第十二話 ベーコンを頂きましょう!
まだまだ閑話休題が続く!
( ̄Д ̄)ノ
序章
第十二話 ベーコンを頂きましょう!
☆
「きゃあああっ! か、可愛いですう!」
……当然…俺の事では無い
『にゃはははははッ! そりゃそうです! ボクこそは妖精界にその人ありと言われた風の妖精 ライノですからね!』
……自慢気にのたまうライノだが『妖精界にその人あり』てお前妖精なんじゃ無いのかよと突っ込みたいがーー勘弁しておいてやる。
「凄い! 飛べるし、可愛いし、喋れるし! さすが妖精さんですね!」
佐倉さんがどうしても喋れる妖精ーー羽根の生えたポルターガイスト 封印妖精ライノを見たいと言うリクエストに抗えず俺は壺から出す事を余儀なくされた。ライノは佐倉さんに気にいられれば無闇に封印され無い事を察知した様だ。賢しい奴め。その内旅にでも送り出してやろうか。瓶にでも入れて川にでも流して……
「斎藤さん、これが獲物です!」
目を輝かせ、ライノを頭の上に寄せてご満悦な佐倉さんが「さあ、どうぞ!」獲物を披露してくれた。はいはい、どれどれと机の上をみると、ベーコン、ハム、ソーセージ、ザワークラウトの入った壺、ピクルスの様なキュウリが入った瓶が並べられていた。
「……大量ですね」
「ええっ! 興奮して手が震えましたね!」
俺は敢えて部屋の中にいる白いフクロウの様な奴と羽根の生えた黒い猫の事は視線から遠く外し、目の前の事にだけ集中する事にした。どうやら佐倉さんには動物…いや魔獣かもしれ無いが大変好かれる体質の様だ。昼間十二分な異世界冒険を繰り広げた俺の頭の中には「君子危うきには近寄らず」と言う格言が何度もリフレインしていた。けだし名言! て言うか近寄ら無いで下さい。
と言うか、羽根の生えた猫は当然だが、部屋の中にいる白いフクロウも尋常じゃ無い。まるで○輪明宏が生まれ変わった様だ。そして謎のリスモドキ……
「これは大量ですね。さて、何を作りますかね」
キラキラとした目を輝かせ佐倉さんが俺を見ている。……良い…くるわ……佐倉さんの持つナチュラルな癒しオーラが火トカゲに焦がされた熱さを忘れさせてくれるわ。
「……さて、 今日はベーコンかな」
「おおっ! 先ずはベーコンですな! さすが斎藤さんです! お目が高い!」
……まあ、何がお目が高いかはさて置いて、やはり今日はベーコンだろう。五キロはあろうかという佐倉さんがずっと掴んでいたベーコン。
……まあ、早く食べ無いと傷んだら勿体無いからな。うん、佐倉さん、素手はやめておきましょうね。なんせ俺と佐倉さんはIターンだ。ある程度は補助もあるだろうが、基本的に自給自足して行かねばなら無いのだ。もしかするともうこんなベーコンにはお目にかかれ無いかもしれ無いからな。
「そうですね、また羽釜でご飯を炊いて、味噌汁はネギとーーゴマにしましょうか」
ふとテーブルを見るとチョコンと置いてある壺には白胡麻の様なものが入っていた。一口食べるとーー「うん、胡麻だ」そしてピクルスとザワークラウトを確かめる。ピクルスは漬物が無いから箸休めにしよう。ザワークラウトはそんなに保つものなのかな? 食べて見ると少し発酵臭がするし、独特の酸味もある。これは「辛くないキムチ?」保存も効きそうだし。少し俺たちの世界とは違うようだ。
「ではメインは」
「メインは♡」
「ベーコンとジャガイモ炒めタマネギ添えでどうでしょうか」
「おおおおおっ! ベーコンとジャガイモは合いそうですね!」
そう、ベーコンからは焼くと油もでるし、ジャガイモは油との相性もいい。肉を一キロ食べたらジャガイモも一キロ食べろと言われるらしい。だからドイツ人てデカイんだな。あえてタマネギは薄く切りサッと火と油を通すのが俺流だ。
ではと準備にかかる。取り敢えず余計な材料は地下に戻し(何らかの魔法効果があったのなら場所は変えない方がいいだろう。佐倉さんが摘み食いしてしまいそうだしな)
名残おしそうな佐倉さんと共に地下室に向かう。
佐倉さん言う通り確かに地下室の入り口があった。そして地下室の中にはーーこれも見なかった事にしよう。明日領主の使いが来ても秘密にして置いた方が良さそうだ。
俺は何も見なかった。
そして
明日の自分に全てを託す
♢
何一つ解決しそうに無い異世界生活でも腹は減る。
お米の準備を佐倉さんに頼み、そのまま羽釜で炊いて貰おう。昼のご飯は全て消費されていたからな。さすがフードファイター佐倉さんだ。摘み食いも破壊力が違う。
その隙に俺はジャガイモとタマネギとネギをとりにいく。外はまだ薄暗いくらいなので楽勝だと思っていたら既に収穫して袋に入っているのがあった。それを使おう。
今日はメインが油ギッシュなので味噌汁はシンプルに。お鍋に水を入れて一煮立ちする前に顆粒ダシを入れて火から下ろす。何となく殺菌した感じ。
タマネギを剥きジャガイモを洗って泥を落とし、皮を荒く剥ぐ。少しくらい残っても全然気にしないでいい! 厚みを一センチ位に揃えてザクザク切る。タマネギは薄く五ミリほどにサクサク切ってほぐしておく。少し水にさらしてみる。なんだかアクが抜ける様な気がするんだよな。
ベーコンはジャガイモと同じく一センチ程にきり長さ五センチ程に切り分ける。これなら佐倉さんと取り合いにはなら無いだろう。
佐倉さんも真剣な面持ちで水の量を調整している。学習能力は高そうだ。女子大生らしいが何を勉強していたのか今度聞いてみよう。
ネギを刻み胡麻を軽くフライパンで炙り、準備完了だ。
既に佐倉さんはご飯を炊き始めている。頃合いだと判断して、材料をすべてお盆に集めた。
そして
俺はフライパン(デカイ中華鍋の様にも見える)を火にかける。
炙る♪炙る〜♪
煙がフワッと上がったところでサッとオリーブオイル(あくまでも想像の上で)を回しサッと全体に馴染ませる。するとまた熱が回るのを見てザッと先ずはベーコンを投入! 〈カンカンッ〉とオタマで油と馴染ませて少し加熱! 油に味を移す。完全に火が通る前にサッとフライパンから出しお皿にとっておき強火に熱したフライパンに今度はジャガイモを投入! クルクルとオタマで混ぜながら油を馴染ませしばし炒める。少し色が変わってくるまでクルクル回して中火に切り替える。油は多めだからポロポロにはなら無い。しばらく加熱してジャガイモに最低限の火が通ったのを確認しタマネギを投入! しんなりすれば十分だからそのまま軽く炒めーーパクッと味見してタマネギの火通りをみる……「よし、OK!」
サッとベーコンを鍋に戻し強火に変えてサッサと塩胡椒をふるう。胡椒は強めでいいだろう。サッと味を見てーー「はい、OK!」お皿にザッと盛る。
佐倉さんの野獣の様な目が食い入る様にフライパンからお皿に移るのを俺は見逃さなかった。
「佐倉さん、ご飯は炊けました?」
「いけます!」
俺は顆粒ダシの入った鍋を強火にかけ沸騰するのを確認してサッと味噌を濾し入れる。ネギを投入し、そのまま蓋をしてテーブルへ!
胡麻は後で投入する。
「さあ、晩飯にしますか!」
「はい!」
〈ガチャン〉
その時ーー扉が開き金属音が響いた。
振り返るとそこにはーー金属の鎧と大剣を背負った男が立っていた。
てか村長だった。
「おう、佐藤、ここにいたのか!」
よし、これから本当に村長に嫁がいるのか確かめに行こう。その嘘を確実に暴いてやるぞ!
その時、佐倉さんが本当に嫌そうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。
てか
その大剣についた血が乾かないほどの近くで何がおこっているのか……いや…気にしたら負けだな。




