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未定世界の知り方を  作者: むち神
第三章 【沼】
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58.そう・・・?

 ・・・重たい瞼を開ける。


 身体が上下に揺られて、見える景色が少しずつ動いている。肉体の感覚を取り戻し始めてから気づく。――暖かい


 誰かに背負われている。――クロイト・・・さん?

 

 僕の微かな口の動きに気づいたのか話しかけてくる。


「目が覚めたか...」


――クロイトさんじゃない...?


「そのままでいい」


 知り合いではなかったことに少し身構えた。それを、背から降りようとしていると勘違いしたのだろう。

 よく辺りを観察してみると、騎士達五人が沈黙しながらトボトボと歩いていた。僕を背負っている人もいれて六人。あの時、増援に来てくれた人達の・・・生き残り。


 身体が思うように動かない。疲れ果てているせいだろう。けど、今まで時間で回復していったはずなのに、一時間くらい経っても動かせる気がしない。

 ただ、眠っていたせいか頭は冴えている。どこに行くのだろうか、クロイトさんは、エレディアナ・・・さんは・・・。

 伝えなければならないのに・・・。


 僕の僅かな動きすら見えているかのように背負ってくれている人が話し始めた。――背中で触れているからわかるのかな


「君は七日も眠っていたんだ。探すのに苦労したが、見つけた時には一人で倒れていた」


――七日・・・?そんなに眠れる人がいるのか・・・?


――しかも・・・一人?


 疑問はあるが、声は出せない。クロイトさんはどこに行ったのだろう。だめだ・・・。眠気が...。


 首を動かせないせいで、後ろまで見えなかった。なぜか、背後に誰かいるような気がした。



 瞼の裏が明るい。眩しさから目を開く。


「目が覚めたか、体調はどうだ?食べなくて平気なのか?」


 木陰で休んでいるようだった。木の根元を背に座らされていた。


「はい。大丈夫です」


 口が動いた。


「おぉ、そうか!よかった」


 喜んでくれている。それだけで、この人の人柄が優しそうだなと思ってしまう。甘いだろうか。


「ご迷惑をおかけしました」


 身体までは万全とはいかなかった。首を少しだけでも下げておく。


「おかしなことを。子供でありながら勇ましく戦っていた姿は今でも目に焼き付いている。不甲斐ない我らの尻拭いをさせてしまってすまない」


 あぁ、鎧は脱がされている。いや、消えたのか?まあ、とにかく謝られるようなことはしていないと思う。


「僕はなにもできなかったです」


「そんなことはな――」


「エレディアナさんが死にました」


 否定してくれようとしていたが、被せて止める。エレディアナさんが亡くなったことを伝えなければ、目の前で僕を庇って死んだのだ。


「僕を助けてくれて・・・僕が強ければ、死にませんでした」


 やはり・・・この人は優しい。目が狼狽して戸惑いを隠せていない。それでも、こちらのためか平静を装おうとしている気がするのだ。


「・・・そうだったのか。辛い報告をさせてしまったな...」


 と言ってくれる。違うだろう。責められてもいいはずだ。責められるはずなのに、


「気にしなくていいんだ。君は騎士じゃない。責任は君にはないんだ。絶対に」


 肩に力強く手を置いて、目から動揺を消しながら視線を合わせてそう言った。励ましのためかとも思ったが、目から本音だと。建前なんかではないと感じる。だからこそ、


「ありがとうございます...」


 お礼を言うしかなかった。優しさへの向き合い方が苦手になってきたのかもしれない。それ以外になんと言えばよかったのか。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はギルサルだ。騎士団二番隊の副隊長をしている」


 物悲しい雰囲気を作り替えようと一から自己紹介しようということだろう。


「ユイトです」


 名前以外に言えることがなかった・・・。会話を拒否したように見えないで欲しいと思いなんとか繋げる。


「...どこに行くんですか?」


「もちろん、避難民と合流する。報告しなければならないことは山積みだからな」


 大変だなと思う。悲しい報告だろうと怪我をしていてもやらなければならないことがあるというのは・・・。


「僕も報告しないと・・・」


「ん~その必要はないよ」


 誰だろう。背後から女性の声がする。聞いたことあるような・・・。


 背もたれの木の裏から顔を出す。桃色の髪の毛・・・マロさんであった。


「・・・!どうして?」


「私が~説明するからね」


 そっちではない。いや、そっちもだけど。


「マロさんがなんでここにいるの?」


 いや、ニコニコされてもわからないよ。喋ってほしい。と思っていると、ギルサルさんが説明してくれた。


「俺たちが君を見つけた後に合流した。別の方向から逃げて来たそうだ」


「そう~私のセイズ領が北だったから、襲われて逃げてたんだよ~」


 あー。侯爵?だったね。国からの領地みたいなのがあって、治めていたのが北の街・・・?ってことかな。なら・・・


「そう・・・ごめんね。なにも守れなかったよ」


「大丈夫。ユイトは悪くないんだから」


 マロさんまでそう言ってくれる。どこまで皆に優しくされたら変われるのだろうか、僕は・・・。マロ・・・そうだ、下の名前はなんて言うんだろう。この機会に聞いてみようと。


「マロさんって名――」


「マロさんでいいよ。名前聞こえてなかったんだよね~。あんまり好きじゃないから気にしないで~」


 ん?まあ、マロさんがそういうのなら良いはず・・・だよね?


 そのまま、一行は合流を目指す。南西へ・・・


 

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