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3日前のバレンタイン

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/04

「あ、やっべ。日付、書き間違えた」

提出物の日付を書くところに、3日前の日付を書いてしまった。

また連れて行かれる。

そう思った時には、3日前の教室にいた。


日にちを書き間違えると、その日に飛ばされる。

ミスする度に連れて来られるけど、何かがあるわけじゃない。

その日と同じように過ごしていると、1時間くらいで元の日付に戻れる。

これは俺にだけ起こる現象だった。


だからこの日も恙無く過ごせばいいと思っていたんだ。


「チョコがない!」

教室でそう叫んだのは、津辻さんだった。

それを自分の席で見ながら、戻ってきたのがバレンタイン当日だと気づいた。

そうだ、あの日は普段と違っていた。

津辻さんのチョコは見つからないまま、終わったんだった。


「今朝は鞄に入っていたの、せっかく持ってきたのに…」

津辻さんが泣きそうで、クラスのみんなで手分けして探したんだった。


悲しげな津辻さんを見て、3日後である『今日』の津辻さんと重なった。

「金曜日は告白したの?」とクラスの女子に訊かれていた。

それで曖昧に笑って、「チョコないからやめた」と言っていた。


告白って、勇気のいることだよな…。

チョコ持ってくるぐらいだったんだし。

気になるから、ちょっとだけ違う行動してもいいかな。


「忘れ物届けにないか、聞いてくるよ」

俺が立ち上がるとクラスから注目を浴びたが、そのうちの一人、谷くんが手を挙げた。

「じゃあ、オレも行くよ」


「谷くんも、チョコの行方が気になるの?」

誰かがついてくるとは思っていなかったので、つい訊いてみる。

「まあ、忘れ物だったら誰も犯人にならなくていいしな」

「そうだね。でも持っていった人がいたとして、何がしたかったんだろうね」

「何って?」

「義理チョコは女子が配ってくれたから、俺ら貰いはしたじゃん。わざわざ取る理由ってなんだったのかなって」

自分で言いながら、そうだなと思った。

3日前はそこまで考えなかったけど、盗った理由はなんだったんだろう。

しかも鞄の中から取るって、見えたから魔が差したとかでもないよなぁ。


「なかったね」

「だな」

「津辻さん、ガッガリさせちゃうかなぁ」

忘れ物届けに、チョコは一個もなかった。

違う行動をとってみたはいいものの、変わんないし、手がかりはゼロ。

「別に悲しませたかったわけじゃねえしさ」

「まぁ、そうなんだけど。誰かに渡したかったんだろうなと思うと可哀想だなぁ」

「まあ…」

谷くんは歯切れ悪く、パーカーのポケットに手を入れた。

「津辻さん、誰に告るつもりだったんだろ。クラスの奴かな」

「さあ…?」

「教室にもなかったら、どうしよっかぁ」

「そんなに親身になるなんて、関って津辻のこと好きなのか?」

意外なことを言われて、思わず谷くんを見た。

「え、そうなる?」

「違うのか?」

「違うよ。ただあんなにガッカリしてるから、さすがに気の毒だなぁって」

週が明けてもしょんぼりしてるんだぞ、気になるだろ。

「なんだ、違うのか…」

あからさまにホッとしている谷くんを見て、俺は口の端が上がるのを堪えた。

「谷くんは津辻さんのこと、好きなんだね」

「えっ、あ、…うん」

「そっか、じゃあ谷くん的にはチョコ見つからない方がいいのか」

「え」

「津辻さんが誰に告るかわかんないけど、谷くん宛じゃなかったら嫌だもんね」

あれ、もしかしてチョコ取った人も、同じ理由だったりする?

津辻さんの告白、阻止したかったとか?


「…それって、卑怯だよな」

「え?まあ、好きな人の好きな人なんて知りたくないし、仕方ないんじゃない?」

谷くん的に見つかってほしくなくても、それはそれな気がするけど。

「やっぱ、返さなきゃだよな…」

「ん?」

俺が首を傾げると、谷くんはパーカーのポケットから小さい包みを出した。

可愛らしいラッピングのチョコだった。


「これ、オレが津辻の鞄から取ったチョコなんだ…」


「えっ!?」

いたよ犯人、しかもここに。

「津辻が他の奴に渡すって思ったら、つい…」

これは、俺が過去を変えたことになってるな…?

責任取るかぁ。

「それ貸して」

「…?」

「俺が返しとくからさ」


「津辻さん、忘れ物で届いてたよ」

俺が包みを手渡すと、津辻さんは泣きそうに笑った。

それを見て、俺は今日に戻っていた。


「関くん、金曜日はありがとう」

目の前には、『今日』の津辻さんが立っていた。

「これ、お礼のチョコ。3日過ぎたバレンタインだけど」

「え、よかったのに。ありがとう」

「ううん、おかげで告白できたの。関くんのおかげ」

そっか、告白できたんだ。

谷くんは、どうしたかな…。

そのことがチラついた時、津辻さんを呼ぶ声がした。

「津辻、一緒に帰るだろ?」

「谷くん!」

谷くんに近づいていく津辻さんを見て、すぐにわかった。

なんだ、チョコ取る必要なかったんじゃん。

谷くんと目が合うと、気まずそうに笑っていた。


「それにしても関くんが見つけたの、ちょっと怪しかったよね…?」

クラスの女子の囁きが、俺の耳に入った。

あ、そっちに未来変わるの…!?



お読みくださりありがとうございます!毎日投稿35日目!

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