第一章 冒険の始まり 3 再戦の時
猫魔物が腕を持ち上げる。その下にいたラドンは、すぐに起き上がる。
ラドンは、俺の方を向くと、突如襲いかかって来た。俺は、刀でハンマーを迎え撃ち、応戦する。
ラドンは、一旦距離を取り、体勢を整える。
何かがおかしい。まるで、何者かに操られているような感じだ。その時、俺は、ある可能性に、思い立つ。そこで、俺は、ゲームをプレイしていた時の記憶を辿る。と、思い当たる記憶が一つだけある。まさか、あの猫魔物、『特別香』を修得しているのか。だとしたら、とてもマズいぞ……誘惑される前に何とかしなくては……
危機感を覚えた俺は、すぐさまこう唱える。
「『分身』、召喚!」
さらに、分身に指示を出す。
「分身、エミルを守れ! あの猫魔物に、触れさせるな!」
『承知した!』
分身は、エミルの元に向かった。すると、ラドンが再び襲いかかって来る。俺は、とっさに盾を構えてガードして、ダメージはなかった。が、ラドンは、ハンマーを振り上げ、俺にもう一撃を入れようとする。
俺は、ハンマーをかわし、ラドンに斬りつける。それと同時に、ラドンは、ハンマーで俺の刀を迎撃する。
と、予期せぬことが起こる。
ラドンの力と、ハンマーの重さの影響で、俺の『真剣』が折れそうになっている。
俺は、慌ててバックステップで距離を取り、刀が折れるのを防いだ。
さて、ここからどうするべきか。
このまま戦うと、俺が負けるのは時間の問題だ。が、数が互角で、戦闘のレベルから考えると、勝利するのは非常に困難だ。
そうなると、最も有効と思われるのは、分身をたくさん出し、圧倒的な数的有利で勝つ策だが、エネルギーに限りがあるため、数的有利を掴んだところで、技が使えなくなるという事態になりそうなので、他の策を考えた方が良いだろう。
そんなことを考えていると、まさかの事態が起こる。
なんと、猫魔物が、エミルを狙って、エミルを叩き潰そうとする。俺の分身が守って、何とかエミルは無事だが、このままでは、エミルに危害が及んでしまう。
「エミル!」
俺は、エミルの元に駆け寄ろうとしたが、俺の進路を、猫魔物が塞ぐ。
そして、俺は、猫魔物に捕まってしまった。猫魔物の左手で握られた俺は、できるだけ甘い香りを嗅がないように、息を止める。
マズい、非常にマズい。
まもなく俺は、負けてしまう。しかも、打開策は一つも思いつかない。一体どうすれば……そう思っていた時だった。
何と、ラドンが、猫魔物を攻撃し、俺とエミルを救助したのだ。
その隙を狙い、分身は、再びエミルを守る。
こうして、俺とエミルは難を逃れ、ラドンは戦線復帰を果たしたのだった。