共犯者は笑う
共犯者の二人が仲良く話すおはなし。
大体喋ってるのは一人。ざまぁはないよ!ハッピーエンドだよ!
ゆるふわ設定で書きたいところだけ。
あ、ミランダ様!お久し振りです。
でも、公爵家のご令嬢がこんな所に来ちゃって大丈夫ですか?今日はめでたい日だからお忍びで?えへへ、お祝いしにきてくれるだなんて嬉しいです。
……懐かしいですねぇ、初めてお会いしたのがもう十年以上前だなんて。
あの日あたし、てっきり消されるものだと思ってみっともなくギャン泣きしちゃって!うわぁ今思い出しても恥ずかしい~!
だってだって、ミランダ様がわざわざあたしの所に来るなんて……しかも学園入学前のただの平民のあたしに!そんなの絶対、悪役令嬢が殺りにきたって思っちゃうじゃないですかぁ。
あー勘違いでよかったぁ。
あっ、そういえばこの前買いましたよマヨネーズ!まさか本当に発明しちゃうなんて思いませんでした。味噌とお米も……!
やっぱり故郷の味は最高ですよね!ミランダ様があたしと同じ転生者で本当にラッキーでしたぁ。
──え?本当に学園に入らなくてよかったのか、ですか?
あは、今更それ言いますぅ?だってあたし、お父さんになんて会いたくありませんでしたから……前世の記憶があるっていっても、殆どこの世界のことだけでしたし。あ、日本食への謎の焦がれはありましたけど~。
お母さんを無理矢理妊娠させてクビにしたゲス野郎と家族になんてなれる気がしなかったし、それに前も言ったけど貴族令嬢なんて柄じゃないんですよねぇ……ミランダ様のおかげで、お母さんは今でも元気ですし!ほんっと、ありがたや~。
身の丈に合った幸せって、あると思うんですよぉ。あたしは平民として生まれて、平民として育ったから。イケメンを目の前にぶら下げられても、環境の変化に付いていけるとは思いませんでしたし。
結婚相手ですか?ふふっ、めちゃくちゃいい男ですよ!実家は小さな商店なんですけど、あたし、そこで働いてて。
将来店を継ぐ為にめちゃくちゃ努力してきたのをずっと近くでみてきたからかなぁ……いつの間にか好きになっちゃってました!両想いだってわかった時は泣いちゃったくらい。
はい。だからあたし、本当に未練はないんです。キラキラした王子様や格好いい騎士様より、努力家で優しい彼が好き。彼があたしの運命なんです!
ミランダ様は、いつ殿下と?学園を卒業次第……一年後ですね。上手くいってるみたいでよかったですぅ。
いえいえっ、こうやってお祝いに来てくれて嬉しいです。
へっ、これ貰っちゃっていいんで……待ってこれって海苔!?きゃーっミランダ様天才!お米が進んじゃう~!
ミランダ様。あたし、幸せです!
あの日、あなたが共犯者になってくれたから……今の幸せがあるんです。
本当にありがとうございました!
はい、なんとなくわかってました。王妃様になるお方ですもん!あたしなんかがお会いできてるのがおかしいんです。
やっぱりちょっと寂しいですけど、いつかお別れの日が来るって思ってましたから。
あの!
王妃様の御披露目パレード、楽しみにしてます。遠くからになっちゃうけど、目一杯手を振りますから!
さよなら。
どうぞミランダ様もお幸せに……!
◇◇◇◇◇◇
あら、どうかした?
あぁ……そのこと。あなたならわかっているでしょう?私の本当の共犯者である愛しい護衛騎士様?
勿論最初は殺すつもりだったわ……ただその前にどんな子か確かめておきたかっただけ。そう、ただの気紛れよ。
けれど、その気紛れが我が国の一人の民の命を救ったのだもの。素晴らしいことでしょう?
あなた達の知識は力ある者が持ってこそ価値がある。私、殿下からの信頼は厚いの……どうか心配なさらないで?
王宮にあなたを連れて上がることは既に許可を得ているの。孤児の命を救った公爵令嬢と、その恩返しに剣の腕を磨いた元孤児の護衛騎士──如何にも皆が好きそうな美談ですもの。
ふふ、帰ったら新たな制度について話し合いましょう。まだまだこの国は良くしていける……あなたの意見を頂戴。
政の実権は私が握る。あんな顔だけのぼんくらにはこの国は預けられないもの。
王妃ミランダは最愛の王との間に三人の優秀な王子を産み、王亡き後も様々な方法で国を豊かにした建国以来の賢妃として名を残した。
その傍らには、常に優秀な護衛騎士がいたという。
ヒロインちゃんの語尾はあざとさという名のヒロイン補正。
誰も損はしてないしハッピーエンド!
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