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未定世界の知り方を  作者: むち神
第二章 【旅は道連れ】
41/110

39.一片の

 決意を胸に組合へと報酬を受け取りに行った後、武具屋へと向かう。場所はネルが調べておいてくれた。おすすめの武具屋が南の少し西あたりにあるとのこと。


 色々と巡りながら向かった頃には昼過ぎ。古めかしさを感じる店に二人で入る。お客さんは僕達だけだった。店の中には誰もおらず、武器や防具が並んでいる。盗まれないのだろうか・・・。

 武具の良し悪しなんてわからない。店員に聞いてみようと思っていたのだ。カウンターで大きな声で呼んでみる。


「誰かいませんかー」


「あーいらっしゃい」


 小柄で筋肉質な店員が出てきた。少し気だるげである。


「武器と防具を買いたいんですけど、よくわからなくて・・・おすすめはありますか?」


「予算はどんなもんなんだ」


 とにかく沢山あることを伝える。


「ならーミスリルのセットでいいだろう。防具は・・・身体ちいせえな。特注で作るしかない」


 そういって、店にあるミスリルの剣を渡してくれる。――すごく軽い!


 適当かと思ったが、ちょうど持ちやすいなと思っていた魔法で作り出した剣と同じ大きさだったのだ。――だが、まずい。防具・・・。


「特注・・・時間かかりますか?」


「そうさなー予定もあるから二日ってとこだろう」


 こ、困った。困ったのでネルの顔を窺うが・・・しまった。という顔をしていた。忘れていたのだろう。僕のことなのだから当然だ。


「なんとか、なりませんか・・・」


 明日の大会には間に合うように調整はしていたが・・・。防具はすぐに買える物だと思っていた。


「う~ん、鉄なら今日中にできるぞ」


「お願いしますッ!」


 どれくらいの防御力かはわからない。質は落ちてしまうのは間違いないだろうが着ておいた方がいいだろう。防具の大切さは森で習った。


「兜もお願いします!」


「あいよ。上付きとは珍しいな」


 そのまま、奥へと消えて行った。――え?いつまで、待ってればいいのかな。


 すぐに出てきて、防具を受け取る。だが、色が・・・黒?鉄なのに?


「ふっふっふ。実は注文して作っておいて貰ったんだよ!採寸も寝てる間にやっておいたからね!これで間に合うよ!」


 ネルが誇らしげに発表する。――・・・え?


「そもそも、帰って来てからだと間に合わないからね。ミスリルを黒塗りして貰って作っておいたんだよ!自分で買いたい想いもあるだろうから、武器はユイトが買って。防具はプレゼントだよ!」


――贈り物・・・?


 防具が間に合わない残念な気持ちからサプライズを受けた驚きでごちゃまぜになって固まってしまう。――ま、まずはお礼だろう。


「あ、ありがとう」

 

 なら、あの店員さんの態度も・・・演技?


「ほら、さっさと払いな。防具の代金は貰ってるから武器だけな」


 違った。通常運転のようだ。サプライズを手伝ってくれてはいたのだろう。


「あ、はい」


 大きくなった財布から金貨を二百枚と少し渡す。ミスリルは軽くて丈夫とのこと、高級品である。

 受け取った防具と剣を試着して欠陥がないことを確認してから店を出る。


「あの人、職人気質で腕はかなり良いって聞いたんだ。点検はしっかりしてたからいい物ができたと思うよ?」


「まさか、注文してたなんてね・・・ありがとねネル。間に合わない所だったよ」


「嫌がれるかもと考えたけど、喜んでもらえたならよかったな」


 フフッと微笑む。

 貰ってばかりは申し訳ないから自分で買おうとしてただけなのだ。それに今回は作製の時間なんて考えてなかった。危なかったから助かった。


「ネルには助けられてばかりだな・・・僕も頑張るよ」


「一緒にいるだけで助かることもあるんだよ?それに、楽しいからね」


 本当にそうなのだろうか。でも、楽しんでくれているのなら良かった。


 

 それからは、久しぶりにユウジさんの家へと帰宅する。元気だろうか。


「おかえりなさいませ」


 セルドラさんが出迎えてくれた。夜中で外は見えにくいだろうによく帰ってきたのがわかったね。


「ただいま帰りました。ユウジさんはいますか?」


「はい、お帰りになられてますよ」


 リビングへと向かう。


「おぉ!よかった。間に合わないかと心配した。おかえり」


「遅れないように帰ってきたけど、少し夢中になりすぎたよ」


 軽い挨拶を交わしてから、一通りの情報共有を済ます。


「いいな...。お互い順調と言える。まあ、とにかくは明日の武闘大会だな・・・」


 どうやら、ユウジさんも円滑に進んでいるらしい。よくはわかっていない。


「頑張ってみるよ。優勝できるように」


 お?っとユウジは変化を感じ取る。


「自信なさげだったのに、この期間で相当良い刺激になったみたいだな」


 経験は積めるだけ積んだのだ。これで勝てないなら諦めもつく。


「いい経験だったよ。防具も貰ったからね」


 ネルに視線を向けて笑いかける。



 明日は武闘大会だ。引き締めて眠ろう。やれることはやったのだから――


 

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