進展した仲と舞の過去
どうも。獅子印です!更新すると、10人ほどの人がすぐに見てくれるのに、ブクマと逆お気に入りユーザが増えないのが謎です…
「ん…」
朝起きると、目の前に舞の顔があった。それを見て、昨日のことを思い出す。そうか、舞に頼まれて一緒に寝たのだったな。…やましいことは無かったぞ。
「あのー…海人くん。起きたのなら離してくれると嬉しいのですが…」
「うおっ!?」
言われて、舞の背中にまわしていた手を離す。俺は舞を抱いて寝ていたようだ。…おいそこ。やらしいことは無かったと言っている。
「あー…悪いな。」
「いいよ。最初に抱きついたの、私だし。」
そういって笑う舞には隈は無い。今日はよく寝れたようだ。
「ほらほら、今日はなにする!?」
「そうだな…今日はゆっくり話さないか?俺たち、あまり互いのことを知らないしな。」
昨日、[もう]死んだり殺したりは嫌だ、と言っていた。つまり、一度経験したことがあるということだ。それがゲームの中なのか、現実なのかは分からないが、多分後者だ。
「まずは俺の過去から話そう。幼稚園のとき…まあ大体予想はつくよな。この病気のせいで苛められていた。まあ、その時からこんな性格だったし、やる方の気持ちも分かるがな。」
あのときはふざけんな、俺が何をした、とか思ってたが、今考えれば何しても楽しくないみたいな顔してるやつは気持ち悪くて当然だ。
「小学生のとき、このままじゃいけないと思って体を鍛え始めた。それと同時に、動体視力や脳の活性化のためのゲームを買い、一日中やっていた。結果は…まあ、ボコボコにした。あのとき、人は強くなれるんだと知ったな。」
まあ、尋常じゃないレベルで鍛えていたからかも知れないが、我流だ。限界はあったが、多人数相手にあっさり勝てた。弱かったな…
「中学になって、一人暮らしを始めた。親とは元々病気のせいで他人のような感覚だったからな。あまり感傷もなかった。まあ、食事は作ってくれていたし、いい親だったとおもうぞ。成績は…まあ、大して勉強はしてないが、3年通して全部70点くらいは取ってたぞ。ああ、その時はあんまり学校に行ってなかったな。」
高校だと出席数の関係で最低限学校には出ていたが、中学は…1/5くらいしか行ってなかったと思う。
「高校は…別に普通だ。友達はいなかったがな。それで、今に至る。ああ、ちなみに、母親は死んだが父親は生きてるぞ。厳しい人だが、俺ともあまり距離を置かずに喋りかけてくれていた、いい人だっ
た。…さ、俺は以上だ。舞。次はお前だ。話してくれ。」
正直、俺の過去に特筆すべき点は無い。それよりこいつだ。何かあるはずなんだ。何か…場合によればここから出られるかもしれない、何かが。
「私?っていっても…ちょっと複雑なんだよね~。それでもいいなら、聞いて。」
舞は明るい雰囲気だが、目は笑っていない。あまり話したくないのかもしれない。
「3歳のときまで私は虐待されてたんだ。ご飯は1日一回、粉ミルクそのままとか、ザラだったよ。ご飯食べれるようになってからは冷蔵庫のきゅうり丸かじりしたり。バイオレンスな生活だったね。ベッドはござ。服は一着、他人からの貰い物。オムツは無し。だから汚れてたんだよ~。まあ、私を拾った人が言ってたことだけどね。」
軽そうに言うが、なかなか最悪だ。そもそも、赤ちゃんにとって粉ミルクそのままで飲むとか、地獄だったんじゃないだろうか。
「それで、その拾った人だけど…古風な人だよ。その印象しか覚えてないんだ。私は、4歳から14歳までの記憶が無いんだよね。ちょうど10年かな。その間に何かあったんだろうけど。」
10年の記憶を失うほどの事件。思い付かない。というかこいつは5年やそこらしか記憶が無いの
か…?
「で、その私を拾ってくれたのが施設の人たち。孤児院みたいなところで暮らしてたんだよ。で、そのうちバイトを初めて、必死で勉強して、今に至るって訳だよ。今はそのお金で一人暮らし。家は私の産みの親が住んでたところがあるよ。あの人失踪したらしいんだよね。」
「…」
壮絶な人生だ。多分、人の生き死にに触れたのはその10年の間だろう。おそらく、その生き死にに関するところの記憶が失われているはずだ。
「それで?10年の間の記憶はないのか?全く?」
「全くではないけど…本当にちょっとだけ。お買い物の記憶とか、お風呂の記憶とか…大きいことは全然覚えてないよ…」
しかし、これでわかった気がする。こいつの戦闘能力についてだ。俺は喧嘩の仕方も分かっているし現実でもそこそこ強かった。多分こいつは俺とは全然違う危なさ、本当に危ないものだったのだろう。
「そうそう。この名前は院長さんがつけてくれたんだよ。私と一緒に置いてあったカードに[my]って書いてあったらしいよ。」
「…お前、外国人なんじゃないのか?」
そんな名前は外国人でもどうかと思うが。
「さ、私の話はこれで終了!私、これでも海人くんには感謝してるんだよ。いっぱい助けてくれたし、優しいし、かっこいいし!」
そんなにべた褒めされては困ってしまう。
「…感謝するのは俺の方だ。」
俺は目一杯の感情を乗せて言う。
「俺は、もともとあの世界にほとんど期待していなかった。それは楽しくなかったということだ。お前と会わなければ、俺は自殺していただろう。しかしお前が居てくれた。俺がすることに付き合ってくれて、俺を心から信じてくれて、世界に期待をしていた。初めてだったんだ。人を信じられたのは。あのときから全てが新鮮だった。人を信じることの気持ちよさを知った。こんな気持ちは初めてだ。舞、ありがとう。これからもこの傲慢男に付き合ってく
れ。」
それだけ言って、俺は頭を下げる。俺と舞の目から同時に涙が流れた。それは、病気のせいだろう。
「……もちろん!喜んで!」
舞は涙を流しながら、最高の笑顔を作ってくれ
た。その時俺の胸は高鳴り、顔が火照るのを感じたのは、きっと…
次回、「初ドラゴンと銃の強さ」お楽しみに!