62.そっと
しばらく部屋で仮眠を取っていると再度部屋がノックされる。
――今度は・・・誰だろう・・・。
そこまで眠気がなかったからか、目覚めよく起きれたので緩慢とした動きではあるが、比較的素早く動き扉まで近づいて開ける。
「わっ!」
信じられないといった様子のネルがこちらを見て固まっていた。
「どうしたの」
「いや、まさか一回目で出てくるなんて思わなかったからさ、いつもは三、四回目からの声かけでやっと動きがあるくらいだったのに・・・大きくなったってことかな?」
「・・・たまたまだよ」
たしかに、目覚めが悪いこともあるけど・・・良い時だってあるだろう。ネルがノックする時は寝起き悪いことが多いが、深夜が多かったのだから誰でも同じなんじゃないかと思う。
「よかったよ。無事で」
「うん・・・。でも、エレディアナさんと―――」
「聞いたよ。クロイト先生を探しに行くんだよね?」
「え?う、うん。ネルもやっぱりくるの?」
「行くよ!ここまで一緒にいるのに行かないなんてことないよ!」
「そうだよね」
「出発はいつにするの?明日?」
「う~ん、皆が良いならそうしようかな疲れもとれたからね」
「みんな?」
「あれ、聞いてない?マロさんが一緒に行ってくれるって」
「え?どうして?」
「どうして・・・。優しいから?」
「優しいだけで、こんな時に人探しに行く人はなかなかいないんじゃないかな?」
う~ん?言わんとすることはわかるけど・・・それ以外に理由なんてあるのだろうか、あったとしても別に関係がない気もするし・・・それに・・・
「ネルも来るんでしょ?」
「ほら、僕はその前から一緒だったからね!また別だよ!」
そうかなー。国から逃げる人についてくるのも変だって話になるんじゃないかな。
「まあ、とりあえず明日だね。もう夜だから、今日は部屋に戻るよ。起こしてごめんね」
スッと横を向いて自身の部屋だろう場所へと移動し始める。離れた所で一瞬立ち止まったが、そのまま戻っていった。
所々に疲れが見えた。わかりずらかったが寝不足なのかもしれない。夜中に会いに来たのも心配してくれていたからだろうか。
意外と照れ屋な一面もあるよね。
扉を閉めてベットに戻る。眠気はそこまでないが寝るのは好きだ。眠気が来てくれるまでゆっくりと過ごすことにした。
――翌日――
朝に起きて朝食を食べた後、宿屋の主人らしき人にマロさんの居場所を尋ねるが知らないと言われた。ネルが泊っている部屋を尋ねても、今はどんな名前の人がどこにいるかはわからないんだ。とのことだったので、仕方なく自分の部屋に戻った。
外に出る選択肢もあったけど、今日出発する予定なのだ。なら、ネルやマロさんが訪ねて来た時に部屋に居た方が良いと判断した。
実際、クロイトさんが生きているかどうかはわからない。なにもなかったなら今も一緒にいるはずだ。何かあったのだろう。でも、可能性があるのに諦めるなんて選択肢はない。生きていて欲しい。
薄情だろうか・・・。知らない人があれだけ死んでいたのに、心配するのは知り合いばかり。人の生死を肌で感じていた時は、たとえ見知らぬ人だとしても込み上げてくる何かがあったが、今はない。
知り合いの安否も心配はあるが焦りはない。時間の経過で落ち着いたからなのかもしれない。
謎の安心感とでも呼べばいいのか、生きているような気もするのだから、おかしな話だろう。
――マロさんは方向がわかるみたいなこと言ってた・・・よね?
――なら、生きている?
いや・・・近くまで行けば方角くらいはわかるかもしれない。という意味なのだろう。
頭がスッキリしていて、時間があるせいか色々と考えすぎてしまう。そろそろ別のことで時間を潰そうとしていると扉が叩かれる。
「起きてますか~」
マロさんだろう。
「起きてるよ」
今回はすんなりと鍵の開いた扉を開けて入ってくる。
「おはよ~よく眠れたかな」
「かなりスッキリしたよ。あ、今日出発しようかなって思ってるんだ。大丈夫かな?」
「おぉ~もちろんいいよ。でも、ネルちゃんは大丈夫なのかな?」
「一応、言っといたから大丈夫だとは思うけど、部屋がわからなくて聞いてはないね」
そういえば、返事を貰ってなかったような・・・。それに、疲れてそうだったから寝させた方がいいだろう。出発は昼からにしてもいいんだけど、朝からの方が移動時間を長くできるからいいんだよね。
「あ~部屋ならわかるよ?行ってみる?」
「疲れてそうだったから・・・昼からでもいいけど・・・」
「それも~含めて行ってみようよ」
まあ・・・大きな音を出さなければいいか。
そのまま、マロさんの案内でネルの部屋を尋ねる。扉の前で小さくノックするが返事がない。
「やっぱり寝てるんだよ。ネルが起きたらにしよう」
「そうだね~」
立ち去ろうとすると、部屋から音が聞こえ始め扉が開く。
「お、おはよう」
ボサボサの髪でこちらを幽鬼のように見つめながら一言。
「・・・僕も行くからね?」
「はい」
置いてかないよ・・・。




