説明してくれた。脳筋村長の限界値はかなり低い様だな。
「水の妖精、特にあの水カエルが数百年を経て[ウォーターデビルズデストロイヤ]になると言われているけど、今日のやつは確かに[ウォーターデビルズデストロイヤ]なのは間違いないけど、以前このあたりを水没させたのとは違うのよ。今日の奴はこないだあなたが見つけた水ガエルに、魔力が注ぎ込まれ暴走したみたいなのよ。形状は間違いない無く[ウォーターデビルズデストロイヤ]何だけどね。それは領主の使いも確認しているわ」
「それがこの[黒い石]なんだ。魔石である[ペリドット]と呼ばれる物だ。しかもかなりのレベルだ」
「…………」
「で、これからが本題だ」
「……はい」
「ブルケが居ない今、妖精に関われるのは斎藤だけなんだ。お前にはこれからも同じ様にこのノルン村を守るのに協力して欲しい」
「……えっ? で、でも俺は異世界から転生したばかりで農業職を目指すチート無しなんですよ! そんなチカラはありませんよ!」
「心配するな。この国の誰も気がついて無いが、妖精使いは立派なチート職なんだよ。しかもお前は妖精王の肩書きに土地神の代行者でもある。それに、妖精の引き起こす事は妖精にしか解決でき無い事も多いんだ。それにな、佐倉さんはどんな事があってもこのノルン村を離れる事は無い。今日みたいな目にあってもな」
「…………」
(佐倉さん…どうしてそんなに?)
「俺とサラは戦闘職なんだ。だからスキルも限定的でな。その点妖精使いは桁外れに色んなスキルが使える筈なんだ。ブルケも凄まじかったからな。しかもお前はブルケですら使いこなせ無かった[妖精王のタクト]と[壺]そして[幻想図鑑]を所持してるんだ。きっとお前は佐倉さんの為になる筈だ。それとも佐倉さんの手助になるのは嫌なのか?」
「……それは…出来れば佐倉さんを助けたいですけど」
「ならよろしくお願いするわ。でも安心して。このノルン村は他所とは違うんだからね」
「そうなんですか?……でも…俺は…佐倉さんの為になるんでしょうか?」
「……それは間違いないわ。それに佐倉もそれを望んでいるでしょうね」
しかし一つ疑問も残る。
「その[黒い石]は何処から来たんでしょうね?まさか偶然とは思え無いのですが」
「そう、つまり[この村に干渉しよとしている奴等]がいた可能性が高いと言う事なのよ」
「まあ表だって動く事はほとんでき無いだろうがな。この[黒い石]つまり[ペリドット]だってそう簡単に手に入る訳じゃ無いからな」
全ては今だ謎という事か。
しかし今さら佐倉さんと離れるなんて俺には出来ない。つまり選択肢は無いのだ。
「……行くとこまで行ってみるしか無いんだな」
「迷惑をかけるがよろしく頼む」
「そうね、何気に佐倉との相性も良さそうだし」
うん、そこ重要だな。後から許婚が居たとか勘弁して欲しいな。
「……分かりました。何処までやれるか分かりませんけど、俺の力が佐倉さんの為になるなら引くに引けませから」
「お前ならきっとやれる」
「そうね、やれる筈よ」
そう言って二人は帰って行った。
言い回しが少し気になる所だ。
こっそり佐倉さんの所に行こうかと思って家を出たら、佐倉さんの使い魔である白いフクロウがジッと俺を木の上から見ていた。
「…………」
俺はこう思った。
『まだ機会は幾らでもある』
俺は家の中に戻った(…監視されているのか)。
机の上には[黒い石]が置かれている。今この村で最も耐性が有るのは土地神の代行である俺らしい。そしてこの村で最も安全なブルケの部屋に保管する様に頼まれたのだ。
その石は不思議な明滅を繰り返している。
「……[黒い石]か…」




