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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
18/66

第十八話 佐倉さんの奮闘

二日目も長くなりそう〜( ̄◇ ̄;)

第十八話 佐倉さんの奮闘


俺は妖精を扱う事に自信を持ち、少しばかり異世界での田園生活を進めていく上での足掛かりを得た気分でいた。


一応は農産物を育て、それを自給自足の生活基盤とし、それに狩猟や採集、漁獲を加えていきたいと思っている。この森は豊かな様だし、季節になれば山菜やキノコなどの山の幸だって取れるはずだ。村長がいるならイノシシくらいならとれるかもしれ無い。一攫千金は無理でも、多少現金収入があれば大分違うだろうからな。


となると気になるのは佐倉さんだ。まだ落ち込んでいるかもしれ無いし、俺は様子を伺う事にした。決して下心ではーー無くもないがこれなら一般常識の範囲内だ!


取り敢えず領主の使いとやらが来る前に逢いに行こう! まだ時間は早いからな。俺は夏ミカンを縁側に急いで積み上げ、お隣さんへ向かった。


頭の上には黒い奴が未だに陣取っている。護身用に連れて行こうか? いざとなったら投げつけて逃げよう。



♢♢♢♢♢



「佐倉さん! ???」


部屋の中に居ない。何処に? ふすると表から声が聞こえて来た。


「きゃああああ」


佐倉さん! 俺は慌てて家を飛び出し、裏庭の声がする方に向かって走りだした。


すると小屋の中から声がする。あれは牛小屋だろうか? 俺の家には蔵が、佐倉さんの家には動物小屋があったのだ。するとーー佐倉さんが放し飼いになっていた仔牛に引っ張られていった。ズルズルと首輪についた紐に縋り付いているが仔牛は意に介さずまるで遊んでいる様に佐倉さんを引きずってこちらにやって来た。


「……佐倉さん…一体何を?」

「!!! ああっ! 斎藤さん! この仔を止めてえ」


しかし、その勢いは止まらずそのまま畑の方へ引き摺られ、遂に力尽きた佐倉さんを置いて仔牛はテクテクと歩いていった。


倒れている佐倉さんはショックだったのか動こうとしない。


「…………」

「…………」


このままではいけない。佐倉さんが大地に根付いた人になってしまう。放し飼いだったのなら糞だって落ちてるかもだし。


「佐倉さん、昼飯にしますか!」


どうだろう? 落ち込んでも腹は減るだろう? そしてもうお昼だ。


「…………」

「…………」

「パンケーキにでもしますか!」

「!!!!!」

「きっとソーセージとチーズにあいますよ」

「……はい」


そう言佐倉さんは土と草塗れになった顔を上げーー立ち上がった。そうか、佐倉さんのモチベーションは食い意地なんだな。これは重要だ。何気に俺が作る人、佐倉さんが食べる人になってる気がするが。気にするまい。



♢♢♢


佐倉さんによくよく聞いてみると、今朝あの後、村長がやってきて、いきなり大きな牛は大変だから、この仔牛を買ってみるように言われたらしい。仔牛は賢いので勝手に小屋に戻り、勝手に草を食べるそうだ。小さいがこれは品種的なもので、これで十分牛乳は出ると言う。羊と乳牛の中間的な位置付けの家畜らしい。ほっといで大丈夫なので農家の庭先に番犬代わりに買う人もいると言う。


それで


「……小屋に入れようとしたんですけど、全然言う事を聞いてくれなくて。引っ張られて逃げられちゃいました。たはは…」


いかん! 笑いに力が無いな。確か仔牛は……そうだ! アメリカの牧童の話しになんかあったな。


「佐倉さん、それは後で僕も手伝いますよ。いずれ僕も飼うかもしれませんからね。でも不思議ですね? すごく懐いている奴等もいるのに? そこにいる羽根猫やリスやフクロウとは勝手が違うんですかね?」


俺は少し釈然としないモノを感じていたが、ここで佐倉さんの心の傷に塩を塗り込んでも仕方ない。幸いにも小麦粉と卵と砂糖や、牛乳、バターもあった。俺はパンケーキを大量に作る事にした。フードファイター佐倉との一騎打ちだ!




「パンケーキなんて作った事無いです!」


むむ、佐倉さんの目に力が戻って来たな。よしよし、俺はそれに気を良くしてレクチャーを始める。なに、俺が適当につくるパンケーキなんだから、実はそれが本当に巷で言うところのパンケーキなのかどうかは分からない。だが、俺は早くて美味ければそれで良しだからな。


「佐倉さん、こんなの簡単なんですよ?」


にじり寄る佐倉さんに俺は材料を見せる。コツの一つは、先ず全ての材料を揃える事だ。


使うのは

•小麦粉100

•砂糖50

•牛乳100

•卵100

•バター30


これだけだ。


「……これだけなんですか?」

「そう! これだけ! てか、これで十分!」


ただ、それだけでは寂しいので今日はピクルスを添え、ソーセージを焼いて簡単な和風野菜スープを合わせよう。


佐倉さんにはトマトとレタス、キュウリをもいできて貰う。


トマトは乱切り、レタスは細く千切り、キュウリは端を落として縦長に切って貰う。顆粒だしの素をボールに溶かして貰いスタンバイだ。




探してみたらフルイがあったので先ず砂糖と小麦粉を振るっておく。そして卵を割りほぐして牛乳を入れる!


そして釜戸に火を入れて、その火のそばにバターを乗せたボールを置いて溶かしておく。


先ず液卵と牛乳の混合液をボールに入れてホイッパーで軽く泡立てる!


そこへ砂糖を入れてこっからは気合いを入れて! 体積が1.5倍くらいが目安だから、ボールの目安をつけておくといい。プロはカップに摺り切りではかり、比重をだすが個人ならそんなの必要無し!イメージ的にはほんの少しトロリとしてホイッパーで垂らすとギリギリのノ字が書けるくらいが丁度良い!


シャカシャカやってると心配気に佐倉さんが聞いて来る。


「……あの…疲れませんか?」

「大丈夫! ご飯の為だから!」


少しコツはあるがこれは自分で体得するしか無い。


十分泡立ったら今度はスパテラを取り出し小麦粉を一気に入れて、着るようにか混ぜる! 決してこね無いのがコツだ! 粘りを出さ無い様に気をつける。


そして溶かしたバターを一旦スパテラの上に落とし、そしてさっと混ぜる!


生地はツヤツヤとしている! それが混ざった証拠だ!


「はい! 生地は完成です! 後は焼くだけ!」

「おおっ! 早いです!」


佐倉さんのリアクションは創作意欲を刺激するなあ〜と思いつつフライパンを釜戸で熱していく。煙が少し立った所でオリーブオイル(らしいもの)をざっと回し、煙が出たところで生地をフライパン一杯に投入する。中火でじっくり焼くと、泡立てたせいで浮き上がり始める!少し揺すりつつ焦げないように調節しながら焼き上げ、最後にクルリとヒックリ返して一枚完成!


「おおっ! ちゃんと焼けてますね!」

「これは火加減だけで焼き上げるみたいなもんですからね。ガスなら簡単ですけど、釜戸は流石に大変ですね」


佐倉さんがポヨンポヨンと突いている。冷めると美味しく無いからなるべく早く食べたい所だな。


俺の頭の中には地下室の火トカゲの姿が思い浮かんだ(あいつが入れば簡単に出来そうなんだけどな〜)。


二十枚ほど焼き上げて重ねておく。一応十枚づつーーと言うことにしておくがーー佐倉さんには足り無いかもしれない。


ザッとフライパンを洗い釜戸で水気を飛ばし、オリーブオイルを馴染ませて、ここでソーセージを炒める。塩胡椒はきつめにしておこう。オリーブオイルは多めにして次の野菜を炒めるのに使う! 味が移るから狙い目だ。


熱せられたフライパンから〈ジュー! 〉と言う音が響き動物性蛋白質が焼ける匂いが胃袋を刺激する。軽く焼き上げ皿に上げて次準備にかかる。トマト、キュウリ、レタスを油通しして油が馴染み軽く火が通ったら、油を切ってそこにスープを少しづつ足していく。弱火で少しつづ合わせ、バチバチしても気にし無い!完全に合わせたら一回沸騰させてアクを取り完成!


「早い! 早いですう!」


佐倉さん、適当なだけです。


「さあ、飯にしましょう!」

「はい!」


今日のお昼はパンケーキとソーセージ、ピクルスとチーズ、そして和風野菜スープだ!


そう、先ずは飯を食って、また頑張る!


〈バタンッ〉

その時、また扉が開いた。


そこには、礼服に身を包んだナイスミドルとドレスに身を包んだレディが立っていた。


「……どちら様で?」


「何言ってるんだ! 今日は領主の使いが来るっていってあるだろ? 逃げ出して無いか見に来たんだよ!」

「あんたがバカな使い魔を放し飼いにして無いか確認に来たのよ! なんでいつも佐倉の家にいるのよ!」


どうやら目の前の二人は村長とサラさんの様だ。この完璧なタイミングーー完全に確信犯だな。


その時の横の佐倉さんの悲しげな顔はパンケーキの分け前が減るからだと推察できた。


佐倉さん……顔に出過ぎです。



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