第七章 ヒューリ城 2 因縁の再戦
「私からいかせてもらうわ! 『樹木結界』、展開!」
そうジュリンが唱えた事で、戦いが始まった。
俺の周囲に百本以上の樹木が生えてきて、その樹木が隙間無く絡み合い、やがて、その樹木達は、結界を形作る。その結界に俺は捕らわれてしまった訳だが、樹木でできた結界な以上、刀で斬れない訳が無い。
俺は、樹木の結界に向かって斬りつける。が、その時だ。刀を伝って、激痛が俺の腕に走った。
「くっ、ああ!」
俺は、あまりの痛みに、刀を取り落とす。
「フフフ、結界に触れたのね。その結界には、樹精霊が宿っているの。樹精霊は、私と目的を共有しているの。そして、私が楽夜と敵対していると言うことは、樹精霊も、楽夜に攻撃を加えるという事。そして、それを利用すると、こんな事も出来るのよ。行くわ、『樹精霊攻撃』、開始!」
とジュリンが唱えると、俺の体に、異変が起きた。
俺の体が、内部から引っ張られるような感覚がする。と、外側からも、強い力で叩かれ、引っ張られる。そうして、体の外側と内側から、激しい負荷がかけられる。その負荷が一定を超えた時、俺の体に激痛が走る。
「ああぁ――ッ!」
「アハハハハ! だから言ったでしょう。樹精霊も、楽夜に攻撃できるって。さて、私は手を差し伸べないわ。楽夜自身の力で、この難局を乗り越えてみせなさい!」
そうジュリンが言い放つ。それを聞いた俺は、いや、キツいって、と考える。
全身に激痛が走っている状態では、刀を握るのさえ、至難の業だ。そんな状態で、難局をどうやって乗り越えろっていうんだよ、無茶だろ、と内心では考えながらも、決してそれを口に出したりはしない。そんな事を口にした暁には、殺意を剥き出しにしたジュリンとクロムに、サクッとやられるのがオチだろう。死んでも生き返れるとはいえ、自分から喜んで死にに行くような真似はしたくない。
さて、とにかく、刀を持たなくては、何もかも始まらない。俺は、痛みで震える手を伸ばし、刀を何とか握った。と、俺の右手に力がみなぎってくるような、そんな感覚がした。いや、実際にはそんな事は無いのだが、何故か、今なら、痛みにも打ち勝てそうな、そんな気がした。俺は、樹木に近づき、刀を振るった。と、俺の右手に痛みが伝わってきた。が、この程度の痛みなら、何とでもなる。樹木が、メキメキと音を立てて、倒れた。そこに、俺が通れそうなくらいの間ができる。俺は、そこから、結界の外に出る。
ジュリンは、よりたくさんの樹木を生やし、俺を迎え撃つ。俺も、そのジュリンに応じて、刀を構え直すのだった。




