第九章 終わらない地獄 1 地獄の実験
俺は、気がついた時、何もかもが真っ白な世界、つまり、『死後の世界』にいた。
「おーい、エリュン! いるか?」
そう俺は大声でエリュンを呼んだ。と、十秒ほどして、エリュンが俺の前に出現した。
「なあ、エリュン、俺をエミルの元に……」
だが、俺のその言葉は、エリュンによって遮られる。
「楽夜さん、聞いてほしい事があるの」
俺は、そのエリュンの圧に、思わず黙り込む。
「ありがとう。じゃあ、結論から言わせて。楽夜さん達、このままだと、全滅まっしぐらだよ」
「ああ、俺とエミルの残り死亡数が尽きて、ゲームオーバーってことだろ?」
「ううん、それだけじゃない。これを見て」
エリュンは、そう言うと、巨大なモニターを出現させ、そのモニターに、どこかの部屋を映し出す。そこは、石畳の床と、石造の壁でできており、どこか見覚えが……って、ああ!
「ここ、俺達の守護部屋だ!」
「そう、その通り。そして、今の守護部屋の様子が、これだよ」
エリュンは、そう言いながら、指をパチンと鳴らす。と、モニターの画面がパッと切り替わる。
「これは……」
「一人の男が、この楽夜さん達の守護部屋を襲撃して、それに応戦したマジカルさん、ガードンさん、ジョンさんが、瀕死状態になっていて……」
「何だって!? 今すぐ俺が……」
だが、俺は、あることに気づく。今、ヒューリ城には、エミルとオリク、シュートとレックスがいるのだ。エミル達を見捨てて救助に向かうわけにはいかない。だが、エミル達を優先するのなら、マジカル達を見捨てる事になる。一体、どうすれば……
と、その時。良いアイデアが俺の頭の中に浮かんできた。だが、うまくいくかは、エリュンの選択次第となる。それは理解しているが、エリュンなら、きっと賛同してくれると信じている。
「エリュン、一つお願いがある」
「どうしたの?」
「実は、一つだけ作戦がある。だが、エリュン、お前がやるかやらないか、どちらを選ぶかによって、俺の仲間達の生死ははっきりと決まる。乗ってくれるか?」
詳細を伝える暇もないくらい、時間に余裕がないのだ。頼む、乗ってくれ……
「……分かった。私も、今、楽夜さん達に破壊神の卵を預かってもらってるし、恩はいずれか返さなくちゃいけないもんね」
「ありがとう、エリュン! それで、内容だが……」
「分かってるよ。その男を退治してくれ、でしょ?」
「あともう一つ、お願いがある」
俺は、エリュンに耳打ちをする。
「分かったよ。でも、その代わり、今度は楽夜さんが私に借りを作ることになるんだからね?」
「ああ。それじゃあ、頼んだぞ!」
「任せておいて! それじゃあ、今から楽夜さんをゲーム世界に復活させるね!」
「ああ!」
俺の目の前が真っ白になり、俺は思わず目を閉じる。そして、次に目を開けたときには、ヒューリ城に戻っていた。そんな俺は、信じがたい光景を目にする事となる。




