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薔薇色の異世界田園生活  作者: 菜王
序章
10/66

第十話 でっかいベーコン

閑話休題的な感じで


ちなみにベーコン、ジャガイモ、タマネギは三種の神器だと思うんですが

第十話 でっかいベーコン


「時に村長、大事な要件て何ですか?」


夜にビッグイベントを抱えている俺は妨害が入らないように周到に不確定要因を潰していく。


『マスター出してえ! ねえ! 出してえ』


ライノは明日までここでお留守番だ。


「おお! そうだ! 明日夕方から領主の使いが来るから、必ず家にいろよ。間違っても山や森になんか行くんじゃないぞ」


正直会いたくない。ブルケの事で質問されたらとんでもないミスをやらかしてしまいそうだ。どっかに隠れてやり過ごせないかな。


「……分かってるんだろうな…特に地下室に隠れていたりしたら……」


ゴクンッ


ヤバい……目がマジだよ


「……はい」


「……わかればいい。一応地下室の件は取り敢えず伏せておいてくれ。あと妖精を扱える事もしばらくは知られない方が良いだろう。慣れるまではな」


そう村長が言うので「妖精使いはあまり良くないクラスなんですか?」と聞いてみると


「妖精使いは非常にレアなクラスなんだ。俺も一人しか知らないしな。それに、普通は誰も気が付きもしない事なんだよ。だから騒ぎ立てない方が良いんだ。水ガエルや火トカゲも確かに凄いが、魔獣ならドラゴンやグリフォンの方が桁違いに強いからな」


何の役に立つのかも分からないのか。微妙だな。せっかくレアアイテムをゲットして華麗なる[妖精使い]として成り上がり伝説かと思ったんだけど、夢幻の如くなりだな。


決して明日の約束を忘れるなよと脅されーーいや念を押された。その後で村の事もボチボチ教えてくれるそうだ。


ちなみに家の掃除や作物の世話は近くのおばさんがしてくれていたらしい。領主と顔を合わせたく無いので明後日くらいにまた来るそうだ。


是非仲良くしておきたいおばさんだ。


そしてーー俺は村長を見送り、ふと倉庫が目に止まった。それは家の壁と同じ漆喰のような壁で覆われている。かなり大きい。なんだか気になるところだが、チラリと大きな蜘蛛のようなモノが動くのが見えた。


「……明日の自分に全てを託そう」


そうして俺は異世界一日目の冒険を終了する決意を固めた。明日領主の使いと村長を巻き込んでやろうと心に誓うのだった。



その時


庭に息急き切って佐倉さんが走り込んできた。


何事だろうか! ハァハァと息の荒い佐倉さんは是非別の機会に別のシチュエーションを希望したかったのだが、目を輝かせ佐倉さんがズイっと両手で差し出してきた。


「斎藤さん! でっかいベーコンを見つけました!」


その両手には巨大なおよそ五キロ位はゆうにあるベーコンが掴まれていた。


「…………あっ! 凄いですね!」


そうか、このベーコンを見せる為に全力でウチまで五十メルを疾走して来たんですね。佐倉さんて本当にエンゲル計数が高そうだな。動物をいっぱい飼いたいのって自分の食用……いやいや、そんな事は無いだろう。佐倉さんは昔フードファイターだっただけなんだろう。そうしよう。


「チュウッ!」


「えっ? あれ? 佐倉さん、その肩に乗っているのは?」


よく見ると佐倉さんの肩にネズミのような小さな生き物がチョコンと乗っていた。非常食にしては頼りない大きさだがーーいや違う。これは…


「リスですか?」

「そうなんです! 今日お友達になりました!」


と目を輝かせている。


うわあ、俺の水ガエルや火トカゲとはだいぶ毛色が違うな。チョロチョロと佐倉さんのお下げ髪で遊んでいるリスは大変愛らしい。さっきから壺の中で不貞腐れているライノにも是非見習って貰いたいものだ。


で、ベーコンか


「じゃあ、少し早いけど晩飯の準備でもしますか」

「はい!」

「チュウッ!」

『出してえ』


俺は佐倉さんの家に向かう事にした。本当に今日は危機一髪の連続だったな。よし、佐倉さんに大変だった事を伝えようとして「佐倉さん、実は……!!!!!」よく見ると佐倉さんの二つあった筈のお下げ髪が一つ無くなっていた。いや、正確にはかなり短くなっているのだ。左側のお下げ髪が無くなっているのだがーー問題はその髪の残りが(焦げてるがな)。


……佐倉さんも色々あった様だ。決して悪い奴らに乱暴されたとか思いつか無いのが異世界に飛ばされたっていう事なのだろう。どうやら佐倉さんも異世界の洗礼を受け突破したという事なのだろうか。やるな佐倉さん。


それでもニコニコと笑いながら佐倉さんはベーコンを発見した武勇伝を嬉しそうに語っている。この人にとってはお下げ髪の一つや二つは何て事ないんだろうな。


俺は負けじと水ガエルと火トカゲとの死闘を教えてあげると、明日は是非に見にいきたいと言う。


さあ、問題は昼に約束した今晩一緒に寝ると言う約束が活きているのがどうかだ。今日一番緊迫する瞬間がやって来る。


『ねええええ! もう出してえよーー!』


煩いライノ


そして俺と佐倉さんはテクテクと家まで歩いた。この異世界のたった一人のお隣さんと。

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