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私、ニセモノ令嬢から帝国皇子の愛され侍女になったようです  作者: 奏多


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14 侍女の休業日の過ごし方 1

この前の話まで、設定をちょっと変更したことにともなって、内容を修正してる部分があります

「やぁ、ちゃんと続けて来てえらいな」


 土が剥き出しの練兵場で、縦横正方形に整列する騎士達の集団。

 その後ろにこっそりと並んだ私は、楽しげな表情で声を掛けてきた短い灰色の髪のスヴェンに笑みを返した。


「ええまぁ。完全な不在を装うのにちょうどいい居場所ですし。スヴェンさん」


「二日目だけど、体は平気か?」


 斜め右前にいた赤毛のアーステンも振り返る。少し年長の彼は、気遣いも忘れない。


「ありがとうございます。久しぶりでも筋肉痛にはなりませんでした」


 そう言って、彼らと同じ紺碧の制服を着たリリは、肩をすくめてみせる。

 急遽あつらえたものだったが、採寸はしっかりしたので体にぴったりだ。髪は、首元で簡単に結んでいる。


 さて、なぜ私が練兵場なんかにいるのか。

 それは先日の皇子がサロンに乱入した事件のせいだ。


 まぁ予想を裏切らないくらいあっさりと、皇子と私の仲が噂になった。

 その日のお昼までには、何度も何度も、皇太后の住む棟が見える庭なんかに、人がやたらと現れた。

 侍女仲間に沢山の探りの手紙も来た。

 皇太后にまで、「皇子に好きな人ができたの?」みたいな手紙が来る。


 その前にノエリアと対策を練っていた私は、どうしましょうと皇太后や他の侍女と集まって話していたところ……。


 やってきたレゼクがとんでもないことを言い出したのだ。


「数日、騎士見習いのふりをしてほしい」


「は?」


 ノエリアが目を見開いている。

 ジェニスもエルシーもルドヴィカまで、口元を抑えてびっくりしていた。


 そんな中、皇太后が一番驚くんじゃないかと私は思ったのだけど。


「姿を隠させようというのですか? レゼク」


 冷静に尋ねる皇太后に、レゼクがうなずいた。


「部屋に閉じこもらせるのも、よくないのです皇太后陛下。帝宮のことをあまり把握していない状態で、襲撃などされてはもっと良くないでしょう」


「襲撃?」


 そんなことが帝宮で起こるんだろうか、と思ったら口走ってしまった。

 するとレゼクが私の方を向く。


「君には迷惑をかけてしまった。そして君との間の噂が立てば、まず一度は襲撃があるだろうと思ったのだ」


「噂が立ったからですか?」


 問題は、目立つことだけじゃなかったの?

 聖女だってことを隠せればいいと思ってた。


「皇子の結婚相手の座を、自分達の派閥の令嬢にしたがる者は多い。だから排除したい者もいる。過去にデジェー侯爵令嬢も被害にあいかけた」


 デジェー侯爵令嬢ってノエリアのこと?

 思わず振り返ると、彼女はげっそりとした表情をしていた。


「私の時は、普通に毒殺未遂でしたわ。ただ、リリの場合はあのカールに目をつけられた状態でのことでしたから……」


 皇太后が静かな声でその続きを引き取った。


「もしかすると、ウルスラ妃の派閥の令嬢をレゼクに紹介しようとしていたのを、邪魔した形になったということも予想できますわね。そうすると……ノエリアの時よりも直接的な行動に出かねないかも」


 そこでエルシーが頬に手を当てて言う。


「考えてみれば、皇后陛下の棟の毒殺対策はしっかりしていますし、リリは他の方と交流があるわけでもないですから、お茶会に招待してから、適当な令嬢のせいにして毒殺をしようとするのは……あからさますぎてしないかも? と思うんです」


(そうか。私が人と交流がないから、暗殺者を送った方がいいと……)


「でも、どうして騎士見習いのふりですの? 皇子殿下」


 ルドヴィカが驚きからようやく戻って、質問する。


「見習いのふりをしている間は、周囲に騎士がいるので自動的に護衛に囲まれている状態になる。侍女に護衛をつけるよりも自然だ。なにより侍女に護衛をつけると、特別な仲だという評判をさらに増すことになる」


 レゼクは続けて理由を話した。


「あともう一つ。腕が落ちないようにしてもらいたい」


「自分の身を守れるようにしておけ、ということですね」


 レゼクの理由は理解した。

 一石三鳥ぐらいをもくろんでいることも。

 ただ、それが迷惑をかけた相手にするような物ではない、というのは理解していたようだ。


「負担をかける詫びは、改めてほしい物を要求してもらいたい」


「……なんでもいいんですか?」


 欲しい物と言われても、今すぐ思い浮かばない。

 そしてレゼクはすぐにうなずいた。


「国庫を傾ける物でなければな」


 そう言って小さく笑うレゼクに、私は太っ腹だなぁと思った。

 さすが皇子。


 でもそんなレゼクが立ち去った後、ノエリアとルドヴィカが横でこそこそと話している。


「珍しい……」


「本当は、気があるのではと思うほどですわね」


 いやまさか、と私は思う。

 気がある相手への対応って、もっとこう……。


(私にわかるのって、前世の漫画やドラマで読んだ程度のものだったかもしれない……。今世は恋愛どころじゃなかったし。だから……自分じゃわからないかも)


 早々に白旗を上げた私は、考えるのをやめた。

 だってほら、聖女の能力をあてにされてるからなのは間違いないしね。

 おかげで酷いことはされないだろうから。


 あと……騎士に混じって練習するとか、興味がある。

 ずっと貴族令嬢らしい行動しかしてないせいで、これからもとっさの時に大丈夫なのか不安で。

 自分の意思で、ちゃんと剣を扱えるのか確認しておきたい。


 というわけで、訓練に昨日から参加しているのだ。

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