憧れの王子様
ジル王子はヘレンより5つ年上だから今年20歳になる筈の美青年だ
スラッと伸びた手足
キラキラ光る短めの金髪
透き通るような白い肌に宝石のような青い瞳はヘレンが昔絵本で読んだ王子様そのもの
ヘレン5歳のあの秋祭りのパレード以来の憧れの存在
まぁ完全に見かけしか知らなかったわけだが片思いでもずっと見ていられるだけで幸せと思えるような存在だったのに…日々ガラガラと夢が崩れ落ちる音が増している気がした
今日は朝から目の前のジル王子が泣き叫びながら涙目でシェリーに抱き付いている
「ゴッゴキゴゴキブリー!!どうしよう?シェリー助けて~!!」
シェリーも涙目で王子に抱き付いている
「いやぁアタシだってこれだけは駄目なのよ~!!」
年上の男2人が朝からゴキブリ如きにぎゃ~ぎゃ~と全く馬鹿らしい光景
ヘレンは最初は余りにもビックリして固まってしまったけれど
残念ながら蓋を開けてみたらこの通りどうやらジル王子はヘタレらしいのである
人見知りも激しくヘレンを見ると未だにオロオロするし人と話をしようとすると噛みまくる
ヘレンが身の回り世話係として王子に紹介され2ヶ月やっとどうにか名前を呼んで貰えるようになったことは嬉しいがとんだガッカリ王子である
ヘレンは溜め息をつきながらスリッパで思いっきりゴキブリを叩いて殺すとあっという間に片付けた
「ヘッ…レンちゃん…すごい…ありありがありが…と…と…う」
ジル王子がまだ震えながらニコッとこちらを見ていた
「このくらい朝飯前ですけど…王子はいつまでシェリーさんとくっついてるんですか?」
噂通りの好い仲なのか?思わず問いただしたくなるが本人達に確認したところ(無礼とは思ったが確認せずにはいられなかった)至って普通に恋愛対象は女の子だと返された
あんまり信じられないけど500歩譲ってノーマルだとすると2人とも縁談の先があるんだろうか?とか余計な心配をしてしまうヘレンなのである
世話係の仕事お給料もいいし身よりもないし10歳からずっと住み込みで頑張ってきたので今更辞める気なんてないけれど行き先不安なのは否めない