表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未定世界の知り方を  作者: むち神
第一章 【出入り】
8/108

7.こういう毎日は続いていく

 問題が起きつつも日々は止まらずに過ぎていく、入学から一か月弱ほど経った。


 ちょっとした問題は起きても変わったことは特にない。授業を受けて自身の力について考えては聞いてを繰り返しているだけではある。あの帰り道に話しかけたオウキさんにもよく話しかけてみるのだが。


「特異か・・・。制御できていると言える物ではないからな。気を付けているだけだ」


「気をつけるってなにを?」


「・・・毒だと言っただろう。唾液も毒になる」


 ん?それがなんだというのだろう。唾液・・・口の中の体液のことだよね。毒だとしても自分には効果ないみたいだし。人に触れるようなこともないだろうに


「なら・・・大丈夫だよ...ね?」


「話すときに声を出しすぎると唾液が飛ぶ。それが、目にあたると大変だろう」


「そうなんだ。飛んでる所見たことないけど」


「気にしてない。それか、怒鳴り声をあげている人と会わなかったんじゃないか?」


 そういうことなのか。たしかに、聞いたことはあっても見たことは...あったかな?忘れた。


「俺は気を付けてる」


 だから、口数が少ないのかな?と思ったが、最近話していて普通なのでそういうことでもないのかもしれないが・・・。


 そんな感じで話しても制御できるような代物ではなさそうな気がしてきているのだが、本当になんなのだろうかと考えるこの頃である。ネルならなにか知ってるのではと期待していたのだが、特異体質ではないので詳しくは知らなかった。だが、昨日ルキに話しかけると。


「特異?そうねえ・・・。私は制御してはいるけど・・・。」


「え!?制御できる人がいるんだ!」


「そうよ...!!素晴らしいと思わなくて?王女だからね!」


 王女というものはすごいのだろう。ここら辺の広い土地を納めている人たちの親のような存在なのだから優秀であって当然といった所だろうか。


「すごーい」


「感情こもってなくて?」


「素晴らしいと思っているよ」

「それでそれで、どうやって制御してるの?」


「どうやって...。」


 悩まし気に頭を俯かせて顎に片手をあてながら唸る。


「感覚で・・・としか説明の仕様がないかもしれませんわ...」


「感覚...」


「手足をどうやって動かしているの?はよく魔法などの説明しにくいことに使われる言葉なのだけれども、そうとしか言えないわ」


 わからない...。だけれど、ルキさんは真剣に聞いたら答えてくれる。答えてくれたのだから、まずはそこを感謝しないとだよね。


「ありがとう。考えてみるよ」


「いえ、たいしたことは言っていませんわ」


 昨日そういった会話があった。初めての手がかりかもしれない。なにもわからないから手足の様に扱えるかもしれないに変わったのだ。大きな変化だと思っておこう。


――ん?やっぱりなにか忘れてないだろうか。


――まあ、いいか。


 そんなことを考えているといつもの広い場所、この間やっと知ったのだがここは魔法訓練場という名称がついているらしい。名前は聞いていたのだが、魔法以外の行事でも使っていたのでここのことだとは知らなかった。


「集まりましたね。では今日は、原初魔法および治癒魔法を教えていきます」


「治癒魔法と原初魔法は似ているので違いを話します。原初魔法は魔力自体を使った魔法、治癒魔法は本人の魔力を使って染み込ませる。ここまでは原初魔法のように魔力を()()、そのあとに相手の身体の悪い部分を補う身体を()()。二つを合わせるので別に分けられているのです」


「ただ、勘違いしないようにしていただきたいのが、原初魔法の方が難しいということです」


「覚え方としては、体内の魔力よりも外の魔力は操るのが難しいと覚えてほしいのですが、相手の体内魔力は外の魔力に壁を挟んだ体内魔力なので、さらに難しい。だからこそ、回復魔法は自分もしくは、()()()()()相手にしか使えません。」


「では、各自やっていきましょうか。原初魔法は無理でも治癒魔法は頑張って覚えてみてください。かならず役に立ちますよ」


 説明が終わったらいつも通り少しだけ離れる生徒たち。

 ただ最初と違う点がバラバラではなく固まって入り口近くから真ん中あたりに移動しているということだ。


 最初に口を開いたのはネルーロ。


「どうしよっか」


「そうですね。まず、どんなものかわからないと使えるものも使えないでしょう。先生に見せてもらえると思ったのですが、使えないのでしょうか?」


 スイラスが方針を言葉にしながら思考している。口にした疑問に答えておく。


「使えないってことはないと思うよ?少なくとも回復魔法はかなりの腕前らしいよ」


 回復魔法は得意って言っていたもんね。でも、たしかに原初魔法なるものは見た記憶はないけど、使えるっぽい言動だった気がする...


 マロイト・セイズが片手を上げながら、前に出てくる。


「私は、治癒魔法なら使えるよ~。得意ってわけではないけど」


「そういうことか?なら、原初魔法が使える人もいるのでは?」


 ネルーロが肩より下の前に右手を出し、手のひらを皆に見せながら


「僕は治癒も原初魔法も使えるよ?」


 ルキ・ストライトが驚きの声を上げる


「え!?嘘でしょ。私、治癒魔法が使えるぐらいなのに」


 おぉ、王女でも驚くくらいなのだから相当優秀ってことなのだろう。なんて呑気なことを考えてる。ユイトだが。

 実際王女が考えていることは少し違う。


 学園の前から王族としての教育で魔法を習って少しの回復魔法まで使えるようになったのに、それを・・・。貴族...じゃないって話よね。仮に貴族だったとしても、王族よりいい教育を受けているとは思えない。受けていたとしても、優秀な人が何年もかけて覚える程、原初魔法は難しいって話だし...。


「たまたま才能でもあったのかもね、まあ、外にある魔力を体内の魔力を操るようにって感じだよ。回復魔法が使える人ならできるんじゃないかな?――こんなふうに」


 ネルの周囲に突風が起こり、足元の埃が空中に舞い上がる。


「今のは魔力を大量に移動させただけだけれどね、見えないから参考にならなそうかな」


「なら、物体を操れないかしら、見えるわけではないけれども、わかりやすくはあるんじゃない?」


 会話が聞こえていたんだろう。ちょうど、クロイトが球体を六人分持って近づいてくる。


「これを使ってください」


 球体を手から地面に落として少し跳ねてまた落ちるを繰り返して、止まる。


「わかりました」


 また、風が起こる。先ほどよりは小さな風で髪を靡かせる。

 すると、ボールがゆっくりと空中に浮かんで止まる。


「まあ、このくらいかな、あんまり大きいものや重いものは難しいんだけどね」


 補足するかのようにクロイトが説明を付け加える。


「それと、魔力での攻撃にも使えるのですが、相手を倒す程の強い力を出すのはさらに難しいですよ」


 納得した。これはたしかに、想像しにくい気がする。


「ただ、外の魔力を内の魔力で操る。誘導するといってもいいのですが、体内魔力消費が少なく燃費がいいんです。普段の使い道は、あるようでないのですが...。だからこそ、未だに難しいとされてるのかもしれませんね」


 そんなこんなで、魔法の練習を再開し始めた一同。


――僕もやるか


 さて、攻撃魔法の練習ではうまくいっていた。あれと同じようにやるだけだ。とはいえ、原初魔法の場合なにを唱えればいいのかが不明だ。

 見えない。風。持ち上げる。フワっと。もうよくわかんないな。

 こういう時に自分の知識のなさが...。

 フワっとウインド。フールウインドとかでいいか語呂がいいし。自分にお似合いだろう。


 想像しろ。物を歩かずに動かせるなら楽になることも多いはずだ。自分も浮かせれるなら空も飛べるのではないか?おぉ...いいことを思いついた。できるとは限らないけどね。


――フールウインド...!


 あれ?できた...?トンットンッとリズムよく目の前の球体が跳ねている。人の身長よりも高く。

 てことは、高い位置まで浮いたってことか・・・


 「とんでもないですね。まさか、原初魔法を使えるとは・・・」


 クロイトの言葉に呼応するかのように面々も話し始める。


 「いやいや、使えるどころか天井近くまで浮かすなんて途轍もないことだよ」


 「いや、浮かすというより飛びあげたという方が正しいほど速くないですか!?」


 「え~こんなこと本当にあるんだねぇ」


 オウキも声をあげないものの驚いてはいるようだ。この中だと一番反応が小さいが。


 その中で一際、大きな驚きを見せるのはルキ・ストライト。


――嘘でしょう!?たしかに、原初魔法は才能も関係していると聞きましたが...!?


 それにしてもである、結局の所、才能だけではなく練度がなければ話にすらならない。難しいと言われる原因はそういうことなのだ。自身以外の魔力を操る想像など人間にできるわけがないと何度嘆いたことか。それでも、立場上使える人間をたくさん見てきた以上できるのだと納得させながら生きてきたが・・・。


 一度目にうまくいく人間などいるわけない。ましてや、あれだけの威力で発動できることなどない。これだけは絶対なはずだったのだ...!


 「え~と、なにか間違えたの?僕」


 この事態がこの国に広まっていくのも時間の問題である。いずれ、広まった後どうなるのかそれは...。近い将来にわかるのだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ