憧れの宮殿
競争率500倍超難解試験を史上最年少で突破してキャラメール国の宮殿に遣えることになった
10歳の春
少女ヘレンの瞳は輝いていた
一番格下の下働きだけど一生懸命頑張ったらきっとあの麗しい王子様に逢える
5年前の秋祭りのパレードで一目惚れ以来ずっと憧れてきたこの国の第2王子のジル様☆
いつかあの方の近くで働きたい
それだけの為に辛い仕事も耐え抜いてきた
文武両道そして明るく素直な性格のヘレンだったのでメキメキと成長し15歳となるこの春ついに王宮ジル王子つき世話係の一員になったのだがヘレンを待ち受けていたのは夢をぶち壊す現実だった
「ヘレンヘレンったらぁ早くしなさいよこのグズグズグズッ!!」
自分とたいして年の変わらない上司に布団を引っ剥がされヘレンは仕方なく目を開ける
「シェリーさん今日私非番なんですけど…っていうか乙女の寝室に平然と入って来ないで下さい!!」
「乙女?えっ?誰が!?っていうか非番じゃなくなったのよ~メイド長のマリーが主力だったメイド達も数人引き連れて急に逃げるように辞めちゃったから今人出足りないもの~アンタ急だけど今日から仕事増えたし暫く休めないわよ」
ウインクするシェリーはかなりの美少年なのにオネエ口調の残念な上司である
こんなのが王子の幼なじみで17歳の癖に王子つきの世話係の中で一番地位が上なのだから辞めたくなるのも頷ける
相当優秀なんだろうけどヘレンだって苦手な上司である
まぁ下働きの間ではかなり人気があってファンクラブまであるから嫌いだなんて声を大にしては言えないけれど
態度に出てしまっているのかいつも反発ばかりしていたら最近しっかり目をつけられてしまったようでやたらと構ってくるようになってしまった
かなり厄介である
加えて最近シェリーは王子と恋仲だという噂まで聴いてしまって何だか心が折れそうだった
ずっと憧れてきたジル王子が同性愛者かもなんて知りたくなかった
いや別に同性愛者でも私の憧れてきた気持ちは変わらないけどなんでシェリーみたいないい加減そうな男となんだろう?とかヤキモキしてしまうのだ
憧れて入ってきたあの頃はキラキラしていた宮殿が今は泥沼に見えて仕方ない
山積みの仕事も重なってヘレンは深い溜め息をつくのだった