33.意気揚々
――翌日――
馬を借りるのに手間はかからなかった。ユウジの知り合いと認知されていたのが関係しているのかもしれない。馬車を借りていた大商会で借りた後。北ではなく、同じ東から出てから北へと向かうことにした。
理由は、商会の位置が東だったこと、ユウジの家が東側で近かったこと、道がわかりやすかったこと。要は楽だったからである。
そこから、二日掛けて北の街。ドラノードへとやってきた。宿は門番に聞いてから向かうのがいつものパターンだ。ただ、今回も門番を困らせてしまった。人族・・・通していいはずだ。とか、珍しいことだと。でも、悪態をつくわけでもなく親切なのは変わらない。おそらく、僕は獣人が嫌いじゃないのだろう。人間も良い人が多いのはもちろん知っている。――関わり方なのだ。
宿に荷物を置いてからネルと一緒に出掛ける。街の手続きをする場所は中央に作られているのが多いとのことで、中心へと向かう。受付の法則と同じことだろう。
中心へと近づいてから付近にいた人に大道芸の許可を貰える場所を教えてもらう。
その役所で、許可はスムーズに貰えたので特定の広い場所へと移動をする。
僕は、ネルのボディーガード?みたいなことをしている。なにも役割がないのはね・・・。
そうして、最高のショーが始まった。一度見た、巨大な龍を作り出して、まず、観客の度肝を抜く。龍の安全性を披露してから皆の理解が得られたという瞬間に巨大な龍を爆発...。のような演出で分裂させて、小さな龍を観客の周囲へと飛ばす。これには、冷や汗がでたり、驚いてしまった者もいたが時間経過で受け入れられる。
「かわいい~~~!!」「さ、触ってもいい...のか?....」
無邪気に、慎重に触れ合う観客にネルが許可を出す。
「もちろん!!是非とも触れ合ってください!!」
許可が出たことで遠慮がなくなり触れ合いながら全員で一通り楽しんだと見たタイミングで――
小さな龍を上昇させて水の花火を開かせる。
一瞬の静寂...からの大喝采、歓喜の声。賞賛の声が飛び交う。ついでに...お金も舞う・・・。
龍を作り出す芸人。隣に佇む、兜の少年の噂はさらに広がる――
――あれが、噂の『龍神の遣い』だったのだと、知るのはまだ先の話であった。
「完璧だったね。成功できてよかった」
安堵を言葉にすることで、ネルを緊張から解き放とうとする。もしかしたら、緊張してたのは僕だけかも知れないが。
「よかったよかった。ちょろいお金稼ぎだよ」
悪ぶってそんなことを言う。照れているのかもしれない。
「次の街でもやるの?ん?次の街ってあるんだよね?」
「あるよ。けど、最短でいくなら・・・村のほうが近いけど、どうする?」
「ネルの役目もあるからね、街に向かおうよ。間に合うよね?」
「それは、大丈夫だよ。時間はトラブルがあっても余るだろうからね」
次の道順を決めてから、ドラノードの街を少し堪能して宿で就寝。北から街を出立して北北東。セヴゼルへと向かう。
四日の旅を終えて、セヴゼルに到着する。道中の魔物はもういいだろう・・・。逸れの魔物がちょくちょく出てきた。だが、馬車旅よりも速度が速いお陰なのだろうか。襲ってくる魔物は少なく済んだことは快報だろう。野宿にも慣れたものだ。
セヴゼルは街というより町だった。人は少なめだが少なすぎることはない。魔物対策なのだろう。防衛は万全な印象を受けた。
宿を聞いて、宿に向かう。部屋を取ってから今日は休みにすることにした。慣れても疲れがなくなることはない。溜まっていた疲労をなくすため町で食事を取り、明日に活動を開始しようとなった。
――翌日――
朝起きてから僕はネルと一緒にゼヴゼルの北へ向かう。町の外が見えてきたあたりで別れることとなる。
「じゃあ、行ってくるね」
「気を付けてね」
ネルは大道芸をするために、僕は魔物討伐へと解散する。ネルは一緒にやろうとは言っていたが、魔物討伐は自分を強くするためでもあるのだ。それに、これ以上ネルの邪魔をしたくはない。ここまで居てくれるだけでありがたい話なのだ。最たる理由は、樹海が近いことだけどね。
森に入るとさっそく遭遇する。――あれは・・・ロットバニー。Dランクだったかな
背後に回る。そろりそろりと近づいてから飛び掛かろうとする前に――
ロットバニーが勢いよく振り返り。僕とは反対の方向へと走り出した。
――気づかれた?なんで・・・
原因を考えてみる。音?気配・・・。はさすがに・・・。殺気?匂い?
想像は膨らむ。今までは魔物が正面から襲い掛かってくることばかりであった。逃げる魔物は追わなかったのだ。
逃げた方向へと追いかける。・・・同一個体かはわからないが、発見できた。
今度はなるべく、音を立てず、ゆっくりと近づく・・・がこれも失敗に終わる。
なにが・・・。匂いだとするなら、消し方なんてわからない。
唸り声を出しながら熟考する。――現状できるのはこれしかない。
考えられる可能性は無数にあるだろう。思いついた原因も何個もある。だが、解決方法など知らないのだ。その中で解決できて・・・尚且つ、思い至った理由は・・・。
そのまま、追いかける。ロットバニーが三匹集まっていた。同じく近づく、今度は、茂みや足元の小枝、石に気を向けて。背後に迫り一匹に狙いを定めて作り出した黒色ナイフを投げつけると・・・命中した。投擲の技術が未熟だったせいだろう。絶命はしなかったが当てれる距離までは近づくことができたのだ。
――当たった!やっぱり、聞こえるかどうかもわからないほどの小さな音だった。
音は出していないと思っていたが、地面の石を踏みつける音、茂みに擦れる音。野生の弱い魔物でなければ気づけないような極僅かな違和感。もはや、気配と呼べる代物に気づいていたのだろう。
逃げる魔物の討伐も森での様々な音を発生させかねない地形での狩猟も初めてなのだ。ユイトは決意する。――来て良かったかもしれない。ここで学べることも多い。
そのまま、意気揚々と森の中へと消え去っていった――




