病気と驚異の健啖家
二話目でまさかの亀投稿。速筆を目指すとは難だったのか。と思います。
異変が起こったのは数時間後だった。
ぐ~。
突然に、俺の腹が鳴った。この知らない環境の中、いつもなら昼飯を食っている時間だ。多分舞もそうだろうが、腹が減っている。
「悪い、流石に『ぐ~』腹が減ってな……うん?お前も腹が減ったか?じゃあ、なにか食うか……」
「い、いえ……少し違いまして……」
「なんだ?腹が減ったんじゃなかったのか?」
「い、いえ……お腹は空きましたけど、海人さんと同じように私も変な病気でして…」
それから舞は説明を始めた。要約するとこうだ。
舞は、『周りの人がやった行動を無意識に真似してしまう』という病気らしい。もちろん、今まで俺のやっていることを真似していなかったことからも分かるように、生理的な現象だけだ。範囲は『見ているところ』だそうだ。言ってしまえば、俺が咳をしようと腹がなろうと、見ていなかったらなにも起こらないのである。ちなみに、なぜ俺が信じているかというと、生理的なことなので、自演は不可能だと思ったからだ。
「俺は精神的、お前は肉体的か…」
これを肉体的と言っていいのかはわかりませんけどね、と舞は微笑んだ。しかし、俺やこいつのような病気はどうすれば発生するのだろうか。俺は珍しくはあるが、たいして不思議でもない。言ってしまえばただの人間不信だ。対して舞は、その病気にどういう意味があるのかさえ分からない。
「海人さん、とにかくお腹が減りましたし、お弁当食べましょう!」
舞が気を使ったのか、食事を薦めてくる。
「ああ、いいが……敬語鬱陶しいよ。やめてくれ。年も変わんないだろ。」
「え……?」
舞が明らかに不思議そうな顔をする。なにがそんなに変だったのだろうか?
「失礼かもしれませんが、海人さん、おいくつですか?」
「16だが?」
「本当ですか!?てっきり、24歳くらいかと……」
かなりショックだ。
「へえ……私と同い年なんですね……だね。」
「まず、制服同じだろ。そこを不思議に思えよ。」
「まあ確かにそうだね……でも、それくらい老け顔………なんでもない。」
「今なんつった……?いや、それより飯食おう。腹が減った。」
「そうだね。私もペコペコだよ。お弁当お弁当……あった!」
そして取り出したるは重箱。こいつは食費をなんだと思っているんだ。
人様の家庭に首を突っ込む意味も勇気も無いので、俺も冷たいコンビニ弁当を開いた。
「頂きま……どうした?」
唐揚げを口に運ぼうとしたところで舞が固まっているのに気づく。心なしかしょんぼりしている気がする。
「お箸忘れた……」
見ると、弁当セットと思われるところのどこにも箸がない。手で食べればいいと思うが、そこは男女の違い……いや、天ぷらが入っているな、これか。
「ほら、使えよ。まだ口も付けてないから安心しろ」
俺が持っていた箸を渡す。すると舞は嬉しそうに「ありがとう」と言い、箸を受け取った。なんだ、意外と素直じゃないか。
「……ふう。ごちそうさまでした。お箸貸してくれてありがとう。」
「……は?」
おかしい、絶対におかしい。食べ初めてからまだ1分もたっていない。重箱を見ると、油の跡や米粒などところどころに食べた跡がある。
つまりこいつは、この量をこの速さで食べたと。化け物かこいつは。
「悪いが、ちょっと待っててくれ。流石に俺はまだ食い終われない。」
制止をかけて食べ進める。このコンビニ弁当も、もう食べれないかもしれないと思うとなんだか寂しいと思った。
次回、[宿探しと価値観の違い]、お楽しみに!