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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
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第十一話 隣まで五十メル

閑話休題っぽい!

序章


第十一話 隣まで五十メル


「チュウー!」


佐倉さんと肩に乗っているネズミかリスの様な生き物が俺を威嚇してくる。どう見てもリスにしか見えないそいつは佐倉さんの中では可愛いネズミに見えている様だ。


「佐倉さん、その…ネズミモドキの名前は」

「パニョです♡」

「パニョ!(なんで一段下にズレたらヤバい事になりそうな名前を)」

「可愛いでしょ♡」

「そ、そうですね」


そのパニャとやらは俺が頼りない非常食呼ばわりしたのに気が付いたのか俺を敵対視して威嚇を続けている。賢しい奴だな。でもよく見ると尻尾が案外膨らんでいてそれなりに「シャー!」うそ、嘘だよ。だって今は非常時では無いからな。ベーコンあるしな。でも覚えておけよ、お前の敬愛するご主人様には現在フードファイターの過去があったのでは無いかと言う疑惑が浮上しているのだからな。


「もう、パニャ、なんでそんなに怒ってるの?」

「佐倉さんて好き嫌いありますか?」

「?? いえ…特には……?」

「……それは素晴らしい」

「はぁっ?」


パニャ、君はストライクゾーンだと推察されるよ。……そんな事は無いか。


いや、パニャはどうでもいい。


「そ、その、佐倉さん、何処でベーコンを見つけたんですか? 昼間一緒に探した時は何処にもありませんでしたよね?」


すると、佐倉さんはドヤ顔と言うよりもニヤ顏で答えて来た。


「ふふふっ! お教えしましょう! あの後、小腹が空いたので、コッソリとあちこち調べて見たら、偶然見つけたのです!」


「…………あっ、それは素晴らしいですね」


……言いたい事は幾つかあるが、先ず一つ目はあの後既に小腹が空いていたという事と、彼女の人生は幸運に愛されているという事だ。そしてグッとフードファイター説が信憑性を帯びて来た気がする。恐るべし佐倉さん。まだ成長期なんだろうか(特に胸が)?


まあ、同じ時に水ガエルと火トカゲと封印妖精と三連続未知との遭遇を行った俺と比べると確かに幸運に愛されていると言えなくも無い。


「一体何処にあったんです? 結構探しましたよね?」


「はい、それが、この世界に来たばかりの時には気がつかなかったのですが、お昼を食べた後にあちこち見て回ったら、今度は一度見た筈の奥の倉庫に、地下室への入り口があったのですよ!」


そう言ってエヘンと胸を張った。そうか、佐倉さんの中では野菜だけの食生活にベーコンと言うエポックメーキングな出来事を招き入れる事に成功した、いわば狩りに成功して家族に食べ物を持って帰ったお父さんみたいな心境なんだな。……まあ、コッソリ隠して俺が居ない時にコッソリ食べようなんて人じゃ無くて良かった事にしておこう。そうか、この辺が佐倉さんの変な……いや大切なツボなんだろうな。


て言うかこのノルン村って、地下室に何か特別な執着心でもあるのだろうか? それとも魔女ブルケみたいな奴が他にも居るのかな? 謎は尽きない。


そのベーコンだが、なんだかとても質が高そうだ。脂の部分もいい具合に飴色になっていて、長期熟成しているかのように良い匂いがプ〜ンと漂って来る。佐倉さんの執着心も半端無い感じだ。ときどきゴクンッと唾を飲んでいる気がするのは決して俺が対象では無くましてや肩に乗っているリスモドキのパニャでも無くその両手にしかと握られた本日の数少ない動物性タンパク質に対してなのは疑う余地が無いだろう。


俺はなるべく小さく切って佐倉さんとの争奪戦にならない様に細心の注意を払う事を心に誓った。気をつけなけれはいずれ血の雨が降る事になるかもしれないからな。


「佐倉さん、見つけたのはそれだけですか?」

「!!!!! ど、どうしてそれを……」


「いや、何となくですけど」


秘密の地下室にベーコンだけーーそんな酔狂な事をする奴は居ない。魔女ブルケならやるかも知れないが


「……す、鋭いですね。実はあとハムとソーセージ、それとチーズが……」


ガクリと項垂れる佐倉さんだが「ちゃ、ちゃんと一緒に食べようと思ってたんですよ!」と抗弁して来た。


うむ


ギルティ!


未遂ではあるが


まあ、それでこそ佐倉さんだな。と言うか、


「その、何だか不思議な生き物は居ませんでしたか? なんというか番犬できな奴が」


すると佐倉さんは小首を傾げる


「……いえ、他にもお友達になりましたが、みんな擦り寄って来ましたよ」

「……そうですか」


これが持って生まれた資質の差なのか? 俺には[妖精使い]の才能があり[土地神]に任命されてもこんな目に遭ってるのに……てかよく考えたら俺は何度も命の危機を乗り越えてるな。何気にほのぼのファンタジィじゃ無い様な……あの面接のおばさんの言う通りじゃ無いか。


「あ、あと、ピクルスみたいなのとか、ザワークラウトみたいなのも沢山有りました! どうも貯蔵庫だったみたいなんですよ!」


その目はキラキラと子供の様に輝いている。いつかその輝きを俺が佐倉さんに与えられたな……食べ物以外で


その道は遠く遥かに険しいと思って空を見上げたら


『……ますたー ボクの事を忘れてませんか……』




忘れてた♡



そして佐倉さんと僕は五十メルの短いデートを終えた。


いや


散歩にしておこう

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