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第七章 ヒューリ城 2 因縁の再戦

 作戦の失敗に絶句し、目を見開いている俺に向かって、ジュリンがこう言う。


「私が、後ろから近づいて来ている分身に気づいていないとでも思っていたの? そんな訳がないでしょう。あなたが分身を召喚した時点で、すでに、楽夜が何かを企んでいる事に気づいていたわ。それに、楽夜がピンチを演出した時点で、あなたの作戦も読み解けたわ。楽夜は、ピンチを演出して、私を油断させて、その隙に、背後から分身に攻撃させて、私を倒すつもりだったのよね?」


 ジュリンの指摘は的確だった。俺の立てた作戦までも、見事に見抜かれた。悔しいが、認めるしかないな。


「ああ、その通りだ。」


 俺は、そう素直に答えた。


「やっぱりそうだったのね。さて、楽夜、ここから、どう楽しませてくれるのかしら?」


 そうジュリンが楽しそうに言う。だが、先ほどの奇襲のせ《・》い《・》か、気は抜いていない様子だ。

 さて、作戦が失敗した今、ここに留まる事に意味はない。早くこの場から離れて、次の手を考えなければ。

 しかし、俺の刀は、ジュリンの猛攻によって、激しいダメージを受けており、無茶をすれば、すぐに折れてしまいそうな状態だ。かといって、強行突破も握手である。俺の体に無茶をさせてしまい、多大なるダメージを受けてしまうからだ。

 では、この場合、どうするのが正解なのかと言うと、盾を自分の頭の上に構えながら、全力で駆け抜ける事、だと考える。やはり、駆け抜けるのが一番手っ取り早い。上からの攻撃を防ぐために、盾を自分の頭の上に構えれば、上からの攻撃によって移動を邪魔される事も無くなる。問題は、横方向にスイングするような攻撃だが、避けて進んで行けば問題ないだろう。

 早速、実行に移してみる事にする。と、上からの攻撃を気にする事なく、速く移動する事ができる。が、途中からは、樹木達も学習したようで、前から、横から、俺の死角となる斜め後ろからなど、様々な方向から、樹木達の横スイング攻撃が飛んでくるようになった。しかし、これも、大した障害ではない。前や横からの攻撃は、跳んだりしゃがんだりして避ければ良いし、後方からの攻撃も、全力で走って振り切れば良いだけの話だからだ。まあ、それが難しいのだ、という意見に否定はしないが。

 さて、ひとまず危機を脱する事には成功したものの、刀が折れそうで迂闊に手が出せないという状況は、依然として変わらない。俺が迂闊に動けない以上、分身を動かすしかないだろう。

 俺は、分身に目配せをし、心の中で、ジュリンに攻撃を加えろ、と命じる。すると、分身は、その指示を正しく受け取り、ジュリンに、『オーバーブレード』で攻撃を加えようと迫る。だが、しかし。


「甘いわ。楽夜が分身を動かしている事には気づいているし、楽夜が分身を動かす時にする仕草も把握しているわ。それなら、対策はいくらでも立てられるのよ! 『アタックウォール』、発動!」


 そうジュリンが唱えると、ジュリンが、透明でしなやかな壁のようなものを身に纏う。この技は、一度見たことがある。あの悪魔戦の時だ。確か、あの技は、物理攻撃を一度だけ無効化する、という効果の技だったような気がするが、その後に、最悪の技が待っていたような……そうだ。壁がダメージを受けた時、壁が、敵にカウンターを仕掛ける、という技だ。だが、そうなると、今の状況、相当ヤバい感じなのでは……?

 俺は、慌てて分身の攻撃を止めさせようとしたが、時すでに遅し。分身の持つ刃は、すでにジュリンの纏う壁に触れており、そして、分身の持つ刃が、思い切り振り下ろされる。が、その刃は、壁に阻まれ、攻撃対象であるジュリンには届かない。さらに、


「お返しするわ。『ウォールカウンター』!」


 そうジュリンが唱えると、ジュリンを覆っていた壁が剥がれ、分身に纏いつく。すると、分身は、苦しそうな様子を見せた後、光の粒子となって消えていった。

 さて、ジュリンは、俺に向き直っていた。非常にマズい状況だ。真っ向からの勝負に持ち込まれでもしたら、すぐに刀が折れてしまう。かと言って、搦め手を使おうにも、ジュリンにはすぐに気づかれてしまうだろう。どうすべきか、と考えていた、その時だった。


「これで終わらせてもらうわ! 『樹林化―滅―』!」


 そうジュリンが唱えた。すると、百本以上もあった樹木が、次々と絡まり、やがて、一本の大樹を形作る。と、俺の全身に、激痛が走り、異変が起こる。俺の体から、気力が根こそぎ奪われていった。その一撃だけで、ジュリンと戦う気力も、奪われていった。いっそのこと、逃げ出してしまえば、とも思ったのだが、それはかなわなかった。俺の腕と足は、樹木に巻きつかれて動かない。これでは、逃げ出すどころか、ジュリンの攻撃に抵抗することすらできない。

 そして、俺に次々と攻撃が加えられる。さらに、一撃くらうごとに、気力もどんどん奪われていき、ついに、何かを考える気力さえも、尽きかけている。そんな中、体力も限界を迎えており、刀も砕かれていた。

 大樹が、もう一度振り下ろされた。俺の残り体力では、この一撃を耐えられない。もう駄目だ――俺がそう思った時だった。

 大樹が、クロムによって受け止められた。そして、


「ジュリンだったかしら? 部下を殺されては困るのよ。その首、頂くわ。」


 と言い放つ。

 こうして、気力を失っている俺を他所に、クロム対ジュリンが始まるのだった。

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