密林と少女
どうも。獅子印です。初投稿作品ですので、どうか温かい目で見てやってください。
俺は、病気を持っている。それは、生まれたときから付き合っている、もうどうしようもないような病気だ。それは、『人の言っていることを信じられない』というなんとも不思議なものだ。
そのため、人のいない、どこか静かな所へ行きたいと願っていたがしかし!
「密林に行きたいなんて言ってねえよバカーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
空町海人、16年の人生の中で最も大きな声を出した日だった。
「何でこんなことになった…… 朝、何かやったっけな?」
そう言って思い出してみる。
朝、いつものように起きて朝食を作る。両親は俺の病気のため別居中だ。トーストをかじりながら外を眺めた。本当に清々しい朝だった。
その後、制服に着替えて、家を出た。コンビニで弁当を買っていく。感情のこもらない店員の声が煩わしかった。
コンビニを出て行き、学校への道の途中……そう、角に差し掛かったとき、いきなり視界が歪んだ。目が回った時のような感覚だった。そして、目が覚めたらここにいた。以上。
「わかんねえ…… 何もわかんねえ……!」
分からないことが分かった、何て言うつもりはない。分からないのだ、何も。強いて言うなら特に変わった朝でもないことだな。人はそれを『分からないことが分かった』と言うのかもしれないが。
「ん?」
隣で同じ学校と見られる制服の女子が倒れている。俺と同じように連れてこられたのだろうか。
「おーい、あんた、起き…… 」
待てよ?こいつ、もしや俺に襲われたと思うんじゃないか?
俺が女だとして考えてみよう。知らない土地で知らない男に起こされるとする。それをどう考えるか?
……最悪だ。
「……う~ん…」
あ、やばい。こいつ起きそうだ。
「う~ん、まぶし……うん?どこ、ここ……?うわっ!こ、来ないでください!変態!」
「誰が変態だ」
予想通りの反応じゃないか。
「嘘ですっ!(バキューン!)とか、(ズキューン!)とか、男の子は隣に女の子が寝てたらするって聞きました!」
※不適切な言葉があったことをお詫び申し上げます
「それ、女の子が言っていい言葉じゃないだろ」
流石に男の俺が言うのを躊躇う言葉はだめだ。もっとも、そういうのが好きな男は少なからず居るのだろうが。
「え……?じゃあ、私の貞操は無事……?よかった……じゃなくて、ここどこですか!?」
色々忙しい娘だな。まあこんな状況だ、焦るのも分かるが。
「知らないよ。俺も連れてこられた被害者だ」
俺としても帰れるならとっくに帰ってる。多分こいつも分かってて聞いているのだろう、俺に対して少しでも望みをかけて。
「そんなことより、今は食料確保に必死になるべきだろう。お前と俺の鞄に入っている弁当が最後の食料なんだぞ」
「えっ!?」
他にはせいぜいこの辺の木の実くらいだろうな、食えるのは。動物が何かしらいると思うが、あくまで現代っ子の俺に捕まえられるとは思わない。
「というわけで、今日から一時的に協力関係を組もう。一人より二人の方が食料確保の効率が良いことくらい分かるだろう?お前、体力はあるか?」
「まあ、人並み程度にはありますけど……」
「じゃあ、しばらくは食料探しだ。森を抜けることを最初の目標にしよう。お前にも木登りとか罠作りとかしてもらうことになると思うからな。」
「はい……うう……なんでこんなことに……」
少女はやはり嫌そうだった。……おっと、そういえば大切なことを聞き忘れていた。
「そうだ。お前、名前は?」
「天木 舞です。あなたは?」
「俺は空町 海人だ。……お前それ、本名だろうな?」
「本名ですよ!失礼な!」
「悪い。こればっかりは可能性を排除できなくてな。俺は人を信じられない病気なんだ。」
こうして、俺達は協力することになった。しかしこのあと、意外な事実を知ることになるのだが、それはしばらく後に。
海人くんも悪い人ではございません。ちょっと性格がキツイだけです。