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私、ニセモノ令嬢から帝国皇子の愛され侍女になったようです  作者: 奏多


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21 パーティーの準備

 問題はパーティーの方だ。

 私は正直に、ノエリアに相談した。


「すみません、どのドレスを着たらいいのかお教えいただけないでしょうか……」


 パーティーの同伴について皇太后に報告したその場で、一緒にいたノエリアに切り出したのだ。

 騎士の娘や偽令嬢の経験で選ぶには、帝宮のパーティーについてあまりにも知識がなさすぎるので。

 ノエリアは快く受けてくれた。


「もちろんよ」


 それを聞いていた皇太后も、うなずく。


「任せたわ、ノエリア。クラウス伯爵様も急いで用意したでしょうから、見合う物がなければ私の所持品から、使えそうなドレスや装飾品等を持って行ってもいいわ」


「あ、有難き幸せにございます」


 装飾品の貸し出しまでしてくれるという。

 私はもう、本当にありがたかった。


(普通に出席するよりも、それなりの質とか美しさを考えないといけないだろうから、大丈夫なのか心配だったのよね……)


 こういう時、物語ならドレスを男性側が用意するのだろうけど、ドレスを贈るなんて結婚が決まったと言うような行動だ。

 だからレゼクになんとかしろとは言えない。

 こっそりでも用意したら、誰かに察知されて、また収まりにくいくらいの噂になってしまいそうだし。


 で、見繕ってもらって改造でなんとかできないかと思ったのだ。

 宝飾品も、下手に質素な物にもできないし、変だと、レゼクや皇太后の名前にも傷がつくので困っていたのだ。


 でも、これで大丈夫。


 早速ノエリアと、皇太后がもう休むというので他の侍女達と一緒に、手持ちのドレスを見ることにした。


「あー、これけっこう私好きかもー」


 衣装部屋へ案内すると、エルシーが早速声を上げる。


「あなたの好みの衣装を探す時間じゃないでしょ」


 ルドヴィカがため息をつきつつ、端から順に点検していく。


「あ、たぶんパーティーに着て行けるのは、そこからこっちまでのドレスだと思います」


 私が教えた場所を見ていくノエリアとジェニス。

 二人とも興味深そうな表情だ。


「急ごしらえだけど、こちらは質がよさそうな感じね?」


 ノエリアが見ているのは、後日追加で送られて来たドレスだ。

 本当の令嬢の衣装棚から持ってきたドレスは、お茶会用ぐらいまでしか作っていなかったので、夜会に着て行けるドレスを急遽作らせたと手紙が添えてあった。

 なのでそれなりに布の質も良い物なんだろう。


「こちらはどう? 目立つと思うのだけど」


 ジェニスが見せたのは、夜会用のドレスだ。

 黒のフリルとピンクの布を重ねて縫い合わせてあるデザインで、とても目立ちそう。


「うーん、隣に立つ皇子殿下の存在感には負けなくなると思うけど、いまいちリリのキャラメル色の髪に合うかどうか……。お化粧をしたらいいかしら?」


 難しい顔をしたのはエルシー。


「実際に婚約をするわけではないし……、あのリリに恋してしまった女性を正気に戻すためにやるんでしょう? それなら、女性として綺麗で……騎士の姿とは違う優しい感じがした方がいいのかと思うわ」


 ルドヴィカの評に、他の人もうなずき、ジェニスも納得した。


「では目立つよりも、清楚さ優先ね」


 みんなが息を合わせて、清楚な色や形の物を選び出す。

 そうして意見を言い合いながら選んだのが、三つ。


 白を基調にした、薄ピンクの色を混ぜたドレス。

 青地に金刺繍をほどこした白い布を重ねたドレス。

 ふわっとしたオーガンジーを重ねた紫色のドレス。


 私以外の四人が、頭を突き合わせて唸り出す。


「うーん、いいんだけど」

「もうちょっとこう、リリの初心な感じを出したいっていうか」

「やっぱりちょっとは目立った方がいい!」

「じゃあ、私の衣装も見てみる?」


 どうやら四人のお眼鏡にかなう、最適なデザインの物がなかったようだ。

 ノエリアのドレスを見ることになって、再び全員で移動した。


 ノエリアの部屋はすぐ隣だ。

 私の部屋と似たような作りなので、みんなでさっそく衣装部屋をのぞく。


 やがて、「あっ、これ!」とジェニスが声を上げた。


「どうしたの? ジェニス」


「見て、ルドヴィカ。これならいいんじゃない?」


「あ、ちょうどいいかも」


「エルシーもそう思うわよね? はい、残るはノエリアよ」


 そう聞かれて、ノエリアはドレスを見た時、はっとした表情になった。

 でもそれは一瞬で、すぐにうなずく。


「これがいいと思うわ。お父様がはりきって作ったけれど、袖を通さずにいたのよね。私の淡い髪色だと、どうしてもドレスが浮いちゃう気がして」


 ノエリアが説明しながら手に取って広げたのは、下に薄桃色のシフォンを重ねたスカートの上に、沢山の造花を飾った赤のガウンドレスを重ねた物だ。

 楚々としたノエリアだと、着こなせるだろうけど、もっと他に良い物がありそうだな、という気持ちにもなるかもしれない。

 エルシーがはしゃぎだす。


「ね、これがいいわ! 顔立ちが可愛い系のリリはこれくらい可愛いらしさが強い方が似合うんじゃないかと思うの!」


 そこで私は思い出す。


「あの、私の二の腕とか隠れますかね?」


「にのうで?」


 ノエリア達が不思議そうに聞き返す。

 私はベルスリーブの袖をめくって腕を見せた。

 つい先日も鍛えてきたばかりで、他の令嬢達よりは確実に筋肉がありそうな腕を。


 さすがにこのファンタジーな世界でも、剣を振り回すのにはそれなりの筋肉というものが必要なわけで。

 細腕のままという、不思議状態は無理なのだ。

 それでも、前世よりは素質がある方が筋肉だけに頼らない腕力がありそうな感じだけど。


「わーすっごい、筋肉だ!」


 エルシーがさわさわと腕を触る。


「うーん、ひどく目立つわけじゃないと思うわ。力こぶさえ作らなければ」


 条件を出すジェニスに、ルドヴィカがうなずく。


「でも、気になるなら、スカートと同じシフォンでちょっとだけ袖っぽい感じの物をつけ足しましょうか」


 ノエリアの提案で、そういうことになった。

 とりあえずドレスは決まったけど。

 ちょっとだけ、ノエリアがドレスを見た時の表情が気になったのだった。

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