発想の逆転と余裕の一手
本日二話目の更新です!がんばらないと…
「ここは…」
気がつくと俺は元の世界へ戻っていた。目の前では舞がギリギリでアメミットを食い止めている。
「やるか…」
ゆっくり、不意打ちで後ろから飛びかかる。そして槍を背中に突き刺した。
「ぐおっ!?」
効いている。刺した槍をぐりぐりとねじこみ、槍に[グラビティ]をかける。槍は基本的に思いので、最大出力なら結構な重さになるはずだ。
「が……ぎいっ!」
どうやらなかなか効いたようで、アメミットは大きく悲鳴をあげた。貫通はしてないが、体の1/3くらいは貫いた。
「小癪な…!」
アメミットが呟き、俺がいる位置、つまり自分の背中を思い切り爪で刺そうとする。
「[限界突破]」
呟き、ジャンプする。爪なんて楽々避けることができた。
「ぐおあっ!」
俺が避けたため、状況が見えないアメミットはただ自分の背中を刺した。
「[エンジンキック]」
強烈な蹴りをアメミットの背中に刺さっていた槍めがけて思い切り叩き込む。
「ぐぎゃあっ!」
槍は貫通し、アメミットの腹の方に落ちる。
「[グラビティ]」
槍に[グラビティ]を掛け、手元に戻す。すぐさま解除し、心臓があると思われる辺りに薄く刺した。
「不意打ちとは卑怯な…」
「そう、発想の転換だ。」
悔しそうなアメミットに冷たく答える。
「真っ向から戦って勝てないなら、不意うちするしかない。これは普通のことだ。」
思えば、戦ってるとき、ほとんどなにも考えていなかった。今はこいつを殺すために頭を回転させていたが、最初は違った。
「お前にチャンスをやろう。あの自分の天秤に乗れ。もしあの羽より重ければ、心臓を串刺しにする。」
そう言って、槍を少しだけ食い込ませ、固定する。これでいつでも[グラビティ]でぶち抜ける。
「分かった…公平にするため、お前は降りてくれ。我だけでないと正常に動作しない」
「もちろんだ」
そう言って、アメミットの背中から降りる。すると、アメミットはずんずんと歩いていき、天秤に飛び乗った。
「[グラビティ]」
少し停止したのでこっそり天秤に[グラビティ]を掛ける。すると、やはり天秤はアメミット側に傾いた。
「馬鹿な…なぜ!」
「さあな。お前も罪人だったってだけだろ。」
しゃあしゃあといい放つ。アメミットは覚悟を決めたように寝転んだ。
「嘘だよ、バーカ。」
そう言って、槍に[グラビティ]を掛ける。アメミットの死に顔は安らかだった。
「ふう、終わった…舞、立てる、か」
終わったあと、舞に手を貸そうと思い、逆に自分が倒れる。そうか…[限界突破]の副作用か…
「お疲れ様。でもどうしたの?海人くん、始めてみるスキル使ってたけど。[限界突破]だっけ?」
「ああ、それは…ちょっとゲームマスターに貰った。」
寝転んだままで答える。行儀は悪いとは思うが、立てないのだからしょうがないだろう。
「ゲームマスター?何、そんなプレゼントくれたの?」
「ああ、ついでに冷静にしてもらったよ。多分あいつか居なかったら死んでたな…いや、居なかったらこんな世界に来てないけど。」
「でさ、海人くん。そもそもなんで倒れてるの?」
「限界とっ…発動したくない。ここまでで分かるだろ?まあ、あれの副作用だ。」
「ふ~ん…」
舞もどこか不思議そうに首をかしげる。可愛いが、それよりやることがある。
「なあ、舞。アメミット回収してくれないか?ギルドに出して金にしよう…」
「すごいね、体が動かないのにその根性…」
「当たり前だろう。俺だって金は大事だ。」
舞はささっとアメミットを回収し、動けない俺に訪ねた。
「ね、他にしてほしいことない?」
「別にないが…あ、そうだ。ギルドまでは戻れるが、ギルドからは担いでいってくれないか?体重は軽くするから。」
「了解。」
「でもどうした?してほしいことはないか、なんて。」
「いや~…助けてもらったぶん、働こうと思って。」
舞ははにかみながら答えた。これを見れただけでもやった価値はあるだろう。
気づけば、もう夕方になっていた。俺はギルドに帰り、文句を言おうと誓った。
次回、「後日談とギルドの反応」お楽しみに!