1.これから説明をしてもらう
住んでいた建物から連れ出され、ちょっとした確認事項のような会話をしながら、クロイトさんの隣を歩いている。ゆっくりと僕の歩行速度に合わせているからなのか長い道のりを歩き続ける。幅広い通りにとてもたくさんの人が行き交う。通りの中央は馬車と呼ばれる人よりも速い乗り物が駆け抜けていく。
こんなに長く歩くのは初めての経験だが疲れはない。
だが、休憩がてら近くの店。食べ物を売っているらしい建造物に二人で入り、座りながら食事を取る。生憎、人混みに酔ったせいなのか、食事の善し悪しがわからないまま食べ終わってしまう。美味しかったと思っておく。
再び歩き始めること計三時間――
「ここがあなたが通うライト学園です」
たしかに、今まで歩いてきたどの建物よりも大きい、城のような建物がそこにはあった。
「なにをする所なの」
「失礼、学園とは色々なことを知るための場所です。とはいえ、ユイトさんはあまりにも知らなすぎます。幸いなことに学園が始まるまで、まだ時間があります。なので、あなたには最低限の常識を、私が教えていき、学園に入学とさせていただこうかと」
「学園で学ぶのじゃだめなの?」
「はい。さすがになにも知らなすぎると、生徒同士での問題が発生する懸念がありますので、とはいえ、あくまで最低限なので。期間も長いですしゆっくりとやっていきましょう」
「はい」
ということで、僕は今日からクロイトさんの家に住むことになった。学園に通いだしたら寮という所での生活になるらしいので、料理の作り方や掃除などを教わっている。料理は作ったことがなかったが掃除はよくやっていたので、教えなくてもいいと言ったのだが。
「あなたの知っていることと違う可能性もあるかもしれませんし。ついでだからね」
そんな生活を続けながら色んなことを教わった。
ストライト王国の王都ストライトは国の中心から少し西よりに位置する。まっすぐ横切っても五十km近くある広い街。治安もかなり良くて過ごしやすい所。
そこを治めているのが、ストライト王家という王族。王が優秀な人材を求めて作ったのが学園といった学び舎で、これはたくさんあるらしいが、ライト学園は、貴族、平民、特殊な人たちが集められる、幅広い学園なのだそうだ。貴族専門でもなければ平民もいて特異な力を持った人もいる。
「あなたは特殊枠となりますね。その理由もお話します」
どうやらクロイトさんは僕の産まれに立ち会ったというか、担当したらしく、産まれから泣かなかった赤ん坊が僕だったそう。調べてみたところ、僕には、感情を何かに変える力があるとされた。何かはよくわからないそうだ。特異な力は限定的な情報しか得る術がなく実体験や歴史からなどからも類推して自身の能力へと昇華させていくしかないらしい。それを知っていくための学園生活でもあるそうだ。
「心配しないでください。特異な力といっても人の範疇は超えませんし、他にも特異な子はいます。すぐに慣れますよ」
微笑ましい笑顔で補足してくれる。
そういうものらしい。そして十三歳になっても知っている特異な子が来る気配がなかったから調べ。あの家に、クロイトさんが来て連れ出した――とのことだ。
「そうだったんだ」
「はい。そして、あなたの現状を知って少し頑張ってみました。」
「これからたくさん知ってほしい。あなた自身、他人、いろんな生活を知って生き。そして、あなたも平穏に生きていけるように」
特になにか困ったこともなかったのだけれども...。
なにも知らない僕でもこれが優しさだろうなと思う。なので・・・
「はい」
素直に頷いておこうとそう思った。