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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
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第十五話 佐倉さんの中の人

第十五話 佐倉さんの中の人




その佐倉さんであった筈の女性はクイッとワインを飲み干した。


(まずい……酒乱だったのか?)


妖しげな笑みを浮かべるその女王様っぽい人は俺を見てこう言った。


「つがんか! 気が利かんのう!」

「は、はい! つがせて頂きます!」


俺はその迫力に圧倒されていた。とても冗談とは思え無いほどその発するオーラは桁違いだった。月に一回くらいデイダラボッチにでもなりそうな雰囲気を醸し出しでいる。俺はこの人になら踏まれても構わないーーいやいやそんな事は無いが、只ならぬ気配だ。人とは思え無いほどの…


トクトクとつぐとまたクイッと飲み干した。


(まずすぎ! 幾ら何でもピッチ早過ぎる!)


「……で? お前はこの娘の何なんじゃ?」

「……えっと…何なんじゃと言われましても……お隣…さん…ですかね(そう、ココは当たり障り無くやり過ごそう)」

「なにい! 貴様はヘタレじゃのう! この娘は中々の上玉なんじゃぞ? 見ていみい! この豊かな胸! この括れた腰、そしてこの溢れんばかりの美尻!」


そう言って扇情的なポーズをとって来た。しまった! スマホ忘れて来たよ! 脳内ハードディスクに永久保存しておかねば! いや、いかん! ガン見そてしまった! まだ何らかのトラップの可能性があるのだから、この誘惑に乗っては負けだ!


「こっちに来い! 横で酌をせんか!」

「はいっ! 失礼します!」

「……素直な奴じゃの。じゃが小気味良い! そばに寄れ」


そう言って俺を横に呼びつける。


俺はお酌をしながら


「すいません! そう言えばお名前をお伺いしておりませんでした! 是非お教え願えませんか? 今後の為に」


そう言うと、少し逡巡してニヤリと笑った。


「今後の為にーーとはな。お主、存外侮れんのお、ただのヘタレでは無いのかの? しかし、妾の名前、タダでは教えられんの。そうじゃの、お主がこの娘と妾の望みを叶えてくれたのなら、教えてやらん事も無いぞよ?」

「なるほどなるほど、佐倉さんでは無いんですね? そして望みは貴方達二人別々にあるんですかね? それは中々難易度が高そうですね。でも」

「……でも?」

「いえね、僕達はまだこの世界に来たばかりで、ノルン村の事ですら(家の中の水ガエルと火トカゲの事ですら)殆ど知りませんからね。でも、いずれはご期待に応えられるかも知れません。その時まで、気長にお待ちし下さい♡」

「……ふん! 意外に太々しい奴じゃの。まあ、男はその位の方が良かろう。この娘にも合っておるのかもの」

「……気になる事が一つあるんですが」

「……なんじゃ……簡単には答えてやらんぞ」

「……いえね、お二人の付き合いは長いのかなと。たとえば今日からとか? その辺、どうなんでしょうね?」

「……さてな…この娘に聞いてみれば良かろう? お主がこの娘の事を気になっておるのくらい、目線ですぐわかるわ! あまりジロジロ胸ばかり見ておるといずれ嫌われるかもの♡」

「!!! いやいや! 見てません! いや嘘です! 見ていましたがあくまでもさりげなくチラチラとしか! ああっ! バレてたんですか! 俺が『案外隠れ巨乳じゃなくてそのまま巨乳だな』とか思ってた事までバレてたなんて!」

「いや、それは初耳じゃがな」

「!!! しまった! 墓穴を掘ったか! こ、この事は是非佐倉さんには御内密にお願いいまします!」

俺は机に頭を擦り付けて懇願した。ここで佐倉さんの好感度を下げる訳にはいか無いのだ! 薔薇色の田園生活の為には! てかそれだけで薔薇色なんだけどな!

「くふふ、良かろう、その願い聞き届けようぞ! 代わりに、この娘の事をしかと頼んだぞ!」

「……なるほど、二人の間には秘密を作る事が可能なんですね? 少し想像がつきましたよ、貴女の事がね」

「!!!…………お主……まさか駆け引きなのか? 」

俺は首を振るとこう付け加えた。

「俺は佐倉さんの事が好きなんです! だから、貴女と佐倉さんの関係がちゃんと知りたかっただけです。それに、貴女は佐倉さんの為になら無い事はし無いでしょうし、僕だってそんな事はしませんからね! ほら、二人は、いや、三人は共通の目的を持った仲間でしょ!」

「……呆れた奴じゃの……お主、今この娘を口説いたようなもんじゃぞ? 中々大胆じゃの」

「……しかし、貴女は簡単には伝えられ無い。そうなんですね?」

「……さて…それはどうかの? じゃが、いずれ分かる時が来るかもの。とは言え…」

「……とは言え?」

「今日はお開きじゃな」

そう言ってその女王様はペロリと舌を出しーー悪戯に笑った。

「ちょっと待って! それはどう言う意味なんだ」


その時〈バタン〉と扉が開いた。


「斎藤、あれ程妖精を放し飼いにするなと言ったでしょ!」


そこには怒りに怒髪天をついたサラさんがギラギラした目を俺に向けていた。サラさん、そんな目で人を見てはいけませんよ。めっちゃ怖いっす。


「ま、まって下さいよ! 今僕は佐倉さんとーーあれ?」


振り返ると佐倉さんは突っ伏して寝ていた。スヤスヤと安らかに


「……佐倉さんがどうしたのよ」


「……なんでもありません…はい」




散々怒られた俺は後であのバカ妖精に仕返しする事を誓いこう悟った。


「……お泊まりの約束は無しだな」


そして……佐倉さんにまたお酒を飲ませてみようと心に誓うのだった。何処からも邪魔の入らぬ所で


ちなみに俺の告白が絶賛スルーされこの世界の記録に一切残っていないのは言うまでも無い事だった。


こうして


何があったのかそれとも大した事では無かったのかすらわからないまま異世界での最初の夜は更けていった。


これは中々大変そうだね


俺はそう思った。


しかし……もしかするとサラさんは俺の事が好きなのかも知れない。だからそれが怒りにの原動力に


それは無いか

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