NPCと真実の自分
ただいま旅行から帰ってきました!いやー、ノート忘れて続き書けなかったんですよね。
「おはよう……」
朝、日が昇ってから少しした頃、舞は目を覚ました。慣れないところで眠ったからか、寝癖がひどい。
「ああ、おはよう。」
俺も半ば上の空で返事をする。昨夜は全て考え事に費やしたのだ。途中で来た野犬や兎、鶏は全部肉にした。薪を増やすなどの作業もあって正直疲れたが、そんなことよりも重大なことを発見したかもしれないのだから、気にしていられない。
「肉、食うか?」
「ありがとう。ありがたく頂くよー。」
舞はぺろりと肉を平らげ、新しい肉を火にかけている。……これももしかしたら、俺が思っていることの裏付けかも知れないな。
昨夜、俺は信じがたい仮説を立てた。しかし、それなら常識外れな事の全てに説明がつくのだ。
「……どうしたの?海人くん。さっきからずっと黙ってて怖いよ?」
舞が心配そうに訪ねてくる。俺は「少し考え事をしているだけだ」と返し、引き続き考える。
舞を見てみた。茶色がかった髪は肩までのショートカットで、大きな目、通った鼻、少し小さい口、透き通るような肌。
分かりやすいほどの美少女だ。こいつが『そう』である可能性も考えなければならない。この容姿だって作られたと言われた方が納得できるほどだ。
「舞、話がある。納得できないかも知れないが、聞いてくれ。」
俺は舞にそう切り出すと、昨日立てた仮説を説明していく。
「いいか、舞。この世界はゲームかもしれない。」
舞は意味がわからないという風に固まっている。それもそうだろう。しかし、俺は畳み掛けるように仮説の裏付けを言っていく。
「まず、この世界には風がない。現実では1分に一度は風を感じる筈だが、ここに来てからは一度も風を感じていない。木や草が揺れている様子もない。」
舞は黙っている。
「次に、俺たちは5感のうち、視覚と味覚、嗅覚以外を感じていない。ついでに、疲れや痛みも感じていない。」
舞は黙っている。
「この仮説はこれらを簡単に説明できる。そう、『設定されていないから』だ。簡単な話だろう?そんなゲームはいっぱいあるんだ。特に風なんて、ゴルフゲームにくらいしか設定されていない」
ここに来て、やっと舞が口を開いた。
「つまり、海人くんはこう言いたいってこと?」
舞も、俺が言いたいことを理解したようで、不機嫌そうに喋っている。
「私が、NPCなんじゃないかって。」
「……話が早いな」
つまりはそういうことだ。その可能性は誰にも否定できない。舞本人にも、無論俺にも。いくら過去の記憶があろうと、『そういう風にプログラミングされた』可能性は排除できないのだ。それに関しては俺も一緒だ。俺にもそれは否定できない。
しばらく沈黙が続いた。
「…私は違うよ。」
唐突に舞が口を開いた。
「確かに私は、NPCかも知れない。その可能性は確かにあるよ。でもね……自分だけでも自分を信じてあげないといけないと思うよ。自分を信じないなんて、自分を作った神様への冒涜だよ。」
舞の言葉に俺は衝撃を受けた。そう、それが俺の出来なかったことなのだ。自分を信じる、それができないから人も信じられないのだ。しかし、舞はそれを意図も簡単にやったのだ。
「くくく……くくくくははははは!」
俺は盛大に笑った。こいつは、なんて面白いんだ。それを神への冒涜だと言うなんて。
自分の存在を、他者に委ねるなんて。
「ははは…お前、面白いよ。最高だ!」
俺は初めて、人を信じてみたいと思った。
やっと基本の設定伝えれた…いやー、世界観などはまだ色々ありますけどね。
次回、[レベルと街とゲームマスター]お楽しみに!